箱根駅伝の激走から学ぶスポーツのメンタル。結果思考を手放し、本番で実力を発揮する心理学

箱根駅伝での激走

アスリートの皆さん、こんにちは。選手の望む未来をメンタル面から支えるスポーツメンタルコーチの鈴木颯人です。

今年は1月2日から仕事初めとなりました。お正月ということもあり、世間はゆっくりとした空気に包まれていましたが、私の心は朝から熱く高鳴っていました。それは、箱根駅伝という大舞台を走る選手の勇姿を、この目で見届けるためです。

冷たい冬の風が吹く辻堂の沿道で、私は彼がやってくるのをじっと待っていました。そして、本当に一瞬のことでしたが、目の前を颯爽と走り去る彼の姿を見た瞬間、自然と目頭が熱くなり、気がつけば涙が溢れてくる自分がいました。

選手との具体的なセッション内容については守秘義務があるため詳細を控えますが、実は彼には、この箱根路を走れるかどうかすら不安に押しつぶされそうになっていた時期がありました。大きなプレッシャーの中で葛藤し、もがき苦しんでいた彼の姿を知っているからこそ、沿道で力強く前を見据えて走る姿は、私の胸を強く打ったのです。

しかも、彼はただ走っただけではありませんでした。彼の激走は、チームの悪い流れを断ち切り、見事にチームを立て直すという最高の結果までも引き寄せたのです。彼自身にとって、持てる力を出し切った素晴らしい走りができたのではないかと確信しています。

【コラムの著者】鈴木颯人

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会 代表理事
慶應義塾大学健康情報コンソーシアム 会員
メンタルトレーニング推進国会議員連盟 所属

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

【著書】
・弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉(三五館シンシャ)
・一流をめざすメンタル術(三五館シンシャ)
・モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術(KADOKAWA)
・最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす(KADOKAWA)
・メンタルコーチが教える潜在能力を100%発揮する方法(KADOKAWA)
・親が変われば子どもが変わる(三五館シンシャ)
・うちの子のやる気スイッチを押す方法教えてください(かんき出版)
・アスリートの心を磨く言葉と魂を揺さぶる絶景(PIE International) 他多数

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スポーツにおけるメンタルの罠。「結果思考」がパフォーマンスを下げる理由

さて、ここでこの記事を読んでいるアスリートの皆さんにお伝えしたいことがあります。それは、スポーツの現場におけるメンタルの重要性と、多くのアスリートが陥りがちな心理的な罠についてです。

競技レベルが上がれば上がるほど、選手はどうしても勝利やタイムといった明確なものを求められます。しかし、どれだけ厳しいトレーニングを積んでも結果が伴わない時期や、周囲の期待や過去の栄光に応えられず今の自分に実績が伴わないと焦りを感じる時期は、どんなトップアスリートにも必ず訪れるものです。

こうした苦しい時期に、アスリートの心を最も削り、パフォーマンスを低下させてしまうのが結果思考と呼ばれる状態です。結果思考とは、文字通り「勝敗」や「順位」「記録」といった、最終的な成果にばかり意識が向いてしまう心理状態を指します。

これを心理学的な観点から紐解くと、なぜ結果に執着することがマイナスに働くのかが見えてきます。心理学には「統制の所在」という概念があります。結果というものは「対戦相手の調子」「天候」「審判の判定」など、自分ではコントロールできない外部要因が多分に含まれています。自分の力ではどうにもならない外部の出来事に意識が向いている状態は、脳に強いストレスと無力感を与え、過度な緊張状態(交感神経の過剰優位)を引き起こします。

また、「結果を出さなければ価値がない」という強迫観念は、心理学における「内発的動機づけ」を著しく低下させます。その代わり、他者からの評価や名誉といった「外発的動機づけ」に依存するようになり、これが続くと心身が燃え尽きてしまうバーンアウトのリスクも高まってしまうのです。

苦しい時期を支える「プロセス思考」への転換

では、結果が出ずに苦しい時期にはどうすればよいのでしょうか。それは、結果思考を手放し、自分自身でコントロールできる「現在の行動」や「目の前の課題」に集中する「プロセス思考」へと意識をシフトさせることです。

箱根駅伝で素晴らしい激走を見せてくれた彼もまた、未来への不安や「失敗したらどうしよう」という結果への恐怖と向き合い、それを手放していく作業を行いました。そして「今、自分ができる最高の走りの感覚」というプロセスに意識を集中させたからこそ、あのような大舞台で本来のパフォーマンスを発揮できたのだと思います。

心理学的に言えば、自分のコントロール可能な領域(フォーム、呼吸、今日の課題など)に集中することで、「自分にはできる」という自己効力感が高まります。結果への執着を手放すことで心理的安全性が確保され、適度なリラックスと集中が共存するゾーン・フロー状態に入りやすくなるのです。

選手を支えるスポーツメンタルコーチとしての2011年からの歩み

偉そうなことをお話ししましたが、私自身もスポーツメンタルコーチとして2011年からという月日を歩む中で、数多くの葛藤を抱えてきました。「選手を支えるに相応しいスポーツメンタルコーチとは何か?」という問いを、ずっと自分自身に投げかけてきたのです。

かつての私は、どこかで知識や経験、そしてコーチとしての「実績」ばかりが大事だと思い込んでいた時期がありました。アスリートに選ばれる自分でいたいと願うあまり、創業時から「結果を出せるコーチ」という外側からの評価に相応しい自分を過剰に意識していたのです。つまり、お恥ずかしながら私自身もまた、結果を追い求める思考に囚われていた一人でした。

しかし、本当に大切なのはコーチ自身の実績ではなく、目の前のアスリートがいかに自分らしく競技に向き合い、心からの納得感と幸せを感じられるかです。昨年あたりから自身の仕事のあり方を根本から見直すことが多くなり、そこに深く気づいてからは、私一人に依頼が集中するのではなく、私と同じように選手に寄り添える「信頼できるスポーツメンタルコーチ」を日本中に増やすことに比重を置くようになりました。

その結果、私が代表を務める協会の資格講座を卒業し、プロのスポーツメンタルコーチとして現場で活躍する仲間が急激に増えました。昨年は、協会を通じての契約者数だけで見ても、30名ものアスリートを卒業生であるメンタルコーチと繋ぐことができたのです。

新たな挑戦。アスリートの幸せのために

この数年を振り返ってみても、今年の年末年始は一番ゆっくりと、そして心が満たされた穏やかな状態で過ごせた気がします。教え子たちの成長と、サポートする選手の活躍という、目に見えない財産を実感できたからかもしれません。

2025年、私たちはさらにこの活動の輪を広げていきます。アスリートが結果やプレッシャーに押しつぶされることなく、心からの幸せを感じながら競技に打ち込める。そんな環境を提供できるに相応しい協会を、これからも仲間たちと共に作っていきたいと強く思っています。

今年も、アスリートの心に寄り添い、本質的な自己成長をサポートする活動を全力で続けていきます。本年もどうぞよろしくお願いいたします!!

「One athlete, One mental coach 1人のアスリートに、1人のメンタルコーチを」

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