スポーツの現場で日々限界に挑み続けるアスリートの皆さん、こんにちは。スポーツメンタルコーチの鈴木颯人です。
毎日の過酷なトレーニングや、結果への重圧と向き合う中で、「今日も決めたメニューをこなせなかった」「どうしても努力が続かない自分に嫌気が差す」と、一人で思い悩んでいませんか?
私はこれまで、数多くのアスリートの「やる気」や「モチベーション」について最前線で向き合ってきました。私自身、『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』(Amazonなどで発売中)という本を執筆したことがあります。ありがたいことに、2017年から現場での気付きや理論をまとめ続け、これまでに手がけた著書は8冊となりました。
数多くのアスリートと対話をしてきて明確に言えるのは、努力できないのは「あなたが弱いから」ではない、ということです。今回は、心理学や脳科学の観点も交えながら、本物の自信と継続力を手に入れるためのヒントをお伝えします。
【コラムの著者】鈴木颯人

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会 代表理事
慶應義塾大学健康情報コンソーシアム 会員
メンタルトレーニング推進国会議員連盟 所属
プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら
【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから
【著書】
・弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉(三五館シンシャ)
・一流をめざすメンタル術(三五館シンシャ)
・モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術(KADOKAWA)
・最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす(KADOKAWA)
・メンタルコーチが教える潜在能力を100%発揮する方法(KADOKAWA)
・親が変われば子どもが変わる(三五館シンシャ)
・うちの子のやる気スイッチを押す方法教えてください(かんき出版)
・アスリートの心を磨く言葉と魂を揺さぶる絶景(PIE International) 他多数

努力が続かない人ほど、気持ちの起伏が激しい理由
スポーツの現場を長く見ていると、「努力が続かない人」「継続力がない人」にはある共通した特徴があることに気づきます。それは、気持ちの起伏が激しいという傾向です。
調子が良い時や気分が乗っている時は、誰よりもハードな練習をこなせる。しかし、一度試合でミスをしたり、監督から厳しい言葉をかけられたりすると、一気にモチベーションが急降下し、昨日までやれていたルーティンすら手につかなくなってしまう。裏を返せば、この「気持ちの起伏が激しいからこそ、努力が続かない」とも言えるのです。
心理学において、人間の持つ意志の力は「ウィルパワー」と呼ばれ、その量には限りがあると言われています。気持ちの起伏が激しい人は、ネガティブな感情を抑え込んだり、乱れた心を必死に平穏に戻そうとしたりする「情動調節」に、このウィルパワーの大部分を消費してしまいます。そのため、いざ
- 「練習に打ち込む」
- 「弱点を克服するための努力をする」
という行動に向かうためのエネルギーが枯渇してしまうのです。
だからこそ多くの選手は、「気持ちを常に安定させることさえできれば、継続して努力し続ける自分になれるはずだ」と思いがちです。そのためにスポーツのメンタルについて学び、少しでも気持ちを落ち着かせ、安定させるために必要なことを、積極的に行動に移されるのだと思います。
知識があっても実践できない?メンタルトレーニングの壁
しかし、ここに大きな落とし穴が存在します。本を読み、メンタルトレーニングの手法を学んだり、実際に行動に移そうとしても、どうしても集中できない、継続できない人がいるのです。
以前、あるプロサッカー選手から相談を受けた時のことです。彼は非常に勉強熱心で、スポーツ心理学やメンタルに関する知識を沢山持っていました。
- 「どうすればプレッシャーに打ち勝てるか」
- 「どうすればフロー状態に入れるか」
といった理論を頭に詰め込んでいたのです。しかし、実際のピッチ上で、その知識を思うように結果に結びつけることができず、深く苦しんでいました。
その中でも、特に彼が熱心に実践しようとしていたのが「イメージトレーニング」でした。最高のプレーをする自分を頭の中で描く、非常に有効な手法です。しかし、彼はもともと気持ちの起伏が激しいタイプだっただけに、目を閉じて静かに集中し、ポジティブなイメージを「毎日決まった時間に続ける」こと自体が、彼にとってはとてつもなく大変な作業だったのです。
本来なら、イメトレのスキルを磨くよりも先に、まずは「どんな状況でも継続し続ける気持ち」の土台を手に入れる必要がありました。
しかし、一般的なメンタルトレーニングの世界に深く足を踏み入れれば入れるほど、最終的には「決めたことをやるか?やらないか?」という、精神論や根性論で終わってしまうことが少なくありません。僕自身も過去にそういった壁にぶつかり、苦しんだ経験があったからこそ、ただ知識を詰め込むだけのメンタルトレーニングの辛さや限界を、痛いほど知っています。
気持ちの乱れは「敵」ではない!感情をエネルギーに変換する力
だからこそ、スポーツにおいて真のメンタルの実力を備え、結果を出すためには、まず何よりも「努力を積み重ねることができる人」になり継続力がある人に成長する必要があるのです。
では、努力を積み重ねるためには、一切の感情を押し殺し、ロボットのように気持ちの起伏をなくさなければならないのでしょうか?
決してそうではありません。トップアスリートの中には、普段から感情の起伏が激しくても、いざという場面で猛烈な集中力を発揮する人がいます。試合で負けた悔しさ、理不尽な評価への怒り、あるいはプライベートでの辛い出来事など、普通なら心が折れてしまうようなしんどい事があった時に、逆に努力に拍車がかかる選手がいるのです。
彼らは、むしろ気持ちが大きく乱れる時に発生するその強大な感情の波を、自分自身の「努力していくエネルギー」へと変換しています。心理学では、このような心の働きを「昇華」と呼びます。
怒りや悲しみといった、そのままでは自分を壊しかねないネガティブな衝動を、スポーツへの情熱や過酷なトレーニングに向けることで、社会的に価値のある高度な行動へと昇華させているのです。また、「認知の再評価」という心理テクニックを用い、ピンチやストレスを「自分を強くするための試練だ」と捉え直すことで、爆発的な力に変えているとも言えます。
つまり、「努力を続けられるようになる」ということは、必ずしも「気持ちの乱れが一切ない穏やかな人になる」ことではないのです。
正しい「努力の仕組み」を知り、脳と心を味方につける
感情をエネルギーに変える土台ができた上で、最後に重要になるのが、結果を出すために必要な「正しい努力の方法」や「努力の仕組み」を理解することです。
気合いや根性だけで毎日自分を追い込んでも、脳はすぐに疲弊してしまいます。正しく、そして長く積み重ねができる人になりたいと思うなら、人間の脳や心の仕組みを理解してほしいなと思います。
例えば、人間の脳は急激な変化を嫌い、現状を維持しようとする「ホメオスタシス(恒常性維持機能)」を持っています。いきなり「今日から毎日3時間の自主練をする」と決めても、脳が反発して三日坊主になるのは当たり前なのです。 これを乗り越えるためには、脳が変化に気づかない程度の小さな一歩・スモールステップから始めることが鉄則です。「まずは1日5分だけフォームチェックをする」といった極端にハードルの低い行動から始め、それを繰り返すことで脳に「これは日常的な習慣だ」と錯覚させるのです。
また、目標を達成した時の快感を生み出す報酬系の神経伝達物質のドーパミンを上手く活用し、日々の小さな成長を自分自身で褒め、努力を「苦痛」から「快感」へと変えていく脳のハッキングも必要です。
努力が続かないのは、あなたの意志が弱いからではありません。自分の感情との付き合い方、そして心と脳の仕組みを利用した「正しい努力のベクトル」を知らないだけなのです。
どんなに起伏が激しくても、どんなにネガティブな感情を抱えていても構いません。その感情は、あなたがスポーツに対して真剣である証拠です。その熱い思いを、正しい知識と心の仕組みを使って、最高のパフォーマンスへと繋げていきましょう。私はこれからも、そんな本気のアスリートを全力でサポートし続けます。




