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計画が心に余裕を生む?スポーツメンタルを強化する目標と予定の管理術

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計画を立てるからこそ生まれるメンタル面の余裕

こんにちは、スポーツメンタルコーチの鈴木颯人です。

私はこれまで、数多くのトップアスリートからアマチュア選手まで、幅広い層のサポートを行ってきました。そのサポートの第一歩として、私が必ず行っているのが「目標のヒアリング」です。選手たちが現在達成したいと思っている競技での目標はもちろんのこと、「スポーツを引退した後にどのような生活を送りたいのか?」といった、一見競技とは直接関係のない未来のビジョンについても、ザックリとではありますが丁寧に話を聴くようにしています。

スポーツメンタルの世界やビジネス書などでは、「10年、20年先の長期的な目標を明確に立てるべきだ」と啓発するメソッドも少なくありません。実際に私も過去にそういった方法を選手に提案し、試してもらったことがあります。しかし、多くのアスリートにとって、遠すぎる未来のイメージはなかなか鮮明に浮かばないものです。仮になんとなく思い浮かんだとしても、「本当にこの予定の通りにいくのだろうか?」と疑問や不安を抱いてしまうのが人間の自然な心理です。

それでも、未来を思い描かなければ、現状の延長線上にしか未来は創られませんし、現実は変わっていきません。だからこそ、最初のヒアリング時における目標設定、そしてそれを実現するための道筋づくりには、細心の注意を払って取り組んでいます。

それにしても、どうしてここまで目標設定がアスリートにとって大事なのでしょうか?

その最大の理由の一つは、目標がメンタル面に計り知れないほど大きな影響を与えるからです。とくに、その目標を達成するためにどのような計画を立てるか?目標を掲げると同時に、「計画性」を持つことが、スポーツにおけるパフォーマンス向上において非常に重要な要素となります。

心理学においても、自分自身で行動を統制できているという「心理的コントロール感」を持つことが、不安を減らし、モチベーションを維持するために不可欠だとされています。

【コラムの著者】鈴木颯人

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会 代表理事
慶應義塾大学健康情報コンソーシアム 会員
メンタルトレーニング推進国会議員連盟 所属

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

【著書】
・弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉(三五館シンシャ)
・一流をめざすメンタル術(三五館シンシャ)
・モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術(KADOKAWA)
・最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす(KADOKAWA)
・メンタルコーチが教える潜在能力を100%発揮する方法(KADOKAWA)
・親が変われば子どもが変わる(三五館シンシャ)
・うちの子のやる気スイッチを押す方法教えてください(かんき出版)
・アスリートの心を磨く言葉と魂を揺さぶる絶景(PIE International) 他多数

脳の仕組みから読み解く、計画とメンタルの深い関係性

人間の脳には、「現実」と「イメージ」を明確に区別できないという非常に面白い性質があります。逆に言えば、鮮明にイメージできないことは現実になりにくいですし、明確にイメージできていれば、脳はそれを実現するための情報を無意識に集め始め、限りなく現実に近づきやすくなります。

さらに、脳は「予測できないこと」や「イメージと異なること」を目の当たりにすると、強いストレスを感じ、過剰な警戒反応を示します。心理学や脳科学の分野では、これを「予測誤差」と呼んだりしますが、私たちの脳は常に先の展開を予測し、エネルギーの消費を抑えようとする省エネな器官なのです。

例えば、あなたの目の前にコップに入った「黒い液体」があると想像してみてください。皆さんは直感的にどう思うでしょうか。勘のいい人は「ブラックコーヒーだな」と思うでしょうし、「黒酢ドリンクかもしれない」と考える人もいるはずです。しかし、実際に飲んでみて、もし「オレンジジュースの味」がしたらどうでしょうか。ものすごくビックリすると思います。現実にはそんなことはまずあり得ませんが、自分が事前に想像し、脳が予測していた味とは全く違った味覚の刺激を受けると、その瞬間に脳は混乱し、強い驚きや不快感を覚えるのです。

このリアクションこそが、まさに「想像できないこと」を目の当たりにした時の脳の正常な反応です。イメージできないトラブルや想定外の出来事が起きると、アスリートの脳はパニックを起こし、メンタルが大きく揺さぶられます。逆に、あらかじめ「見た目は黒いけれど、味はオレンジジュースだよ」と伝えられていれば、脳はそれなりの準備や予測ができているため、驚きやストレスは最小限で済みます。

このように、出来る限り未来を予想し、準備をしておくということは、脳にとってストレスなく、高いパフォーマンスを発揮するために非常に重要なことなのです。常に未来を予測したがる脳の性質を考えたとき、望む結果や目標がありながらも、そこに至る未来を計画しないということは、アスリートにとって大きな損失であり、自らメンタルの不安定さを招いているようなものです。

日々のトレーニングにおいて計画を立て、予定を把握しておくからこそ、脳に安心感が生まれ、それが本番でのメンタル面の大きな余裕へと繋がっていくのです。

アスリートのための具体的な計画の立て方

では、実際にどのように計画を立てれば良いのでしょうか。「予定は未定」という言葉があるくらい、スポーツの世界ではケガやスランプ、天候など、計画どおりに物事が進まない事なんて多々あります。完璧な計画を立てたとしても、その通りにいくことのほうが珍しいかもしれません。

それでも、計画を立てなければ、いつまでたっても行動は変わらず、未来は変わっていきません。だからこそ、具体的な計画は、たとえ完璧に達成できなくても「立てるプロセスそのもの」に絶大な価値があるのです。

そこで私がアスリートにオススメしているのが、まずは「1年間の目標」を設定する方法です。そして、その1年の目標を、さらに「3ヶ月ごと」に切り分けて考えてもらいます。

企業でいえば「第一四半期、第二四半期」といった区切りになりますが、季節でいえば3ヶ月はちょうど「春夏秋冬」のサイクルに当てはまります。それぞれの季節や気候に合わせた、トレーニングのテーマを考えてもらうと非常に分かりやすいと思います。

競技の特性によって、夏が勝負のメインシーズンになる方もいれば、冬が勝負の方もいるでしょう。そこから逆算して、メインシーズンにピークを持っていくためには、冬は徹底的な基礎固めの期間になる方もいれば、逆に夏に基礎固めを行う人もいるはずです。

最初から事細かに毎日の予定を書き入れるのも良いのですが、息苦しくなってしまう選手も多いです。まずは「この3ヶ月はフィジカル強化」「次の3ヶ月は実戦感覚を磨く」といったアバウトな枠組みから始めてみると良いでしょう。この大枠の予定があるだけで、「今はこれをやっていれば大丈夫だ」という確信が持て、日々の競技生活にも余裕を持って取り組むことができます。

さらに心理学で推奨される「If then planing(もしAが起きたら、Bをする)」という手法を取り入れ、「もし雨で練習が中止になったら、筋力トレーニングをする」といった代替の予定も組んでおくと、より心に隙がなくなります。

成長を加速させる「正しいフィードバック」の重要性

多くのアスリートが、高い目標を立て、そこに向けてガムシャラに努力し、頑張ります。しかし、一生懸命に努力はしても、その後の「振り返り」まではなかなか意識して取り組めていない人が多いように感じます。この振り返りの作業を専門用語で「フィードバック」と呼びます。

フィードバックにおいて最も重要なのは、「改善」に焦点を当てることです。

  • 「何をもっと良くしていくことができたのか?」
  • 「その課題をクリアするために、次はどのような計画が必要になるか?」

と客観的に振り返り、次の行動をしっかりと計画し続けることが、成長し続けるためには不可欠です。

私がサポートしている選手の中にも、毎日欠かさず練習日誌を書いてくれるアスリートがたくさんいます。しかし、その日誌を読ませてもらうと、「改善」のための建設的な思考ではなく、

  • 「今日の動きが最悪だった」
  • 「ここがダメだった」

といった自分への「ダメ出し」の項目がずらっと並んで書かれていることがよくあります。

ダメ出しとは、過去に対する「反省」に近いものです。もちろん、失敗を認める反省も時には必要ですが、それよりもはるかに大事なのは、「その反省を未来にどう活かすか」を考えることです。過去のミスを責めるのではなく、未来を変えるための計画を練ること。これが、真の意味でのフィードバックになります。

ダメ出しがメンタルを崩壊させる心理学的理由

最後になりますが、自分自身への過度な「ダメ出し」の繰り返しによって作られるメンタルは、最終的に「自己否定」へと直結していきます。心理学的に見ても、自己否定感が強い状態では、視野が狭くなりパフォーマンスは著しく低下します。

試合という極限のプレッシャーの中で結果を出すためには、自己否定感よりも、「自分ならこの困難を乗り越えられる、目標を達成できる能力がある」と信じられる『自己肯定感・自己効力感』が極めて重要になります。私たちが普段口にする「自信」とは、まさにこれらのことです。

無理に自分を否定し、厳しく罰し続けているうちは、心からの自信など持てるはずがありません。当然、過去に厳しい指導や強烈な自己否定をバネにして、一時的にメリットを得たり、結果を出した経験があるアスリートもいるでしょう。恐怖や反骨心も、ある種のエネルギーにはなります。

しかし、それだけではどこかで限界が来ます。次のレベル、真のトップレベルには到達できないのです。常に自分を否定し、焦りや不安に追われている状態では、本当に望む未来にはなかなか到達できるものではありません。

心理学では「フロー状態」や「ゾーン」と呼ばれる究極の集中状態がありますが、これは不安や自己否定からは決して生まれません。心からスポーツを楽しみ、イキイキと充実した精神状態であるときにこそ、結果は自然と後から宿るものだと私は確信しています。

そういった最高の状態を作り出すためにも、まずは脳に安心感を与え、心にゆとりを持たせるための計画を立ててみてください。そして、自分を責めるのではなく、ワクワクとした気持ちで希望に満ちた未来を描いてほしいなと思います。

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