子供のスポーツに役立つメンタル|指導者が学ぶべき5つの知識

こんにちは、スポーツメンタルコーチの鈴木颯人です。日々、数多くのトップアスリートや、未来のメダリストを夢見る子供たち、そして彼らを一番近くで支える親御さんや指導者の方々と向き合っています。

スポーツという舞台は、勝利の歓喜や敗北の挫折、そして仲間との絆など、人生の縮図とも言える素晴らしい経験を私たちに与えてくれます。しかし、その過程で

  • 「本番で実力が発揮できない」
  • 「プレッシャーに押しつぶされそうになっている」
  • 「やる気が見られない」

といった壁にぶつかる子供たちを目の当たりにし、どう声をかければいいのか悩んでいる大人の方も多いのではないでしょうか。

アスリートのメンタルを支えたい。その熱い思いから、この記事にたどり着いたあなたにこそ、伝えたいことがあります。

本日は、発達心理学などの科学的な根拠やトップアスリートたちの名言を交えながら、真に子供のためになるアプローチとは何か、そして私たち大人が学ぶべきことについてお届けします。どうか最後までお付き合いください。

【コラムの著者】鈴木颯人

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会 代表理事
慶應義塾大学健康情報コンソーシアム 会員
メンタルトレーニング推進国会議員連盟 所属

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

【著書】
・弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉(三五館シンシャ)
・一流をめざすメンタル術(三五館シンシャ)
・モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術(KADOKAWA)
・最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす(KADOKAWA)
・メンタルコーチが教える潜在能力を100%発揮する方法(KADOKAWA)
・親が変われば子どもが変わる(三五館シンシャ)
・うちの子のやる気スイッチを押す方法教えてください(かんき出版)
・アスリートの心を磨く言葉と魂を揺さぶる絶景(PIE International) 他多数

CONTENTS

子供とは何歳までを指すのか?発達段階に応じたアプローチ

私たちが「子供」と呼ぶとき、それは一体何歳までを指すのでしょうか。法律や制度によって定義は異なりますが、スポーツ心理学や発達心理学の観点から言えば、心と体が著しく成長し、大人としてのアイデンティティを確立するまでの期間、おおむね18歳から20歳前後までを広い意味での「子供・成長期」と捉えることができます。

心理学者エリク・エリクソンの「心理社会的発達理論」によれば、人間の生涯は8つの発達段階に分けられます。スポーツに打ち込む時期は、主に「学童期(6〜12歳頃)」と「青年期(12〜22歳頃)」に該当します。

学童期の子供たちにとって最も重要な心理的課題は「勤勉性」の獲得です。この時期の子供は、大人の言うことを素直に吸収し、スポーツの基礎的な技術やルールを学びます。「できた!」という達成感や、親や指導者から褒められることが大きなモチベーションになります。この段階では、複雑な戦術を考えさせるよりも、まずはスポーツの楽しさを味わわせ、成功体験を積ませることが非常に重要です。

一方で、中学生から高校生、大学生へと差し掛かる「青年期」に入ると、課題は「アイデンティティの確立」へと変化します。彼らは

  • 「自分とは何者か」
  • 「自分はどうなりたいのか」

を深く自問自答し始めます。親や指導者から自立しようとする反抗期もこの時期に重なります。青年期の選手に対して、学童期と同じように「ああしろ、こうしろ」と指示を与え続けると、彼らの自立心を奪い、かえって反発を招くことになります。

元メジャーリーガーの松井秀喜選手は、

「自分にコントロールできないことは、一切考えない。自分にできることだけに集中する」

という言葉を残しています。青年期の選手には、大人がすべてをコントロールしようとするのではなく、選手自身が自分をコントロールできるようになるためのサポートが求められるのです。

メンタルトレーニングの光と影 やり抜く力と考える力のジレンマ

スポーツの現場では、長らくメンタルトレーニングが重要視されてきました。「絶対に諦めない」「限界を超えろ」といったスローガンを掲げ、厳しい練習に耐え抜く精神力を養うことが美徳とされてきた歴史があります。

確かに、困難に直面しても逃げずにやり続けるマインドセットは、スポーツのみならず、人生のあらゆる場面で役立つ強力な武器になります。心理学者のアンジェラ・ダックワースが提唱した「GRIT・やり抜く力」は、才能以上に成功を左右する要素として世界中で注目を集めました。

しかし、従来のメンタルトレーニングには大きな「弊害」が潜んでいることを忘れてはなりません。それは、大人が与えた過酷なメニューや厳しいルールに従い続けることで、自分を保つ強さは身につくものの、「自分で考える力」が育ちにくいという問題です。

指導者の顔色をうかがい、言われたことを完璧にこなすだけの「指示待ち人間」になってしまっては、試合中に想定外の事態が起きたときに対応できません。サッカーの元日本代表、本田圭佑選手は

「挫折は過程、最後に成功すれば挫折は過程に変わる。だから成功するまで諦めないだけ」

と語っていますが、この言葉の裏には、彼自身が圧倒的な「思考量」を持って自分自身の課題と向き合ってきた事実があります。ただ盲目的にやり続けるのではなく、考えて試行錯誤するからこそ、挫折を成功への過程に変えることができるのです。

コーチングのメリットと限界 知識・経験不足の子供には向かない?

このようなメンタルトレーニングの弊害を克服するため、近年スポーツ界で急速に普及しているのが「コーチング」というアプローチです。コーチングとは、指導者が答えを教える(ティーチング)のではなく、選手に質問を投げかけ、対話を通して選手自身の中から答えを引き出す手法です。

  • 「今日のエラーはなぜ起きたと思う?」
  • 「次はどうすればいいかな?」

と問いかけることで、選手の思考力を刺激し、自己解決能力を高めることができます。自己決定理論に基づいても、非常に有効な手段と言えます。

しかし、このコーチングにも見落とされがちな「弊害」があります。それは、知識や経験が乏しい子供に対して「考えさせる」アプローチを取りすぎると、かえって子供を混乱させてしまうという点です。

例えば、野球を始めたばかりの小学生に「どうすればもっと速い球が投げられると思う?」と問いかけても、彼らには体の使い方や物理的な知識がないため、正しい答えを導き出すことは不可能です。答えが出ないまま考えさせられ続けると、子供は「自分はダメなんだ」と自信を失ってしまいます。

バスケットボールの神様、マイケル・ジョーダンは

「私は失敗を受け入れることができる。しかし、挑戦しないことだけは受け入れられない」

と言いましたが、子供が新たな挑戦をするためには、まず基礎的な知識や技術という「武器」を大人がしっかりとティーチングしてあげる必要があります。

コーチングは万能の魔法ではありません。相手の知識レベルや経験値、発達段階を見極め、ティーチングとコーチングのバランスを最適化することが、真のスポーツメンタルサポートなのです。

子供のスポーツに役立つメンタル資格|指導者が学ぶべき5つの知識

では、大人が子供のメンタルを支えるためには、具体的に何を学び、どのような資格を選ぶべきなのでしょうか。世の中には様々なスポーツ関連のメンタル資格が存在しますが、名前やブランドだけで選ぶのは危険です。本当に役立つ知識を身につけるために、以下の5つの知識を網羅しているかどうかを基準にしてみてください。

  1. 発達心理学に基づいた年代別アプローチ

    先述した通り、学童期と青年期では響く言葉も、必要なサポートも異なります。子供の脳と心の発達プロセスを科学的に理解し、今の年齢の子供に対して何が最適かを見極める知識が不可欠です。
  2. コミュニケーションと傾聴のスキル

    子供が何を考え、何に悩んでいるのかを引き出すためには、まず大人が「聴く力」を持っていなければなりません。自分の価値観を押し付けるのではなく、相手の言葉を否定せずに受け止める傾聴のスキルは、信頼関係を築くための土台となります。
  3. モチベーションのメカニズム

    子供のやる気には、ご褒美や罰によって外から与えられる「外発的動機づけ」と、スポーツそのものの楽しさや好奇心から湧き上がる「内発的動機づけ」があります。長期的に燃え尽きることなく競技を続けるためには、内発的動機づけを高める心理学的アプローチを学ぶ必要があります。
  4. 感情のコントロールとレジリエンス

    試合のプレッシャー、ミスをした時の落ち込み、怪我への恐怖など、アスリートは常に負の感情と隣り合わせです。マイナスの感情を無理に押し殺すのではなく、それを受け入れ、乗り越えていくためのレジリエンスを育む知識は、子供の心を折れにくくします。
  5. ティーチングとコーチングの使い分け

    自分で考えないメンタルトレーニングの弊害と、知識不足による混乱によるコーチングの弊害の両方を理解し、目の前の子供の状況に応じて、教えるべき時は教え、考えさせるべき時は考えさせるという柔軟な指導法を身につけることが求められます。

イチロー氏は「少しずつ前に進んでいるという感覚は、人間としてすごく大事」と語っています。指導者や親自身も、最初から完璧なサポートができるわけではありません。学び続け、少しずつ成長していく姿勢を見せることが、子供にとっても一番の生きた教材になるのです。

親と子が一緒に成長していける環境を選ぶために

ここまで、子供の年代による違い、従来のメンタルトレーニングやコーチングが抱える課題、そして大人が学ぶべき知識についてお話ししてきました。

最終的に、どのような資格や学びの場を選ぶべきか。その答えは、「親、あるいは指導者と子が一緒に成長していける環境を提供している講座」を選ぶことです。

スポーツの現場では、どうしても「指導者から選手へ」「親から子供へ」という一方通行の矢印になりがちです。しかし、子供は私たちが想像している以上に大人をよく観察しています。大人が自分の価値観に固執し、変わろうとしないまま、子供にだけ「メンタルを強くしろ」「もっと自分で考えろ」と要求しても、子供の心には響きません。

真のメンタルサポートとは、大人自身が自分の未熟さを認め、心理学の知識やコミュニケーションの技術を貪欲に学び、時には子供の意見からハッとさせられるような「双方向の成長」の中にあります。

私がスポーツメンタルコーチとして活動する中で、最も感動する瞬間があります。それは、子供の成績が上がった時だけではありません。親御さんや指導者の方が「先生、私自身の子供への接し方が間違っていたことに気づけました。私が変わったら、子供の表情が驚くほど明るくなったんです」と、涙ながらに報告してくださる時です。

資格を取ることはゴールではありません。それは、子供の可能性を最大限に引き出し、同時にあなた自身の人生をも豊かにするためのスタートラインです。

子供がスポーツに打ち込める時間は、長い人生の中で見ればほんの短い期間かもしれません。しかし、その短い期間に大人がどのように関わり、どのような言葉をかけ、どう共に成長したかという記憶は、子供の一生を支える見えない財産になります。

スポーツ、メンタル、トレーニング。これらの言葉の奥にある「人の心を育てる」という途方もなく深く、そして尊い営みに挑戦しようとしているあなたを、私は心から応援しています。ぜひ、あなたと子供が共に笑顔で前進していける、そんな学びの場を見つけてください。

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