スポーツメンタルコーチ資格講座を立ち上げたのが2012年。あれから13年という月日が経ちました。
現在、この記事を読んでくださっているあなたは、きっと「アスリートのメンタルを支えたい」「スポーツの現場で頑張る選手の力になりたい」という強い想いを持っていることでしょう。指導者であれ、保護者であれ、あるいはこれからスポーツメンタルコーチを志す方であれ、人の心をサポートするという道のりは決して簡単ではありません。
13年前、私がこの講座を作るにあたり、あらためて向き合ったテーマがあります。それは「メンタルとは一体何なのか」という根本的な問いを学び直すことでした。
スポーツの現場では、いまだに「気合」や「根性」といった精神論が語られることがあります。しかし、本来メンタルとは精神論や曖昧な感覚ではなく、確かな知識に基づき、再現可能な「技術」として扱うべきものです。その技術を体系的に伝えるために、私は歴史に立ち返りました。
【コラムの著者】鈴木颯人

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会 代表理事
慶應義塾大学健康情報コンソーシアム 会員
メンタルトレーニング推進国会議員連盟 所属
プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら
【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから
【著書】
・弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉(三五館シンシャ)
・一流をめざすメンタル術(三五館シンシャ)
・モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術(KADOKAWA)
・最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす(KADOKAWA)
・メンタルコーチが教える潜在能力を100%発揮する方法(KADOKAWA)
・親が変われば子どもが変わる(三五館シンシャ)
・うちの子のやる気スイッチを押す方法教えてください(かんき出版)
・アスリートの心を磨く言葉と魂を揺さぶる絶景(PIE International) 他多数

メンタルトレーニングの源流 極限状態を生き抜くための科学
現代のメンタルトレーニングが体系化された大きな起点の一つ。それは、冷戦時代のソ連(現在のロシア)における宇宙開発にあります。
宇宙空間という、プレッシャーと恐怖が渦巻く極限環境において、人間の能力を最大限に引き出し、冷静な判断を下すためにはどうすればいいのか。そのために、ソ連は人間の「心理」を科学として扱う必要に迫られました。
彼らはどこからそのヒントを得たのでしょうか。それは、生理学と心理学、そして東洋思想の本質でした。
具体的には、以下のような要素が科学的なトレーニングとして抽出されました。
- 無心 心理学でいう「選択的注意」や「フロー状態」への導入です。余計な情報から意識を切り離し、目の前のパフォーマンスに注意を一点集中させる技術。
- 呼吸 生理学的なアプローチであり、自律神経の調整です。深い呼吸により副交感神経を優位にし、極度の緊張状態でも心拍数をコントロールします。
- 平常心 情動の制御です。認知行動療法にも通じますが、出来事に対する自分の「認知(捉え方)」を変えることで、不安や焦りといった感情の波をフラットに保ちます。
- 型 心理学における「条件付け(パブロフの犬などで知られる古典的条件づけや、オペラント条件づけ)」です。特定の動作(ルーティン)を反復することで、自動的に理想的な精神状態を作り出すシステム。
これらはすべて、私たち日本人にとって、どこか懐かしく、肌感覚として理解しやすいものではないでしょうか。そう、この源流にあるのは、日本の伝統的な「禅」の思想なのです。
西洋的アプローチの限界と、過程を重んじる心
ただし、当時のソ連は禅の思想をそのまま受け入れたわけではありません。彼らは宗教観や哲学的な思想の部分を徹底的に切り捨て、「結果を出すための技術」としてのみ抽出しました。
- 「勝てればいい」
- 「稼げればいい」
- 「結果を残せればいい」。
もしスポーツにおけるメンタルを、単なるパフォーマンス向上のためのツールとして、そこだけで捉えるなら、それも一つの考え方なのかもしれません。
しかし、私はそうは思いません。アスリートのメンタルを支えたいと願うあなたにも、この点には深く共感していただけるはずです。
なぜなら、スポーツの本質において、結果そのものよりも「そこに至る過程」こそが、人間を大きく育てるからです。心理学の観点からも、勝敗や報酬といった「外発的動機づけ」だけを追い求めると、目標を見失ったときや挫折したときに、深刻なバーンアウト(燃え尽き症候群)を引き起こしやすいことが分かっています。
一方で、自己の成長や競技そのものの楽しさ、自分自身の価値観に従う「内発的動機づけ」に支えられた選手は、どんな困難にもしなやかに対応できるレジリエンスを持ち合わせています。
メンタルを学べば学ぶほど、そして禅の思想に触れれば触れるほど、結果主義に偏らない「信念」や「価値観」の大切さに気づかされます。それらは、日本という国が古来より育んできた、唯一無二の文化なのです。
アスリートの心に寄り添うために必要なステップ
これからアスリートのメンタルを支えたいと思うなら、ただ技術を教え込むだけでは不十分です。選手の不安や葛藤に寄り添い、共に解決の糸口を探るカウンセリングの視点が不可欠になります。選手は「機械」ではなく、感情を持った「人」だからです。
人の心に触れる以上、サポートする側には正しい知識が求められます。中途半端なアドバイスは、時に選手を深く傷つけ、追い込んでしまう危険性も孕んでいるからです。だからこそ、心理学の基礎から応用までをしっかりと学ぶ必要があります。
近年は、スポーツメンタルについて学ぶ環境が大きく広がりました。私の主催するものを含め、本格的な講座や、特定のテーマに絞ったセミナー、全国各地で行われる講演など、学ぶ機会は豊富にあります。
また、現場で自信を持ってサポートするための資格の取得や、遠方からでも自分のペースで深く学べる通信学習のシステムも充実してきています。大切なのは、あなた自身が「選手のために学び続ける姿勢」を持つことです。その熱意と確かな知識が融合したとき、あなたは選手にとってかけがえのない存在となるでしょう。
点と点が繋がり、未来を創る
私自身の歩みを振り返ると、高校、そして大学と、禅宗である駒澤大学で学んできた自分がいました。
世界のメンタルトレーニングの歴史を紐解き、そこに禅が関わっていると知ったとき、私は強い衝撃を受けました。当時は全く気づいていませんでしたが、私は人生にとって、そしてスポーツメンタルにとって最も大切なエッセンスを、すでに高校生の頃から学んでいたのです。
過去の経験がすべて線となって繋がり、今の活動へと結実している。そう考えると、なんとも感慨深く、すべての出会いと経験に対する「感謝」の念に堪えません。
アスリートが直面する孤独やプレッシャーは、時に想像を絶するものがあります。だからこそ、彼らの横には、心から信頼でき、科学的な知識と深い人間理解を持った伴走者が必要です。
「One athlete, One mental coach 1人のアスリートに、1人のメンタルコーチを ?」
このビジョンを実現するためには、あなたのような「選手を支えたい」と強く願う人たちの存在が不可欠です。この記事が、あなたの次の一歩を踏み出すきっかけとなれば、これほど嬉しいことはありません。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。



