チームのために個人の目標は捨てるべき?アスリートが知るべきメンタル戦略

スポーツの世界で、日々限界に挑み続けているアスリートの皆さんへ。スポーツメンタルコーチの鈴木颯人です。

日々の厳しい練習、スタメンを勝ち取るための熾烈な競争、そして試合本番でのプレッシャー。スポーツの世界で高みを目指すアスリートは、毎日様々な感情と向き合いながら競技に打ち込んでいることでしょう。

その中でも、サッカー、野球、バスケットボール、バレーボールといった、チームで勝利を目指す団体競技において、非常に多くの選手が抱える深く、そして苦しい悩みがあります。

それは、「個人の目標は、チームの目標のために犠牲にすべきなのか?」という葛藤です。

団体競技は、個人競技に比べて関わる選手の数が圧倒的に多く、当然ながら試合に出場できる枠は限られています。日々仲間でありながらライバルでもある選手たちと競い合う、非常に厳しくシビアな世界です。

「チームのために自分がいるのか」それとも「自分の成長やキャリアのためにチームがあるのか」。 この二つの考えの間で揺れ動き、様々な葛藤を抱えながらも前に進むことができず、苦しんでいる選手を私はこれまで数多く見てきました。

団体競技の選手は、心の中でとても辛い想いを抱えています。 プロであれアマチュアであれ、アスリートとして生き残るためには、どうしても個人での結果を残さなければなりません。しかし同時に、チームスポーツである以上、チームとしての勝利や結果も絶対的に求められます。

「自分のプレーや結果に集中したい」 けれど、「チームの戦術や周りの状況、チームの勝敗が気になって仕方がない」 個人を優先すべきか、それともチームを優先すべきか。

悩み抜いた末に、気づけば周りが見えていない自分よがりな目標になってしまったり、逆に自分の持ち味を殺してしまうような過度な自己犠牲によるチーム優先の目標になってしまったりします。 チームの一員である以上、個人の目標とチームの目標、どちらかに気持ちが強すぎても、あるいは完全に分離してしまっても、そこには確実に強いストレスしか生まれません。

では、なぜ「目標」を持つことで、これほどまでにストレスが溜まってしまうのでしょうか? 心理学的な観点から紐解くと、そこにはある明確な理由が隠されています。

それは、多くのアスリートが「正しい目標設定」の方法を知らないからです。

【コラムの著者】鈴木颯人

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会 代表理事
慶應義塾大学健康情報コンソーシアム 会員
メンタルトレーニング推進国会議員連盟 所属

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

【著書】
・弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉(三五館シンシャ)
・一流をめざすメンタル術(三五館シンシャ)
・モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術(KADOKAWA)
・最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす(KADOKAWA)
・メンタルコーチが教える潜在能力を100%発揮する方法(KADOKAWA)
・親が変われば子どもが変わる(三五館シンシャ)
・うちの子のやる気スイッチを押す方法教えてください(かんき出版)
・アスリートの心を磨く言葉と魂を揺さぶる絶景(PIE International) 他多数

CONTENTS

葛藤が生み出す「認知的不協和」というメンタルの罠

心理学には「認知的不協和」という言葉があります。人は自分の中に矛盾する二つの感情や考え方を抱えると、強い不快感や心理的ストレスを覚えるというものです。

「個人の結果を出したい」という思いと、「チームのために自己犠牲を払わなければならない」という思い。この二つの目標が別々に存在し、自分の中で対立していると感じる状態は、まさにこの認知的不協和を引き起こしています。

この見えないストレスは、アスリートの脳のワーキングメモリ・作業記憶を無駄に消費し、目の前のプレーに対する集中力を著しく低下させます。思考が綱引きをしている状態では、無意識の力みが生まれ、本来持っている最高のパフォーマンスを発揮することは絶対にできません。

では、ここで話す「正しい目標設定」とは一体何なのでしょうか。 私が実際にサポートした、ある選手の事例を通じてお伝えしたいと思います。

プロサッカー選手の事例 交差する個人の夢とチームの現実

彼は、プロの世界で活躍して7年目になるサッカー選手でした。 チームではキャプテンという重要な役割も任されていましたが、同時に個人のキャリアや今後の進路についても深く悩んでいました。

「今のチームで絶対に優勝したい」という強い思いがある一方で、

  • 「日本代表に入りたい!」
  • 「欲を言えば、海外リーグにチャレンジしてチャンピオンズリーグにも出場したい」

という、大きな個人的な夢も抱えていました。

そんな個人的な夢とチームで達成したい目標を両方抱えていた彼ですが、ある時期からチームの試合結果が思わしくなくなり、それに伴って彼個人としても試合への出場が途切れるという苦しい状況に陥ってしまいました。

日本代表や海外挑戦という大きな夢を思い描きながらも、目の前ではチームとしての結果が出ない。キャプテンとしての責任感と、個人のキャリアへの焦りが交錯し、彼はその状況に強く苛立っていました。

そこで、私は彼に対してある質問を投げかけたのです。

  • 「あなたの個人的な目標を達成すると、チームにはどんな良い影響があるかな?」
  • 「あなたの目標を達成することは、チームの目標にどう貢献できると思う?」
  • 「あなたの目標が達成されるプロセスは、チームにどんな成長を与えることができるかな?」

心理学が証明する「目標の統合」と質問の力

なぜこのような質問をしたのか。それは、チームの目標と個人の目標を、対立するものとして切り分けて考える必要は全くないからです。

それよりも、『個人の目標の先にチームの目標がある』ということを心底理解してほしかったのです。

多くの人が、チームの目標と個人の目標を別々のベクトルとして考えます。指導者からそう教わってきたからなのか、プレッシャーで視野が狭くなっているからなのか、理由は定かではありません。しかし、先ほどの認知的不協和の通り、個人とチームの目標を切り離して対立させると、確実にメンタルに負荷がかかります。

この問題を根本から解決するためには、個人の目標の延長線上にチームの目標への貢献が繋がっているという「目標の統合」を行うことが不可欠です。

また、私が直接「こう考えなさい」と理由を教えるのではなく、質問を通じて選手自身に気づきを得てもらったのにも、深い心理学的な理由があります。

心理学における「自己決定理論」では、人から与えられた目標よりも、自分で気づき、自分で決定した目標の方が、圧倒的に高いモチベーションとパフォーマンスを生み出すことが分かっています。 質問によって「自分自身の思考を客観的に見つめる能力」であるメタ認知を促すことで、彼自身が「自分の個人的な成長が、結果としてチームを救うんだ」という事実に気づき、個人の目標がチームと紐づいていることを無意識レベルで深く納得することができたのです。

迷いが消え、やるべきことが明確になったこの選手は、見事にパフォーマンスを取り戻しました。 最終的には念願だった海外へのチャレンジを果たし、日本代表にも選出されました。そして、チャンピオンズリーグへの出場という大きな夢までも叶えることができたのです。

万人に共通する「正解」は存在しない。あなただけの目標設定を

スポーツにおける目標というのは凄く大事な道標ですが、目標設定という作業は皆さんが思っている以上にとても繊細なものです。

今の時代、インターネットやSNSを開けば、巷にはスポーツのメンタルや目標設定に関する様々なノウハウが溢れています。しかし、無料で拾える情報がこれほどあるにも関わらず、結果を出せない人はいつまで経っても出すことができません。

つまり、知識だけを拾い集めるような学習には、どうしても限界があるのです。

だからこそ、私は表面的な知識や理論だけを伝えるような方法はとりません。必ず、選手自身の体験や内面から湧き上がる気づきが伴った方法で伝えています。(その具体的なアプローチについては、ぜひ体験コーチングで実感していただきたいと思っています

一般的な知識をお伝えすることは、本を読めば誰にでもできます。 しかし、本気で結果を残してもらうためには、1人1人の性格や背景に合ったアプローチが絶対に重要になってきます。

人間の体格や骨格が1人1人違うように、スポーツと向き合うメンタルだって1人1人全く違うのです。それを決まった型にはめて「こうあるべきだ」と伝える指導法には、私はいつも疑問と限界しか感じていません。

同じ経験をし、同じ環境で育ってきた人間など、この世に誰一人としていません。 だからこそ、1人1人の価値観や心の動きに合った伝え方でないと、本当の意味でのメンタルの成長や、パフォーマンスの飛躍はないと私は確信しています。

どんなに高い壁にぶつかっていても、思考の整理と正しいアプローチがあれば、必ず道は開けます。 そのために、私はこれからも型にはめることなく、1人1人のアスリートの心に深く寄り添い、共に歩むスポーツメンタルコーチであり続けたいと思っています。

最後までお読みいただきまして、本当にありがとうございます。あなたの目標達成を、心から応援しています。

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