「スポーツメンタルコーチ」として大切にしたい姿勢とは?
こんにちは。 アスリートの望む結果にメンタル面からサポートするスポーツメンタルコーチの鈴木颯人です。
昨日、私が代表を務める一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会が主催する「スポーツメンタルコーチ入門講座」を開催しました。 気がつけば、今回でなんと113回目。長く続けられているのも、アスリートの心に寄り添い、本気で彼らを支えたいという熱い思いを持ち、興味を持って参加してくださる皆さまのおかげです。本当にありがとうございます。
この入門講座では、私たち一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会が提唱している「スポーツメンタルコーチング」の理論や考え方、そして現場での実践的なアプローチの基礎をお伝えしています。
講座の終盤には、毎回参加者からの質問に直接お答えする時間を設けているのですが、昨日はとくに皆さんの熱気が高く、質疑応答が盛り上がり、なんと予定時間を30分も延長してしまいました(笑)。
その中で、私自身にとっても非常に印象的であり、改めて原点に立ち返らされるような質問がありました。 それは、「どんなスポーツメンタルコーチが、実際の現場で長く活躍していると思いますか?」という問いです。
本日は、この問いに対する私なりの答えをベースに、これからアスリートのメンタルを支えたいと考えている皆さまへ向けて、私が最も大切だと感じている「コーチとしての姿勢」について、心理学的な観点も交えながらお話ししたいと思います。
【コラムの著者】鈴木颯人

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会 代表理事
慶應義塾大学健康情報コンソーシアム 会員
メンタルトレーニング推進国会議員連盟 所属
プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら
【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから
【著書】
・弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉(三五館シンシャ)
・一流をめざすメンタル術(三五館シンシャ)
・モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術(KADOKAWA)
・最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす(KADOKAWA)
・メンタルコーチが教える潜在能力を100%発揮する方法(KADOKAWA)
・親が変われば子どもが変わる(三五館シンシャ)
・うちの子のやる気スイッチを押す方法教えてください(かんき出版)
・アスリートの心を磨く言葉と魂を揺さぶる絶景(PIE International) 他多数

活躍し続けるコーチの共通点は「謙虚さ」
「どんなスポーツメンタルコーチが活躍していると思いますか?」 この問いを受けて、私は少し考え込みました。なぜなら、私自身が「これが正解だ」と断言できるほど完成された存在ではなく、まだまだ学びの途中であり、誰かを一方的に評価できるような立場ではないと常々感じているからです。
それでも、これまで数多くのトップアスリートやアマチュア選手たちと本気で向き合ってきた自分の経験を振り返り、また同業の素晴らしいコーチたちの姿を見てきて、一つの答えを出すとしたら。 それは、「謙虚さを持ち続けている人」だと思いました。
「謙虚さ」は、対人支援を行うスポーツメンタルコーチにとって永遠のテーマです。 私たちは、選手を支える先生のような存在であり、時として彼らの人生を左右するほどの決断に寄り添う伴走者でもあります。だからこそ気をつけなければならないのが、「自分が一番正しい」「私はこの選手のことを誰よりも理解している」と無意識に思い込んでしまうことです。
心理学の世界には、「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれる認知バイアスが存在します。これは、ある分野に関する知識や能力が低い人ほど自分を過大評価してしまい、逆に真の実力を持つ熟練者ほど「自分はまだまだ知らないことがある」と自己を過小評価する傾向にある、というものです。 私自身も過去に、少し経験を積んだ段階で「もう誰からも学ばなくていいのではないか」と錯覚しかけた時期がありました。まさにこの認知バイアスに陥りかけていたのです。 自分の能力が完璧であると思い上がった瞬間、私たちは選手の本当の心の声に耳を傾けることができなくなります。だからこそ、いまでも私は日々自分に問い続けています。
- 「自分はまだ素直に学べているか?」
- 「選手の前で謙虚でいられているか?」と。
アスリートからも学びを得る「傾聴」の心理学
本当に活躍しているスポーツメンタルコーチは、教える立場・導く立場でありながらも、同時に「選手から学ぶ」という姿勢を絶対に忘れません。
たとえば、ある競技の選手から「試合前の目標設定がうまくできず、プレッシャーに潰されてしまう」という相談を受けた時のことです。私はその対話を通じて、その競技特有のルールや環境が及ぼす心理的負担、そしてその選手が背負っているチーム内の複雑な人間関係など、私が知らなかった背景を改めて深く知ることができました。 スポーツと一口に言っても、競技によって環境も文化も、求められるメンタリティもまったく違います。個人競技と団体競技ではストレスの種類も異なります。だからこそ、「一般的な理論を知っているつもり」にならずに、目の前の選手から直接学ぶ探求心と謙虚さを持ち続けることが不可欠だと感じます。
心理学者のカール・ロジャーズが提唱した「来談者中心療法」においては、支援者が持つべき重要な態度として「無条件の肯定的関心」と「共感的理解」が挙げられています。 コーチが「自分が教えてあげる」という権威的な態度、パターナリズムをとってしまうと、選手は無意識のうちに心を閉ざし、心理的な防御壁を作ってしまいます。反対に、コーチが「あなたの体験や感情から学ばせてほしい」という対等で謙虚な姿勢を示すことで、選手は「この人は自分を一個人として尊重してくれている」と感じます。この心理的安全性こそが、選手が本音を打ち明けるための絶対条件なのです。
SNS時代だからこそ問われる「承認欲求」との向き合い方
さらに、現代におけるスポーツメンタルコーチの在り方として、SNSとの関わり方は避けて通れないテーマです。 最近では、SNS上で担当している有名選手とのツーショットを投稿したり、華々しい実績をアピールしたりするコーチの姿をよく見かけます。もちろん、スポーツメンタルという分野の認知度を高め、自身の活動を知ってもらうための発信そのものが悪いわけではありません。
けれど、ここで立ち止まって考えてほしいのです。その発信は、自分自身の「承認欲求」を満たすためになっていないか? それは、本当に選手のためになっている行動か? 心理学者アブラハム・マズローの「欲求階層説」によれば、人間には他者から認められ、価値ある存在として評価されたいという「承認欲求」が強く備わっています。コーチ自身がこの欲求に無自覚に振り回されてしまうと、「選手の成功は、私のアドバイスのおかげだ」という自己中心的な思考に陥り、選手を自分の実績を誇示するためのツールとして扱ってしまう危険性があります。
アスリートは、自分に向けられる視線や感情の動きに対して非常に敏感です。コーチの意識のベクトルが「選手自身の成長」ではなく「コーチ自身の評価」に向いていることを、彼らは直感的に見抜きます。そうなれば、どれだけ時間をかけて築いた信頼関係であっても、一瞬で崩れ去ってしまうでしょう。 SNSという誰もが発信できる便利なツールがある時代だからこそ、自分の立ち位置を客観的に見つめ直し、エゴをコントロールすることがプロフェッショナルとしての在り方だと思っています。
これからスポーツメンタルコーチを目指すあなたへ
これから本気でアスリートのメンタルを支えたいと思う方へお伝えしたいのは、スポーツメンタルコーチとして活動するためには、脳科学や心理学に基づいた体系的な理論を学ぶ必要があるということです。 選手の心に寄り添うためには、ただの精神論や経験則だけでなく、確かな知識がベースになければなりません。
そのためには、専門的なトレーニングを受けたり、体系化された講座を受講したり、現場での実践経験を積むことが非常に重要です。 スポーツ心理学に関するセミナーに参加したり、経験豊富な専門家の講演を聴きに行ったりすることも、あなたの知見を広げる大きな助けとなるでしょう。また、信頼できる資格を取得することは、あなた自身の専門性を示す裏付けとなり、選手との初期の信頼構築においても役立ちます。
しかし、どんなに膨大な知識を詰め込み、数多くの資格を持っていたとしても、最終的に問われるのはそこではありません。 どんな仕事にも「技術」や知識は必要ですが、それ以上に大切なのが、その人の「在り方」です。
スポーツメンタルコーチは、「人と向き合う」仕事です。 機械を修理するのではなく、日々揺れ動く人間の心に直接触れる仕事です。 だからこそ、どんなに経験を積んでも決して驕らず、いつでも謙虚に、素直に、そして目の前の選手から学び続けられる人が、この世界で本当に長く活躍し、選手から愛され頼られる存在になっていけるのだと思います。
知識を得るための学びは大切ですが、人としての器を広げるための学びは一生涯続いていきます。 あなたも、謙虚な姿勢と飽くなき探求心を持ち、選手と共に泣き、共に笑い、共に成長していけるようなスポーツメンタルコーチを一緒に目指してみませんか?
「One athlete,One mental coach〜1人のアスリートに、1人のメンタルコーチを〜」



