「人間としての成長が人生を豊かにしてくれる」
鈴木愛佳子さんにとってスポーツメンタルコーチングとは

今回の主役は元競技ゴルファーで、現在は芸能事務所のセント・フォースに所属しスポーツの魅力を伝えるリポーター・MCとして新たなキャリアを歩み始めた鈴木愛佳子さん。12歳でゴルフを始め、中学時代にはオーストラリアへの単身留学を経験。「プロになるのが当たり前」という環境で腕を磨きました。プロ認定制度の変更という壁もあり、7回に及ぶプロテスト挑戦など、その道のりは決して平坦ではありませんでした。
特に韓国ツアー参戦中には自分の成長を強く感じている一方で結果が出ず追い詰められた時期も経験。そんな苦しい時期に彼女を支え、前を向くきっかけを与え続けたのがスポーツメンタルコーチの鈴木颯人さんの存在でした。
今回はゴルフを始めたきっかけから、7年間のプロテスト挑戦の舞台裏、彼女を約9年間にわたり支え続けたスポーツメンタルコーチとの出会いと教え、そして引退を決断し「スポーツの魅力を伝える側」として世界を目指す彼女の現在の心境や今後の目標など様々な角度からインタビューを行い、鈴木さんの素顔と新たな挑戦に迫りました。
・トップ選手の輝く姿に憧れて目指したプロゴルファーへの道
・約9年間、競技だけに限らず人間として成長させてくれたスポーツメンタルコーチとの出会い
・スポーツメンタルコーチングが支えた7回に渡るプロテストへの挑戦
・今後は自分の経験を生かして、大好きなスポーツの魅力をたくさんの人々に伝えていきたい
・自分にとってのスポーツメンタルコーチングとは
トップ選手の輝く姿に憧れて目指したプロゴルファーへの道

― 鈴木さんがゴルフを始めたきっかけを聞かせてください。
元々は空手を先に始めて3歳から14歳まで続けていました。一方でゴルフを始めたのは小学6年生の12歳の頃で数年間は空手と並行して習っていました。ゴルフを始めたきっかけは父の勧めで練習場に行ったことなのですが、当時は空手で日本一になったりと良い成績を残していたので、自分もそのまま空手の道に進んで進学していくと思っていました。ただ父の方針で「女の子が空手をやっていても将来活かすのが難しいのでは」という考えがあり、私が運動全般が得意だったことからゴルフの道を勧められました。
― そこからどのようにプロを目指すようになっていったのですか?
私は中学生からゴルフを始めたこともあり、周りの同年代よりスタートが遅く実力差があったので、中学3年生の時にオーストラリアへ留学し、ゴルフのアカデミーに入りました。そこは韓国系のアカデミーで生徒の9割が韓国人だったのですが、365日毎日ゴルフ漬けの生活で「プロを目指すのが当たり前」という環境でした。同世代のオーストラリアアマチュアランキング1位の選手などが身近にいて、その影響を受けて高校1年生になったくらいの時に「プロになりたい」と本格的に思うようになりました。
留学生活を終えて日本へ帰ってきてからは一年くらいはキャディのバイトなどをしながら練習を積んで国内のアマチュアの大会に転戦し始めました。そして日本女子アマチュアなどの大きな大会にも出場する中で、周りの上手い選手に「負けたくない」「勝ちたい」という気持ちが芽生えたのと、当時現役選手だった宮里藍さんにある大会でハイタッチしてもらったことでプロゴルファーの輝いた姿に憧れを持つようになり本格的にプロを目指し始めました。
― プロゴルファーになるためのプロテストでも色々な経験をされたということですが、簡単にお話を聞かせてもらえますか?
単刀直入にお話しするとプロテストには7回挑戦しましたが合格できませんでした。プロとしては日本ではなく韓国のツアーに2024年にシード権を取って出場していました。日本ではプロテストに合格できなかったんですが、私がプロテスト受け始めた18歳の年に制度が変わり、まずプロテストに合格しないとプロレギュラーツアー出場権を争う予選会にも出られなくなったんです。そのため私はその7年間はプロ資格の獲得とプロツアー出場を目標に、毎年800人中20人くらいしか受かれないプロテストに向けて戦っていました。
ただ日本女子オープンというプロテスト合格していなくても、予選会を通過すれば出場できるプロの公式試合には2023年に予選会を勝ち上がって出場することはできました。プロテストに挑戦した7年間は終わって見ればあっという間でしたが、振り返ってみると毎年色々なことがありましたね。
約9年間、競技だけに限らず人間として成長させてくれたスポーツメンタルコーチとの出会い

― 鈴木颯人さんのスポーツメンタルコーチングを受けた経緯について聞かせてください。
私がオーストラリア留学中に、色んな人に揉まれて大変だなって思った母が、以前鈴木颯人さんのコーチングのセッションを受けたこともあって私に勧めてくれたのがきっかけです。その時は私もオーストラリアにいたのでリモートで受けさせてもらって継続したいと思えたのでスポーツメンタルコーチとしてついてもらうことを決めました。当時の母もゴルフはメンタルスポーツとも言われたりする競技でもあったのでそういう部分でも勧めてくれたのではと思います。
― 当時は颯人さんのスポーツメンタルコーチングを受けてどのような部分を改善したいと思っていましたか?
コーチングを受け始めた最初の方は自分を客観視したりできていなかったので、「試合に勝つために」とか「ゾーンに入るための方法」といった、自分はどうしたらいいのかという正解をコーチに尋ねていたような感じでした。でも鈴木さんは自分で答えを出すように話をしてくれるコーチなので、それを繰り返していくうちに自分自身の考え方が変わっていった感じがしました。
― コーチングを受ける中で、自分で答えや方法を見出したりできるようになったタイミングは具体的にいつ頃か覚えていますか?
おそらく20?22歳くらいの頃だったと思うのですが、そもそも「正解はない」ということに気づきその時々の悩みに対して自分は本当はどう思っているのかを自分自身と対話できるようになってきて、過去の経験を元にしながら解決策を見出せるようになりました。
今までは正解が欲しかったのですが正解はなくて「人それぞれでいい」ということに気づいたんです。 それまでは人と比べたり、両親の言葉を言い訳にしたりしていましたが「人と比べるのではなく、過去の自分と比べる」 ようになってから気持ちも楽になりましたし自分で一歩一歩進んでいるという自分の成長を自分で感じることができるようになったと思います。
― 競技生活の中ではメンタル面で苦しい時期もあったかと思います。スポーツメンタルコーチングでの学びを生かしてどう向き合われましたか?
ゴルフは自然の中で行うスポーツなので自然のせいにもできてしまいますし、技術コーチやチームとの悩み、そしてあ家庭でことで悩むこともあって、競技に関わらずメンタル的に苦しくなる場面は多くあった中で、自分の中でしっくりきたのは「自分でコントロールできないこと」に目を向けるのではなく「自分ができることにフォーカスする」 ということでした。外的要因ではなく、自分には何が必要かを理解し選択して行動するという、自分の今できる最善策に気持ちを100%持っていくことがメンタルが1番安定しましたし、問題も問題ではなくなったというか気にならなくなったので、苦しい場面で全部切り抜けてこれたかなって思います。
鈴木さんは「過程を大事にすること」を教えてくれたコーチだったのと、2021年?2022年の技術コーチも練習内容を大切にしてくれて「結果は後からついてくるもの」と考えている方なので私のメンタルも過程重視で育っていきましたし、目標に対して今やるべきことを細かく設定して淡々と行うことで、結果がどうであれ「良かった」と思えるようになり、悩みが少なく目標に向けてまっすぐ進めるようになりました。私には「過程を大事にすること」が一番良かったと思います。
― 颯人さんのコーチングを通して特に役に立ったアドバイスや言葉はありますか?
本当にいっぱいあるのですが1?2個挙げさせていただくと、一つは「当たり前や普通は人それぞれ違う」という考え方です。自分の概念を人に押し付けないことで、自分の周りのことも何でも受け入れられるようになり気持ちが楽になりました。
もう一つは「難しいと言わないこと」です。何事も「難しい」と口にしてしまうと無意識のうちに本当に難しくなってしまうため、ポジティブな言葉に言い変えるようにしました。この言い換えを習慣的に行ったことで自分にも染み付きましたし、ゴルフだけに限らず色々なことに活きて自分の中の困難のハードルを下げることができました。 また、ゴルフ中でトラブルがあっても「まだこの程度でよかったラッキー!」とポジティブに変換することができましたし、こういった物事の捉え方は日常生活でも活きています。
スポーツメンタルコーチングが支えた、7回に渡るプロテストへの挑戦

― コーチングを受ける一方でプロテストでは結果に繋がらないなど、思うような結果が出ない葛藤がある中でどうやって前を向き続けられたのでしょうか?
実は3回くらいゴルフを辞めようと思ったこともありました。その中でもよく覚えているのは韓国ツアーに参戦した時でした。韓国に行くまでは2年間くらい同じコーチでちょうどゴルフの知識がついてきてゴルフがすごい楽しい2年間で、結果よりもスコアや技術を含めて自分が成長していく過程が楽しくて、だからプロテストを一次で落ちても次の日にはすぐ練習したいという時期で、その後出場した日本女子オープンでも初めて選手としてそのレギュラーツアーの雰囲気を感じてやっぱりプロゴルファーになりたいと強く思いました。
そんな中で韓国の予選会を8位で通過して翌年の韓国のプロツアーのシード権を獲得することができたので、単身韓国に住んでアカデミーで毎日トレーニングをしていきました。筋力も上がって飛距離も伸びて技術も向上していて自分の成長を感じられているのに、毎週スコアも出ず予選落ちが続いた時にやっぱり無理かもしれないと思いました。
その時も車の中で泣きながらコーチと電話でセッションしたのを覚えているのですが、鈴木さんに「目先の結果より、来年のプロテスト合格に向けて成長できているか」という過程に目を向けるよう言われました。その中で思った感情をひたすら書き出すノートを作ったことで、自分が本当に思ったことが見えてきて改めて目標が立てられてシーズンを戦い抜けました。
最終的にはプロテストでスコアを含めて自分の実力は出し切れたのですが残念ながら不合格という結果で終わりました。その時に周りのレベルが上がる速さに、今後の自分の成長スピードが追いつかないと悟って引退を決めました。今まで何度も挫折しましたが、その度に現状を受け止めてもう一度立ち上がらせてくれたのがスポーツメンタルコーチングでしたね。
― そのような挑戦を続けてきた鈴木さんのアスリートキャリアから、ゴルファーをはじめとした様々な競技の次世代の選手に伝えられるアドバイスはありますか?
まず伝えたいのは、とにかく「自分のやっている競技そのものを心から楽しんでほしい」です。楽しんでできることが一番の強みになると思っていて、自分の周りで見てきた強い選手たちって競技自体が大好きなんですよね。本当にそれはすごい強みになるので、いつでも楽しむ気持ちを自分の中で探し出してほしいなと思います。
私は周りに感謝しながら誰かのために競技をしたいという気持ちが強かったので、両親やコーチへの恩返しのために頑張ったことも力になりましたが、それだけだとすごく苦しくなるので、やっぱり自分自身がその競技と向き合うためにもその競技を好きになって欲しいですし、そうなれると色々な困難や過程も楽しんでもらえるんじゃないかなと思います。
今後は自分の経験を生かして、大好きなスポーツの魅力をたくさんの人々に伝えていきたい

― 競技引退とキャリアチェンジを決めた理由を聞かせてください。
ありきたりな言葉で言うと、2024年のプロテストが本当に自分の気持ちと持っているものを全部使い切って結果を出せたと思っていて、合格には届かなかったもののスコアとして自分の実力を出し切れたことに満足して燃え尽きた感覚がありました。また個人的にも2022年あたりからプロテストは25歳まで、プロに合格しても現役選手としては30歳までという期限を設けていました。私自身、元々ゴルフだけをずっと一生懸命やりたいというわけではなく、ゴルフが今一番大好きだから、日本一とかプロになりたいという目標を持った中で期間を決めて一生懸命やっていたんです。
そういう思いもあって、私はその先の自分のキャリアについても見据えていましたし、スポーツメンタルコーチングの中でもあった最終的な「自分の幸せとは何か?」を考えていく中で、ずっとゴルフをしたいというビジョンは逢えりませんでした。そんな中で2024年の時に引退という感情になったこともあって、以前からやりたいと思っていた今の仕事でもあるスポーツの魅力を伝えるキャスターやレポーターへの道に進むことを決めて現役を引退しました。
― ずっと続けてきた競技からのキャリアチェンジとしては大きな決断だったんだろうなと思います。
はい。本当にやり切ったという思いはあったのですがとても悩みました。 正直、女子ゴルファーは業界的にティーチングプロだったり色々な形のプロに今すごい需要があるので、現役を続ける選択肢も考えたのですが、私は真剣にツアープロだけを目指して活動をしていたので、中途半端にゴルフを楽しんでそれを仕事にするというのは自分の中では許せなかったんです。
それよりも今やってる仕事とかこれから頑張りたい仕事の方が熱量や気持ちが勝ったので、現役を引退しようというのが決断でした。
― 引退を決めてからどのように今のお仕事へキャリアチェンジされたのでしょうか?
2025年の始めに今所属してるセント・フォースという芸能事務所へ入ることが決まったことが大きかったです。セント・フォースはキャスターやレポーターの分野にすごく強い事務所なので、事務所に入ってからも今のお仕事についてたくさん相談しました。
あと自分の強みはゴルフなのでその経験と知見を活かしたり、元から趣味は「スポーツ観戦」と答えるぐらいスポーツを観たり、スポーツ全般が幅広く大好きなので、色々なスポーツの魅力をまだ知らない人に伝えていきたいです。それを自分の声と表現と、今まで選手としてやってきたからこそ分かることを活かして活動していきたいと思っています。
― キャリアチェンジをされて1年未満ではありますが、今のお仕事ではどういうものが多いですか?
今はやっぱりゴルフ関係が多いです。昨年引退してからすぐご縁あって応援してもらっていて、自分も出場していたマイナビさんの「マイナビ ネクストヒロインゴルフツアー」のトーナメントのリポーターも3 回やらせていただいてすごく楽しくて本当にいい経験になりましたし、今後は来年もお話をいただける予定になっています。
そういったゴルフ関係のものはもちろんなのですが、あと本当に話すことが好きなのでMCや司会もやっていきたいと思っているので、そういう話がちらほらあったり、ゴルフの番組は結構色々な形で携わらせていただいているので、ゴルフのこともどんどん発信していきたいと思って活動をしています。
まだ大きなお仕事は特別決まってないんですが、自分が今頂けているお仕事を精一杯取り組ませていただきながらもっともっとレベルアップしていきたいと思っています。

― 競技を引退して環境が変わった中で、心境の変化があれば聞かせていただけますか?
唯一感じているのは、新しい仕事と環境になってまだまだこれからというところではありますが、今のお仕事にはスポーツのような順位や明確な結果を目で見ることができないため、自分の「頑張り方」に迷うことがあります。今では色々な方に相談させていただいて自分のフォーカスするところが見えてきました。
ただ結果が明確に目に見えないという正解のない世界にいる葛藤はありますが、一方で結果だけに囚われる重圧はないのですし、自分が本当にやりたいことや頑張っているってことにもっともっとフォーカスできる仕事だと思います。もちろん今の仕事で結果が出たら良いのですが、その結果が順位などで出るものではないので、それが時には悩みであり良いところでありというような感じで今までと大きな違いかなと思います。
そういう葛藤や悩みや不安もスポーツメンタルコーチングを受けていたからこそ乗り越えられている部分も大きいです。スポーツメンタルコーチングのセッションでやってきたことはゴルフだけではなくて日常の思考も変えていってくれたので、性格や雰囲気もコーチングを受けてから変わったと思いますし、物事の考え方は本当に変わったので、今の仕事でのマイナスな状況に対しても、自分でその状況を受け止めてそれこそノートに書き出して自分が向いてる矢印を明確にすることがメンタルを一番安定させられる方法なので、スポーツメンタルコーチングで得たことは全部今の活動を活きています。
― ありがとうございます。今後の目標や挑戦していきたいことがあれば聞かせてください。
そうですね。やっぱり世界規模のお仕事はすごいので携われるようになりたいです。競技はゴルフに限らず、野球やサッカー、アメリカンフットボールも好きですし、それこそフィギュアスケートとか、バレーボールとか卓球もすごい好きなので挙げ始めたらキリがないんですけど。。(笑)様々なスポーツの世界大会や国際大会のテレビ番組で実況をできるようになりたいですね。それが1つの大きな目標です。
自分にとってスポーツメンタルコーチングとは

― 最後に鈴木さんにとってスポーツメンタルコーチングとは何かを聞かせてください。
スポーツメンタルコーチングは、スポーツで結果を出すために色々プランを立てて進めていくものではありますが、それ以前に自分の考え方を変えてくれて人間として成長させてくれるものだと思います。私は本当に鈴木颯人さんが自分のコーチで良かったですし、スポーツメンタルコーチングを通して本当に人生が豊かになったと思うので感謝しています。
鈴木愛佳子プロフィール

2000年7月1日生まれ。神奈川県出身。12歳でゴルフを始め、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)プロテストに挑戦するなど、競技ゴルフの第一線でキャリアを重ねてきた。国内外のアマチュア大会に出場し、韓国女子ツアー下部大会にも参戦するなど、常に高いレベルの環境で自らを磨き続けてきたゴルファー。また空手では初段の実力を持ち、全日本レベルでの優勝経験もあるなど、小柄ながらも競技を越えて培われた強靭なフィジカルと精神力が大きな強み。2025年8月に現役を引退すると、勝負の世界で養われた集中力と表現力を活かし、現在はタレントやレポーターとしても活動の幅を広げている。スポーツの魅力や挑戦する姿勢を発信しながら今後多方面での活躍が期待されている。
Interview and Edit by 畠山 大樹
次回のスポーツメンタルコーチ資格講座のご紹介

スポーツメンタルコーチ資格講座は「日本スポーツメンタルコーチ協会(R)」にて発行されている資格です。One Athlete,One Mentale coachの理念を掲げスポーツメンタルコーチの普及に力を入れております。