スポーツを通して子供のメンタルを育てる|親ができる心理学アプローチ

こんにちは、スポーツメンタルコーチの鈴木颯人です。

日々、スポーツに打ち込むお子さんを一番近くでサポートされている親御さん、本当にお疲れ様です。毎日の送迎やお弁当作り、週末の試合の応援、泥だらけのユニフォームの洗濯など、皆様の献身的なサポートがあるからこそ、子供たちは大好きなスポーツに全力で取り組むことができています。

私はこれまで、プロ野球選手やオリンピック選手といったトップアスリートから、部活動やクラブチームで頑張る学生アスリートまで、数多くの選手のメンタルサポートを行ってきました。そして同時に、彼らを支える親御さんからのご相談も数え切れないほど受けてきました。

  • 「うちの子、練習では上手くいくのに、本番になると緊張して本来の力を発揮できないんです」
  • 「試合に負けた後、どう声をかけていいかわかりません」
  • 「親として、どこまで口出ししていいのか悩んでいます」

このようなお悩みは、スポーツをするお子さんを持つご家庭であれば、決して珍しいものではありません。親御さんの「子供の可能性を最大限に引き出してあげたい」「悔いのないように頑張ってほしい」という深い愛情があるからこそ、悩みや葛藤も深くなるのだと思います。

実は、子供 メンタル スポーツの関係性において、一番近くにいる「親御さんの存在」は、良くも悪くも絶大な影響力を持っています。親御さんの無意識の声かけや態度が、子供の心の状態を大きく左右し、それがそのままプレーのパフォーマンスに直結するのです。

今回は、心理学的な視点や私が実際に現場で見てきた事例を交えながら、お子さんの心が強くなり、スポーツをもっと楽しみながら結果を出せるようになるための「親の関わり方」について、じっくりとお伝えしていきたいと思います。

【コラムの著者】鈴木颯人

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会 代表理事
慶應義塾大学健康情報コンソーシアム 会員
メンタルトレーニング推進国会議員連盟 所属

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

【著書】
・弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉(三五館シンシャ)
・一流をめざすメンタル術(三五館シンシャ)
・モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術(KADOKAWA)
・最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす(KADOKAWA)
・メンタルコーチが教える潜在能力を100%発揮する方法(KADOKAWA)
・親が変われば子どもが変わる(三五館シンシャ)
・うちの子のやる気スイッチを押す方法教えてください(かんき出版)
・アスリートの心を磨く言葉と魂を揺さぶる絶景(PIE International) 他多数

CONTENTS

子供の心を育む言葉の力と心理学的な理由

スポーツの現場では、技術や体力の向上には多くの時間が割かれますが、心の状態(メンタル)のケアやトレーニングは見落とされがちです。しかし、どれほど素晴らしい技術を持っていても、心が揺らいでしまえば、その技術を本番で発揮することはできません。

では、子供の心を安定させ、強くしていくためには何が必要なのでしょうか。その大きな鍵を握るのが、親御さんが日々発する「言葉」です。

心理学には「ピグマリオン効果」という言葉があります。これは、人は他者から期待されることで、その期待に沿った成果を出しやすくなるという心理的傾向のことです。アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールによって提唱されました。

例えば、親御さんが心から「あなたならできるよ」「今日の試合、きっと楽しめるよ」と期待を込めて言葉をかけると、子供は無意識のうちにその期待に応えようとし、ポジティブなエネルギーを生み出します。

逆に、「ゴレム効果」というものもあります。これは、周囲から期待されないことで、パフォーマンスが低下してしまう現象です。「どうせまたミスするんでしょ」「なんでいつも大事なところで失敗するの」といったネガティブな言葉を浴びせ続けると、子供の脳は「自分はミスをする人間なんだ」と認識してしまい、実際にミスを引き起こしやすくなります。

子供にとって、親は絶対的な存在であり、自分を守ってくれる一番の理解者です。だからこそ、親の言葉は子供の潜在意識に深く刻み込まれます。技術的な指摘や結果に対する厳しい言葉は、親御さんとしては「もっと上手くなってほしいから」という愛情の裏返しなのですが、心理学的な観点から見ると、子供の脳にブレーキをかけ、萎縮させてしまう原因になることが多いのです。

試合前の声かけを変えてパフォーマンスが激変したサッカー少年のA君

ここで、私が実際にサポートさせていただいた小学生のサッカー少年、A君と親御さんの事例をご紹介します。

A君はチームのレギュラーとして活躍していましたが、ある時期から試合になるとミスを連発し、動きが硬くなってしまうというスランプに陥っていました。お父様は熱心な方で、試合前になるといつも

  • 「今日は絶対に負けられないぞ」
  • 「相手の〇〇番にボールを持たせるな」
  • 「練習でやったことを全部出せ」

と、具体的な指示と強い発破をかけていました。

お父様としては、A君の集中力を高めるためのアドバイスのつもりでした。しかし、A君のお話をじっくり聞いてみると、彼の心の中は「お父さんの言う通りに動かなきゃ」「ミスをして怒られたくない」という恐怖心でいっぱいになっていたのです。

先ほども触れたように、人間の脳はネガティブな感情を抱くと、筋肉を緊張させ、視野を狭くしてしまいます。A君は、お父様の言葉によって無意識にプレッシャーを感じ、自らパフォーマンスを下げる状態を作り出していました。

そこで私は、お父様に「試合前の声かけのルール」を一つだけ提案しました。それは、技術的な指示や勝敗に関する言葉を一切封印し、試合に向かう前に「今日も楽しんでおいで。応援しているよ」とだけ伝えてもらうことでした。

最初は「それだけで大丈夫でしょうか?」と半信半疑だったお父様ですが、次の試合で約束通り実践してくださいました。すると、驚くべき変化が起きました。A君の顔から強張りが消え、試合中も伸び伸びとピッチを駆け回るようになったのです。ミスをしても下を向くことなく、すぐに次のプレーに切り替える姿がありました。

試合後、A君は「今日はなんだか体が軽かった。サッカーが楽しかった!」と笑顔で語ってくれました。親の言葉一つ、関わり方一つで、子供のメンタルはここまで劇的に変わり、それがプレーに表れるということを証明してくれた事例です。

結果ではなく「プロセス」に目を向ける心理学的な意味

スポーツをしている以上、勝ち負けやレギュラー争いといった「結果」は必ずついて回ります。親御さんが結果に一喜一憂してしまうのは当然のことです。しかし、子供のメンタルを強くし、長期的な成長を促すためには、結果ではなく「プロセス(過程)」を承認することが非常に重要になってきます。

スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエックは、人間の考え方には大きく分けて二つのマインドセットがあるとしています。一つは、人間の能力は生まれつき決まっていて変えられないと考える「硬直型マインドセット」。もう一つは、人間の能力は努力や経験によって伸ばすことができると考える「しなやかマインドセット」です。

親御さんが「勝ったこと」「点を入れたこと」「才能」ばかりを褒めていると、子供は硬直型マインドセットになりやすくなります。「勝てば価値があるけれど、負けたら自分には価値がない」「ミスをするのは自分の才能がないからだ」と考えるようになり、新しいことへの挑戦を恐れたり、困難にぶつかった時にすぐに諦めたりするようになります。

一方で、「毎日素振りを頑張っていたね」「最後まで諦めずにボールを追いかけていた姿勢が素晴らしかったよ」「失敗しても次にどうすればいいか考えていたね」と、結果に至るまでの「努力」「工夫」「姿勢」といったプロセスを褒めるようにすると、子供はしなやかマインドセットを育むことができます。

「努力すれば成長できる」「失敗は学びのチャンスだ」と捉えられるようになるため、壁にぶつかっても挫けず、粘り強く取り組む強いメンタルが養われるのです。

結果は相手の強さや運といったコントロールできない要因に左右されますが、プロセスは自分でコントロールできるものです。コントロールできない結果ばかりに焦点を当てるのではなく、子供自身がコントロールできる行動や態度に焦点を当てて承認してあげることで、子供の心は驚くほど安定していきます。

過干渉が招いた燃え尽きからの回復

次に、中学生のテニス選手、Bさんの事例をお話しします。

Bさんのお母様は、Bさんが幼い頃からつきっきりで練習をサポートし、食事の管理からスケジュールの調整、さらにはコーチの指導方針にまで意見をするほど、非常に熱心な方でした。Bさんもそれに応えるように好成績を収めていましたが、中学2年生になった頃から突然、「もうテニスをやりたくない」「コートに立つと動悸がする」と言い出し、ラケットを握れなくなってしまいました。

いわゆるバーンアウトに近い状態です。

心理カウンセリングを通じてBさんの心の声をひもといていくと、彼女は「自分のためにテニスをしている」のではなく、「お母さんを喜ばせるため、お母さんを怒らせないためにテニスをしている」という状態になっていたことがわかりました。親の期待が大きすぎた結果、子供が自分の人生を生きている感覚を失ってしまっていたのです。

親御さんは「子供のためを思って」行動しているつもりでも、それが度を過ぎて過干渉になると、子供の心からスポーツを楽しむ純粋な喜びを奪ってしまいます。

このケースでは、まずお母様に「境界線」を引くことの重要性をご説明しました。親の課題と子供の課題を明確に分け、子供の領域に踏み込みすぎないように意識していただきました。

具体的には、練習内容についての口出しを一切やめ、試合のビデオを見ての反省会も廃止しました。その代わり、テニス以外の日常の何気ない会話を増やし、「テニスをしてもしなくても、あなたの価値は変わらない。大切な子供だよ」という無条件の愛情を伝えてもらうようにしました。

時間はかかりましたが、親御さんが距離感を保ち、見守る姿勢に徹したことで、Bさんの心に少しずつ余裕が生まれました。「お母さんのため」ではなく、「自分が打ちたいから打つ」という本来のスポーツの楽しさを取り戻し、半年後には再び笑顔でコートに立てるようになりました。

心理的安全性が挑戦する勇気を育む

子供がスポーツにおいて、思い切ったプレーをしたり、新しい技術に挑戦したりするためには、失敗を恐れない心が必要です。その土台となるのが、家庭やチームにおける「心理的安全性」です。

心理的安全性とは、自分の考えや気持ちを誰に対しても安心して発言できる、本来の自分をさらけ出しても拒絶されたり罰せられたりしないと感じられる状態のことです。ビジネスの組織論などでよく用いられる言葉ですが、家庭環境においても非常に重要な概念です。

試合でミスをして帰ってきた時、家で親から「なんであんな簡単なミスをしたの!」「だからいつも言っているでしょう」と責められる環境では、家庭は心理的安全性の低い場所になってしまいます。すると子供は、「失敗したら怒られる」「がっかりされる」と学習し、次の試合ではミスをしないことばかりに意識が向く「萎縮したプレー」しかできなくなります。

逆に、どれだけ酷い試合をして帰ってきても、親が「お疲れ様。今日は悔しかったね。あなたの好きなご飯作っておいたよ」と温かく迎え入れてくれる環境であれば、家庭は子供にとって最高の安全基地になります。

安全基地があるからこそ、子供は外の世界で思い切り戦うことができます。失敗しても、帰る場所があり、ありのままの自分を受け入れてくれる人がいると心底信じられることで、リスクを取って挑戦するメンタルが養われるのです。

親御さんに心がけていただきたいのは、良い結果を出した「アスリートとしての子供」だけを愛するのではなく、結果が出なくても、ただそこにいるだけの「一人の人間としての子供」を無条件に承認し、受け入れることです。この無条件の肯定こそが、揺るぎない心の強さを作る最大の栄養となります。

親自身の「心の余裕」が子供に伝染する

ここまで、親の言葉や関わり方が子供に与える影響についてお話ししてきましたが、実はもう一つ、心理学的に見逃せない重要なポイントがあります。

それは、「感情は伝染する」ということです。心理学ではこれを「情動伝染」と呼びます。人間は、身近にいる人の表情や声のトーン、しぐさを無意識のうちに模倣し、その結果として同じ感情を抱きやすくなるという性質を持っています。

つまり、親御さんが試合の勝ち負けに過度に執着し、焦りや不安、イライラといったネガティブな感情を抱えていると、言葉に出していなくても、その空気感は確実に子供に伝染します。親が緊張してガチガチになっていると、子供もなぜか緊張してしまうのです。

逆に、親御さんが心に余裕を持ち、子供がスポーツをしていること自体を喜び、リラックスして楽しそうに応援していると、そのポジティブで安心感のある感情も子供に伝染します。「お父さんお母さんが楽しそうに見てくれているから、自分も楽しんでいいんだ」と、子供はリラックスしてプレーに集中することができます。

子供のメンタルを整えたいと思った時、まず最初に取り組むべきは、実は「親御さん自身のメンタルを整えること」なのです。

ご自身の仕事や家事で忙しい中、子供のスポーツのサポートまでするのは本当に大変なことです。ストレスが溜まることもあるでしょう。だからこそ、親御さん自身が息抜きをする時間を持ったり、スポーツの結果とご自身の価値を切り離して考えるなど、心の余裕を保つ工夫が必要です。親御さんの笑顔と心のゆとりが、子供にとって何よりのメンタルサポートになります。

親が変われば、子どもは変わる

いかがでしたでしょうか。子供 メンタル スポーツの三つは深く結びついており、そこには親御さんの関わり方が多大な影響を及ぼしていることをお伝えしてきました。

「もっと早く知っていれば…」「今まで子供にきつい言葉をかけてしまっていた」と、ご自身を責めてしまう親御さんもいらっしゃるかもしれません。しかし、どうかご自身を責めないでください。皆様がこれまでやってこられたことは、すべて「子供への深い愛情」から出発していることを私はよく知っています。

大切なのは、「気づいた今日から、関わり方を変えていくこと」です。

声かけの質を変え、結果ではなくプロセスを承認し、心理的に安全な家庭という基地を作り、親御さんご自身が心に余裕を持つ。これらを少しずつ実践していくことで、お子さんの表情は必ず変わってきます。お子さんの心が自由になり、本来持っている可能性がどんどん開花していくのを、きっと実感していただけるはずです。

もし、今日お話しした内容をさらに深く学びたい、「頭ではわかっていても、いざとなるとどう実践していいかわからない」とお悩みであれば、私が執筆した書籍『親が変われば子どもが変わる』をぜひ手に取ってみてください。

この本では、数多くのアスリート家庭をサポートしてきた経験と心理学的な裏付けをもとに、親御さんが具体的にどのように考え、どのように子供に声をかければいいのか、より実践的なノウハウや豊富な事例を余すことなく詰め込んでいます。

お子さんがスポーツを通じて、勝つ喜びも負ける悔しさも、すべてを人生の糧として大きく成長していけるように。そして、親御さん自身も、お子さんのスポーツサポートを心から楽しめるように。

このコラムが、皆様のより良いサポートの一助となれば、これほど嬉しいことはありません。最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

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