”丁寧な指導法”で作り上げる史上最高チーム、ジョゼップ・グアルディオラ監督

アスリートの望む結果にメンタル面でサポートするスポーツメンタルコーチの鈴木颯人です。サッカー界で”世界的名将”との呼び声が高いジョゼップ・グアルディオラ監督。現役時代は、名門バルセロナで守備的MFとして17年間活躍した選手です。

監督としてもリーガ・エスパニョーラのバルセロナ、ブンデスリーガのバイエルン・ミュンヘン、プレミアリーグのマンチェスター・シティと名門クラブで指揮官を務めてきました。強力なリーダーシップを持ち、サッカー界で最高の戦術的頭脳を持つ指導者の1人として知られています。今回は、ジョゼップ・グアルディオラ監督についてスポーツメンタルコーチとしての視点でお話し出来ればと思います。

【コラムの著者】鈴木颯人

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会 代表理事
慶應義塾大学健康情報コンソーシアム 会員
メンタルトレーニング推進国会議員連盟 所属

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

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スペイン黄金期選手にとってのアイドル

本名はジョゼップ・グアルディオラ・イ・サラと長いため、ペップと呼ばれています。スペインのサンパドー出身。180センチ76キロと恵まれた体格で利き足は右足のミッドフィルダーでした。

バルセロナのユースに入団したのは12歳の時。19歳でトップチームへの昇格を果たすと20歳にしてリーガ・エスパニョーラで優勝、そしてイギリスのウェンブリーで行われたUEFAチャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)でも、サンプドリアとの死闘を制しバルセロナの初優勝に大貢献しました。

20歳からはスペイン代表のUチームに初招集され、この年イタリアのサッカー誌グリエン・スポルティーヴォからヨーロッパ最優秀若手サッカー選手に送られるブラヴォー賞を獲得。21歳でスペインA代表に昇格を果たします。

17年間もの間、名門バルセロナでプレーし「長い旅だった。私はとても幸せで誇りを持っている。たくさんの友人もできた。私はもう幸福を探し求めない。選ばれたものとして長い間過ごせた」と会見で話したグアルディオラ監督。

バルセロナでは、6度のリーグタイトル、1度のチャンピオンズカップ、バルセロナオリンピックで優勝など多くのトロフィーを獲得しました。バルセロナを退団後は、イタリアのセリエA、ブレシア、ローマ、再びブレシアで活躍されました。

その後カタールのアル・アハリ・ドーハ、メキシコのドラドス・デ・シナロアでもプレーした経験があります。プリメーラ・ディビシオンで6度の優勝を飾り、現役を引退。

スペイン代表絶世期に活躍したシャビ・エルナンデス選手、アンドレス・イニエスタ選手、セスク・ファブレガス選手にとって少年時代のアイドルだったというグアルディオラ監督。他にも彼を尊敬しているという有名サッカー選手は数多くいるのです。

多くのトップアスリートから尊敬の眼差しを受けているペップことグアルディオラ。監督しても素晴らしい結果を残す偉大なる監督の片鱗が垣間見れることができます。いい選手であっても、必ずしもいい指導者になるとは限りません。しかし、もしいい指導者になれる人の共通項があるとしたら私は1番に人から尊敬を集めるほどの人間性を挙げます。

監督としての采配

指導者養成学校に通っていたというグアルディオラ監督。現役引退と同時にバルセロナBチームの指揮官としてデビューを果たします。その後、フランク・ライカールト氏の後任としてバルセロナのトップチームの監督に就任。

ホームグランドであるカンプ・ノウに長い時を経て監督として戻ってきたのでした。就任1年目でありながらラ・リーガ、コパ・デル・レイ、チャンピオンズ・リーグを優勝しタイトルを立て続けに獲得。

監督就任初年度に3冠というスペインサッカー史上初となる快挙を達成しました。「このチームがクラブ史上最強だとは思わないが、最高の成績は残せた」と話したグアルディオラ監督。バルセロナの黄金期を支え、名将の仲間入りを果たすと采配を振るう舞台をドイツに移します。

次に就任したのはブンデス・リーガのバイエルン・ミュンヘンの監督でした。開幕から首位をキープし7試合を残してのブンデスリーガ最速優勝を果たしました。その後、イングランドに移ります。プレミア・リーグのマンチェスター・シティで監督に就任します。

プレミアリーグ史上歴代最多となる15連勝を達成し、プレミアリーグで優勝しました。史上初の”勝ち点100”と”106得点”という記録も作ったグアルディオラ監督。名門クラブの3チームで監督として指揮し、142試合で90勝を挙げ、換算すると63.3%という驚異的勝率を残したのです。

私がいつも参考にしている指導者はグアルディオラ監督のようにどんなチームに行っても結果を残せる人です。なぜならば、チームが違えば人も違います。支えている人、その土地に根差した文化や伝統があります。そういった環境であってもチームを勝利に導ける本質を知っている指導者はどんな環境でも結果を出していけるからです。スポーツメンタルコーチとして指導者をサポートする際にもモデリング理論というものがあります。その際にグアルディオラ監督のような事例はとても貴重であり、研究することで結果が出せる指導者の本質を理解することが出来るのです。

GKにまで直接関わる指導方法

グアルディオラ監督が求めるポゼッションサッカーにおいて重要な役割を担うというゴールキーパーのポジション。彼が育ててきた守護神には、ビクトール・バルデス選手、マヌエル・ノイアー選手、エデルソン選手と世界で指折りのキックに定評のある名手たちがいます。

元教え子のルーカス・レーダー選手もグアルディオラ監督に大きな影響を受けたゴールキーパーの1人。「ペップは遊び心のある指導法で僕らにたくさんのことを教えてくれた」と話しています。

普通は、ゴールキーパーの練習に監督が、直接的に指導したり関わることは珍しいのだそうです。しかし彼はビルドアップへのこだわりの強さからゴールキーパーのトレーニングを頻繁にチェックしにきたのです。

ゴールキーパーの中でもマヌエル・ノイアー選手は、全てを完璧にこなしていました。指揮官が納得するようなトレーニングを行えていることで、現在もノイアー選手が世界でトップレベルのゴールキーパーであることもうなづけます。

またルーカス・レーダー選手は、グアルディオラ監督の理論的な教え方も記憶に刻まれているそうです。「僕は練習の中で、時々ロングボールを蹴ってしまうことがあったんだ。他の選択肢があったにもかかわらずに。だけどそんなミスをした時もペップは決して怒鳴ったりしなかった。目的のためにどのような解決策があるのかを練習後のミーティングで丁寧に教えてくれたんだ。」と話しました。

各ポジションの専属コーチなどに任せっきりにせずに”自らの哲学を丁寧に教え込む”それが、グアルディオラ監督の指導方法なのです。

グアルディオラ監督が素晴らしいのが理論的であり、感情に頼らない指導をするところです。プロサッカー選手の38%がうつ病や不安障害を抱えると言われる現代において、グアルディオラ監督のように怒ったり、怒鳴ったりすることをしないことで救われている選手も多いのではないかと思います。多くの指導者が誤解しているのが、叱ることで選手のパフォーマンスが高まると思っていることです。しかし、科学的には叱ることで能力が伸びることもわかっています。しかし、その後、叱られた人は伸び悩むこともわかっているので叱らないで指導する方法を知っておくことに越したことはありません。

世界で最も影響力のある監督

”史上最高のチーム”を作り上げることで”世界で最も影響力のある監督”と称されるグアルディオラ監督。バルセロナ、バイエルン・ミュンヘンそしてマンチェスターシティと彼の元で戦術アナリストとして働いたドメネク・トレント氏は「ペップは勇敢だ」と話します。

内に秘めているものは”計算された勇気”。全てのことがしっかりと見えているように感じるのだそうです。”大変な時にこそ周囲の人を落ち着かせてくれる”監督として一番大切な素質を持っていたグアルディオラ監督。

バルセロナの監督を退任すると聞いた時のことも「私の任期はあと2年残っていた。しかし彼を心から尊敬していたからこそ自身も退任することを決めた。彼がいたから私がいたのであり、彼がいない場所では任務を遂行できない」と思ったからでした。

また共にバルセロナに所属し、GK コーチとして彼を支えたフアン・カルロス・ウンズエ氏は「トレーニングゲームであっても”勝利に対する欲求”が溢れていたのだそうです。このような気持ちがあれば全ての試合でベストを尽くせるものだ」と話します。

「自身の持つエネルギーと情熱をチームに広めた。そして選手たちは、ペップが発信するもの、自分達が実行するものを通じて”自分達は何でもできる”と感じたのだそうです。”優秀な選手を要したチームにプレーしやすい環境を与えることができたのならば、全てのゲームで良い結果を出し優勝することも難しくなくなるのです。

最後に忘れてはいけないのは、指導者としての情熱です。当たり前のことですが、「自分たちは出来る」と思わせてくれる指導者ほど貴重な存在はありません。しかし、多くの日本人指導者ほど、出来ている所以上に、出来ない所ばかりに目を向けがちです。個人、チームが強くなるためにもダメなところをちゃんと改善することが必要ではあります。しかし、それだけに囚われてしまうと最も大事な選手のモチベーションを大事に出来なくなってしまうのです。そういった意味ではグアルディオラ監督は最も選手だけに限らず周りにいるコーチすらもモチベートさせる貴重な存在と言えます。

今回は、サッカー指導者であるジョゼップ・グアルディオラ監督についてお話しました。選手としても素晴らしい功績でしたが、監督としてはさらに最高記録となるような数字も多く残しました。名将として必要なものは全て兼ね揃えているのです。今後どのチームで指導者として腕を振るい、どのようなチームを作り出すのか楽しみな存在です。最後までお読みいただきありがとうございました。

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【コラムの著者】鈴木颯人

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