試合と試合の間 過ごし方で差がつく!試合前の緊張を味方にするメンタル術

こんにちは、スポーツメンタルコーチの鈴木颯人です。

これまで数多くのアスリートと向き合ってきましたが、選手によって試合の間隔は本当にさまざまです。毎日試合がある過密日程の選手もいれば、毎週定期的に試合がある選手、逆に1ヶ月から数ヶ月おきに大きな大会を控えている選手もいます。

試合の数よりも練習日の方が圧倒的に多いこともあれば、連戦で練習よりも試合の方が多い時期もあるでしょう。

しかし、期間の違いはあれど「本番に向けた準備期間」であることに変わりはありません。実は、この試合と試合の間 過ごし方は、アスリートのパフォーマンスやメンタル面に多大な影響を与えていきます。

そこで今回は、効果的な試合までの過ごし方と、本番で実力を発揮するためのメンタルの作り方について、心理学的な視点も交えながら綴っていきたいと思います。

【コラムの著者】鈴木颯人

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会 代表理事
慶應義塾大学健康情報コンソーシアム 会員
メンタルトレーニング推進国会議員連盟 所属

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

【著書】
・弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉(三五館シンシャ)
・一流をめざすメンタル術(三五館シンシャ)
・モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術(KADOKAWA)
・最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす(KADOKAWA)
・メンタルコーチが教える潜在能力を100%発揮する方法(KADOKAWA)
・親が変われば子どもが変わる(三五館シンシャ)
・うちの子のやる気スイッチを押す方法教えてください(かんき出版)
・アスリートの心を磨く言葉と魂を揺さぶる絶景(PIE International) 他多数

なぜ試合前になると不安や緊張に襲われるのか?

競技の種類が違っていても、本番が近づくにつれて不安を感じる気持ちは、どのアスリートも持ち合わせています。

選手たちはよく、その時の心の状態を次のように表現してくれます。

  • 「なんだかソワソワして落ち着きません」
  • 「心にモヤがかかったような状態です」
  • 「試合までドキドキして眠れません」

本番が近づき緊張感が高まることで、このように自分の素直な気持ちを吐露する選手が増えます。ましてや、プロ契約やオリンピック、レギュラー選考など、人生を左右するような大きな試合の前であれば、当然その不安な気持ちは増大していきます。

心理学的に見ると、この試合前の緊張や不安は、人間が本来持っている「防衛本能」によるものです。心理学や生理学の世界では「闘争・逃走反応(Fight or Flight response)」と呼ばれます。

結果がどうなるか分からない不確実な状況や、他者から評価されるプレッシャーに直面したとき、脳の扁桃体が危険を察知し、交感神経が優位になります。その結果、心拍数が上がり、筋肉が硬直するのです。

つまり、試合が近づくと生まれる不安やドキドキする気持ちは、あなたが真剣に競技に向き合っている証拠であり、人間として「あって当然の反応」なのです。

だからこそ、スポーツにおいてこの気持ちを無理やりなくそうとするのではなく、この感情とどう寄り添っていくかが重要になります。試合に向けて身体を仕上げていくのと同じように、心も理想的な状態を目指して日々を過ごす必要があるのです。

CONTENTS

理想的なメンタルとは?「ポジティブ思考」の罠

では、アスリートにとって理想的なメンタルとは、どのような状態なのでしょうか?

一般的には、

  • 「絶対に勝てる!」
  • 「自分は無敵だ!」

といった、前向きでポジティブな気持ちを持ちたいと思う人が多いでしょう。ただ試合に出場するだけでなく、結果を残したいと強く願うからこそ、そうした強気な姿勢を理想の心の状態だと考えるのは自然なことです。

しかし、ここで立ち止まって考えてみてください。

「絶対に勝てる」と強く思い込むメンタル状態になれば、本当に試合に勝てるのでしょうか?

ここが、スポーツにおけるメンタルサポートにおいて非常に大事なポイントです。 結論から言うと、ただ強気なだけの理想的なメンタルが、必ずしも試合の結果に直結するとは限りません。むしろ、気分が乗らなくて理想通りになっていない時の方が、なぜか試合で勝ってしまったという経験を持つ選手も少なくないはずです。

心理学には「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれる認知バイアスがあります。能力が不足しているにもかかわらず、自分の能力を過大評価してしまう心理現象です。

試合前まで過度なポジティブ思考の象徴でもある「絶対に勝てる」という理想的なメンタルを追い求めすぎると、現実の自分を見失うリスクがあります。

過信に陥ることで、相手の分析を怠ったり、自分の弱点から目を背けたりしてしまい、結果的に試合で勝つための正しい行動がとれなくなってしまうのです。

最強でも最弱でもいい。適度な不安が最高の準備を引き出す

ここで、車の運転を思い浮かべてみてください。(免許を持っていない方は想像してみてくださいね)

初めて車の運転席に座った日、誰しも強い緊張感があったと思います。教習所で教官の運転を見て頭では分かっていても、いざ自分でハンドルを握るとなれば話は別です。得体の知れない金属の塊を自分の手でコントロールするわけですから、一歩間違えば大事故に繋がるという恐怖があります。大事故になると知っているからこそ、私たちは常に緊張感を持ち、慎重に運転することができます。

これは、運転に慣れているベテランドライバーであっても同じです。高速道路に合流する瞬間や、悪天候の日には、自然と緊張感が生まれるものです。どれだけ慣れていることであっても、危険を感じれば人間は緊張します。

アスリートにも全く同じことが言えます。

試合前、「俺は絶対に事故を起こさない(絶対に勝てる)!」と過信している人の車と、「もしかしたら事故が起きるかもしれないから気をつけよう(負けるリスクを想定して準備しよう)」と思っている人の車、あなたはどちらの助手席に乗りたいですか?

答えは明白でしょう。後者の方が圧倒的に安全で信頼できますよね。

試合は命を奪われるわけではありませんが、選手にとっては自分の今後の競技人生や将来が決まる、ある意味「命がけ」の場所です。自分自身の心と身体を運転できるのは、自分だけです。そう考えると、自分のハンドルさばき次第で結果は変えていけます。

しかし、過度なポジティブ思考は、時に大事故(=大敗や怪我)を引き起こします。過信という状態に陥れば陥るほど、試合までに必要な緻密な準備を怠ってしまうからです。

逆に言えば、不安を感じている人ほど、試合までに慎重になれます。

  • 「負けたらどうしよう」
  • 「あのプレーが上手くいかなかったらどうしよう」

と不安に思うからこそ、徹底的に練習し、相手を分析し、入念な準備ができるのです。慎重に準備ができるからこそ、本番で結果を残す確率が高まります。

こうやって心理学的なメカニズムを知り、見方を変えると、試合前に不安になるというのは案外素晴らしいことなのです。

「緊張と興奮」は表裏一体。感情の意味づけを変える

「不安=ネガティブで悪いもの」だと決めつけたのは、一体誰でしょうか?

アスリートにこの質問をすると、多くの人が「自分自身です」とハッと気づいてくれます。 そうです。気持ちの善悪を勝手に決めつけているのは、自分自身の脳なのです。

心理学の世界では「認知的再評価(Cognitive Reappraisal)」という言葉があります。起こった出来事や感情に対する解釈(意味づけ)を変えることで、感情をコントロールする手法です。

実は生理学的に見ると、「緊張と興奮」は全く同じ身体反応(心拍数の上昇、発汗、アドレナリンの分泌など)を示しています。この身体の反応を「失敗したらどうしよう」とネガティブに解釈すれば「不安・緊張」になり、「自分の力を試すのが楽しみだ」とポジティブに解釈すれば「ワクワクする興奮」に変わるのです。

感情そのものに「良い」「悪い」はありません。気持ちは、ただの気持ちです。 上手に自分の気持ちを受け取り、その感情が湧き上がる意味(=それだけ自分が本気でこの試合に向き合っている証拠)を理解できると、心がブレにくく安定した状態を保てます。

逆に、

  • 「緊張してはいけない」
  • 「不安を感じる自分は弱い」

と気持ちにフタをして逃げようとすればするほど、その感情は倍増してあなたを追いかけてきます。自分の気持ちを正しく捉え、受け入れることこそが、試合前のメンタルコントロールにおいて最も重要なステップなのです。

試合慣れするには?そして試合で実力を発揮する「3つのルール」

ここまでお読みいただき、いかがでしたでしょうか。 試合までの理想の過ごし方において、気持ちの捉え方、そして適度な緊張を受け入れることの大切さをお伝えしました。

「では、試合慣れするにはどうすればいいのでしょうか?」という相談もよく受けます。 もちろん場数を踏むことも大切ですが、ただ試合をこなすだけではメンタルは強くなりません。大事なのは、日々の練習の中に「本番さながらのプレッシャー(心理的負荷)」を意図的に作り出し、その中で平常心を保つ訓練をすることです。

そして最後に、スポーツメンタルコーチとして、本番を迎えるにあたって皆さんにどうしてもやっておいて欲しいことが1つあります。

それが、「試合で意識したいことを3つ、ノートに書き留める」ということです。

いざ試合が始まると、私たちは自分の調子や相手の動きによって、「あれもやらなきゃ」「これも修正しなきゃ」と様々なことに意識を向けすぎます。心理学的に言うと、脳の「ワーキングメモリ(作業記憶)」の容量をオーバーしてしまっている状態です。

情報過多になると意識が飛んで散漫になり、本来のパフォーマンスが発揮できず、結果も生まれません。

本番で最も大切なのは、「試合で自分がやるべきことに、完全に集中できている状態」を作ることです。やるべきタスクが明確に絞られているからこそ、私たちは雑念を払い、目の前のプレーに没頭(ゾーン・フロー状態)できるのです。

だからこそ、準備期間の集大成として、試合当日に意識したいアクションを「3つだけ」ノートに綴ってみてください。(例:①最後までボールから目を離さない、②ミスしてもすぐに姿勢を正す、③深呼吸してリセットする、など)

試合までの期間を、ただ不安に怯える時間にするのではなく、この「3つの約束」を見つけるための大切な準備期間だと捉えてほしいと思います。

あなたのその緊張は、あなたが本気で競技と向き合い、高みを目指している証です。その不安を味方につけ、素晴らしい準備をして本番を迎えてくださいね。

最後までお読みいただきまして、有難うございました。

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