ゴルフから学ぶスポーツメンタルと「結果」を出すための心理学

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プロゴルファーのサポートから見えた、究極のスポーツメンタル

スポーツメンタルコーチとして、これまで数多くのプロゴルファーをサポートしてきました。その過程で得られた数々の知見や経験は、ゴルフに限らず全てのアスリートにとって価値のあるものだと確信しています。今回は、私が現場で見てきたリアルな風景と心理学的な根拠を交えながら、結果を出すためのメンタルのあり方についてお伝えしたいと思います。

私自身、選手たちが見ている世界観を少しでも深く理解し、肌で体験したいという思いから、自らもゴルフを始めるようになりました。しかし、野球出身でボールを打つことにはそれなりに自信があったにも関わらず、これほどまでに悪戦苦闘する競技だとは思ってもみませんでした。

ドライバーを思い切り振り抜く豪快さがある一方で、グリーン周りのアプローチや、カップに沈めるパターといったショートゲームでは、数ミリの狂いも許されない極度の繊細さが求められます。正解が一つではないこの奥深い世界に、多くのアスリートが魅了され、そして苦悩する理由が身をもって理解できました。

2020年のアース・モンダミンカップ。2019年からメンタルサポートを担当させていただいていた渡邉彩香プロが、見事5年ぶりの復活優勝を果たしました。私が初めて彼女のショットを見たとき、一目惚れするほどその才能と迫力に感動したのを今でも鮮明に覚えています。

だからこそ、

  • 「純粋に彼女の力になりたい」
  • 「何とか勝たせてあげたい」
  • 「彼女の中に眠る潜在能力を最大限に引き出したい」

と強く願いました。出来る限り試合会場へ足を運び、彼女のプレーを見守りながら復活へのヒントを探り続けた日々。そして迎えた、コロナ禍で先行きが見えない中での大事な2020年初戦での劇的な優勝。

この素晴らしい復活劇に至るまでに私がメンタルコーチとして何を考え、どのようにサポートしてきたのか。そして、過酷な勝負の世界を生き抜くために必要なスポーツメンタルについて綴っていきます。

【コラムの著者】鈴木颯人

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会 代表理事
慶應義塾大学健康情報コンソーシアム 会員
メンタルトレーニング推進国会議員連盟 所属

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

【著書】
・弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉(三五館シンシャ)
・一流をめざすメンタル術(三五館シンシャ)
・モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術(KADOKAWA)
・最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす(KADOKAWA)
・メンタルコーチが教える潜在能力を100%発揮する方法(KADOKAWA)
・親が変われば子どもが変わる(三五館シンシャ)
・うちの子のやる気スイッチを押す方法教えてください(かんき出版)
・アスリートの心を磨く言葉と魂を揺さぶる絶景(PIE International) 他多数

ゴルフは究極の「失敗のスポーツ」である

あらゆるスポーツの中でも、ゴルフは圧倒的に「失敗する数」が多い競技です。広大な自然の中で、あんなにも小さな球をクラブで打ち、遠く離れた小さなカップに入れる。言葉にすればシンプルですが、実際にやってみるとこれほど難しいことはありません。

ドライバーでの豪快なショットから、スコアメイクの鍵を握るショートゲームまで、大胆さと繊細さが常に共存しています。だからこそ、自分の感情と向き合い、気持ちをコントロールできなければ、あっという間にスコアは崩壊してしまいます。

ゴルフの特殊性は、その「時間の使い方」にもあります。18ホールを回るのに休憩を除いても約5時間かかりますが、実際にボールを打っている時間はごくわずかです。1打にかける時間は40秒あるかないか。つまり、圧倒的に「歩いている時間」や「待っている時間」が長いのです。

心理学的に見ると、人間は考える時間が多いほど、脳内に様々な思考や不安がよぎり、迷いが生じやすくなります。この「迷い」こそが、筋肉の緊張を生み、手元をブレさせ、アプローチやパターでの致命的なミスショットを引き起こす原因となります。

どれだけ素晴らしいリズムでプレーしていても、たった一度の小さなミスから感情が乱れ、総崩れしてしまう。攻めるべき時は攻め、守るべき時は徹底して守る。勝負どころでは強気にバーディーを狙いに行く決断力も必要です。

しかし同時に、3日間から4日間にわたる長いトーナメントでスコアをまとめ上げるためには、長期的な視点で物事を捉え、自分の「失敗に対して寛容になる」という心の余裕が不可欠なのです。

ゴルフと射撃の共通点〜「囚われ」を排除する心理〜

ミスが許されない、極限のメンタルが試される競技として「射撃」があります。オリンピック競技でもあるクレー射撃やライフル射撃の選手を、過去に4年ほどサポートした経験があります。

選手の試合に帯同して感じたのは、静寂の中で狙った的に撃ち続ける異常なほどの集中力とテンポ、そして常に張り詰めた緊張感でした。射撃で結果を出す選手に共通していたのは、いかなる状況でも「淡々とプレーすること」でした。

少しでも考えすぎてしまうと、プレッシャーで身体が硬直し、思うように動かなくなります。試合中に引き金を引くことができず、自分自身の不甲斐なさに涙を流す選手もいたほどです。それほどまでに追い詰められた環境下で結果を出し続けるのは至難の業です。

あの静寂の環境の中で、淡々と自分の動作を繰り返し続ける時間。これは、ゴルフにおけるパターを打つ瞬間の静けさや孤独感と全く同じだと私は考えています。

ここで理解しておきたい重要なポイントが、「囚われを排除する」という考え方です。試合中に何を意識すべきか、何に囚われてしまっているのか。これがパフォーマンスのすべてを決定づけます。

スポーツ心理学の世界には「逆U字仮説(ヤーキーズ・ドットソンの法則)」という理論があります。これは、適度な緊張状態(覚醒レベル)にあるとき、パフォーマンスは最も高くなり(ゾーンと呼ばれる状態)、逆に緊張が低すぎても高すぎてもパフォーマンスは低下するというものです。

試合中、選手は様々な外的・内的要因に囚われます。自分自身の調子、身体の疲労度、過去のミスへの後悔、プレッシャー。さらには、天候、風の強弱、気温の変化、ギャラリーの視線、ライバルのスコアなど。

「今この瞬間の1打」にすべての意識を向けたいのに、どうしても他のことに気を取られてしまう。心理学ではこれを「注意の散漫」と呼びますが、最も集中力が途切れる瞬間は「結果を意識しだした時」なのです。

結果への執着が「普段の自分」を見失わせる

どれほど実力のあるトップアスリートであっても、結果(優勝、スコア、順位)という「未来」を意識しすぎると、無意識のうちに普段とは違う行動をとってしまいます。

未来の結果をコントロールしようとする心理は、過度な緊張を生み出します。ライバルの動向を過剰に意識するのと同じように、結果に囚われると「今自分がなすべき具体的な行動」を見失ってしまいます。

やるべき行動を見失うということは、本来の自分のパフォーマンスを発揮できないことを意味します。焦りから特別なことをしようとしたり、一発逆転を狙ってリスクの高すぎる賭けのようなプレーに走ってしまい、自滅してしまうのです。

スポーツにおいて結果を出すということは、奇跡を起こすことではなく、「確実性を積み重ねること」に他なりません。いつまでもリスクの高い行動を取り続けていれば、運良く勝てることはあるかもしれませんが、それは「実力で勝ち取った」とは言えません。確かな実力と、それを発揮できる安定したメンタルがあってこそ、本当の強さと言えるのです。

実力を引き出す「限界的練習」と専門家との連携

最終的に行き着く結論は、「実力を高めることに尽きる」ということです。どれだけメンタルトレーニングを行い、考え方を整えたとしても、根本的な技術や実力が伴っていなければ、望む結果を得ることはできません。

だからこそ私は、試合中のメンタル面を整えるサポートだけでなく、選手が確実に実力を高められるための環境作りも全力でサポートします。

才能は生まれつきのものなのか、それとも努力の賜物なのか。この問いに対し、フロリダ州立大学心理学部のアンダース・エリクソン教授が一つの答えを出しています。彼はチェス、バイオリン、スポーツなど、様々な分野の世界的なトッププレーヤーたちを30年以上にわたって科学的に研究しました。

その結果、超一流と呼ばれる人々に共通していたのが「限界的練習法(デリバレイト・プラクティス)」と呼ばれるアプローチでした。この練習法には5つの重要なポイントがあります。

  1. 超具体的な目標を立てる
  2. 意識を完全に集中して練習する
  3. 質の高いフィードバックを受ける
  4. 常に現在の自分の能力を少し上回る課題に挑戦し続ける
  5. 効果的な練習方法を知っている専門家(コーチ)が監督する

ただ漫然とボールを打つのではなく、この心理学的に裏付けられた練習法を実践できる環境をデザインすることが、スポーツメンタルコーチとしての私の役割の一つです。

そのためには、専門家との密なコミュニケーションが欠かせません。技術を教えるテクニカルコーチ、身体をケアするトレーナー、コース戦略を担うキャディー、そしてマネージャーやご家族も含めて、チーム全体で話し合いの場を持ちます。

選手本人の思いだけでなく、チームとしてどこに向かおうとしているのか。意思を統一し、情報を共有することで、選手の成長スピードは劇的に変わり、結果も変わっていきます。時には私がキャディーやコーチの「通訳者」のような役割を担い、選手とスタッフの間に入ってつなぎ役に徹することもあります。

大切なのは、選手が迷うことなく、安心して前に進める「環境」を作ること。豊かな土壌・環境が整って初めて、素晴らしい果実という結果が実るのです。

アスリートを孤独にしない「チーム」の力

ゴルフに限らず、過酷な勝負の世界で戦い続けるアスリートは、総じて孤独です。スポーツメンタルコーチとして現場に立つ私が常に心がけているのは、「選手に決して孤独感を感じさせないこと」です。

プロアスリートになれば、スポンサー、所属企業、協会関係者など、周囲には常に多くの人が集まります。多くの人に支えられることは素晴らしいことですが、その中で

  • 「本当に本音を打ち明けられる人」
  • 「弱さを見せられる人」

はどれくらいいるのでしょうか。

特にゴルフは、大きなお金と人が動く華やかなスポーツです。しかし、個人競技であるがゆえに、最終的に重圧を背負って決断を下すのは選手一人。だからこそ、強い孤独感に苛まれる瞬間があるのです。

そうした孤独から選手を救うために、個人競技であっても「強固なチームを組む」ことの重要性を強く感じています。誰もが安心して意見を言える状態である「心理的安全性」が保たれたチームの関係性が構築できれば、選手の心は安定し、自然と結果はついてきます。

渡邉彩香プロが5年ぶりの優勝を決めた直後、彼女とマネージャーさんが私に電話をかけてきてくれました。試合が終わってすぐの、興奮と喜びに満ちたあの瞬間に連絡をもらえたことは、メンタルコーチとしてこれ以上ない喜びでした。

これまでも、サポートする選手から勝利の報告を受けることはありましたが、苦悩の時期を共に乗り越えて手にした5年ぶりの優勝報告は、本当に格別なものでした。

ゴルフは心技体を極めるメンタルスポーツですが、それと同時に、選手を支える人たちとの「関係性」や「チームの絆」という、人間として当たり前の部分に、もっと多くのスポットライトが当たってほしいと心から願っています。

最後までお読みいただきまして、本当にありがとうございました。

チキンゴルフ公式サイト(https://chicken-golf.com/

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