心理学から紐解くスポーツメンタルコーチング。選手の心を育むパートナーへ

アスリートが望む結果をメンタル面からサポートする、スポーツメンタルコーチの鈴木颯人です。

お陰様で、スポーツ メンタル コーチングの資格講座を2014年から開講し、今の私があります。

最初は年2回だけの開催でスタートしました。1期生はわずか6人。それからずっと、一人ひとりと深く向き合い、質の高いサポートを届けるために6人での開催を続けてきました。

その後、2019年に『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』をKADOKAWAさんから出版してからは、より多くの方に学びを届けるため、少しずつ席数を増やしてきました。

現在、私はたくさんのトップアスリートを支える一方で、「アスリートを支える人を増やす活動」を早い段階からスタートしています。この活動が巡り巡って、未来あるアスリートたちを支える大きな力に繋がると信じているからです。

【コラムの著者】鈴木颯人

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会 代表理事
慶應義塾大学健康情報コンソーシアム 会員
メンタルトレーニング推進国会議員連盟 所属

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

【著書】
・弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉(三五館シンシャ)
・一流をめざすメンタル術(三五館シンシャ)
・モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術(KADOKAWA)
・最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす(KADOKAWA)
・メンタルコーチが教える潜在能力を100%発揮する方法(KADOKAWA)
・親が変われば子どもが変わる(三五館シンシャ)
・うちの子のやる気スイッチを押す方法教えてください(かんき出版)
・アスリートの心を磨く言葉と魂を揺さぶる絶景(PIE International) 他多数

CONTENTS

指導者が抱えるジレンマと「心の指導」の壁

なぜ、アスリートを支える人を育てたいと思ったのか。それは、「子供たちとどう向き合ったらいいのかわからない」と切実な思いを話す指導者が、今のスポーツ界にあまりにも多くいるという現実があるからです。

アスリートを指導する立場の監督やコーチと日々話を重ねる中で、ある共通の悩みに直面します。それは、「技術的な指導はできても、心の指導となると途端にどうしていいかわからなくなる」という実態です。

その結果として、私が高校時代に経験したような、指導者から殴られたり、酷い言葉を浴びせられたりして心が折れてしまう選手が、残念ながら今もあとを絶ちません。

しかし、そんな厳しい指導をしてしまう方々の話をよくよく聞いてみると、彼ら自身も悪気があるわけではないことが多いのです。指導者自身も、自分が現役時代に経験した厳しい指導しか知らず、それ以外の方法を「知らないから伝えられない」という深いジレンマに陥っています。

心理学において、人は自分が身近なモデル(この場合はかつての指導者)から観察し経験した行動を無意識に模倣しやすいという「モデリング(観察学習)」の法則があります。つまり、彼らもまた、過去の環境に縛られて「子供たちとの接し方に迷っている」のです。

だからこそ、私はこのスポーツ界に何かできることはないか、この負の連鎖を断ち切る方法はないかと本気で思うようになりました。

「教える」から「引き出す」へ。言葉で導く技術

その想いが形になった一つが、『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』を出版した経緯にあります。

本書では、「言葉でうまく導けない」と悩む指導者の方々に向けて、「選手への言葉での導き方」を具体的にお伝えしています。

今では、プロのスポーツメンタルコーチになりたいと思う人だけでなく、現場で指導者として日々選手と向き合う方々が、実践的な心理学の知識やスポーツ メンタル コーチングの手法を学びに来てくれるようになりました。

ここで、偉大なアスリートの名言を一つ紹介させてください。バスケットボールの神様と呼ばれたマイケル・ジョーダンは、かつてこのように語りました。

「私はこれまで9000本以上のシュートを外し、300試合に敗れた。決勝シュートを任されて26回も外した。人生で何度も何度も失敗してきた。だから私は成功したんだ」

この言葉からは、失敗を恐れず挑戦し続ける強靭なメンタルが伝わってきます。しかし、選手がこの境地に一人で辿り着くのは非常に困難です。失敗した時に、それを責めるのではなく、失敗から何を学ぶかを一緒に考え、次へのモチベーションへと変換させる存在が必要です。それこそが、スポーツ メンタル コーチングの本来の役割なのです。

スポーツメンタルコーチに向いている人の特徴とは?

では、実際にアスリートのメンタルを支えたいと願う人たちの中で、スポーツメンタルコーチとして「向いている人」とは一体どんな人なのでしょうか。

向いている人の特徴として、まず「積極的に選手と話ができる人なのか?」という要素が挙げられます。心理学的にはこれを「外向性」と呼びます。

ただし、ここで言う外向性とは、単に自分からペラペラとよく喋るということではありません。相手に興味を持ち、心を開いて「話を聞いてあげる」という高いコミュニケーション能力も含まれています。

むしろ、会話において「話をする」ことはできても、「聞いてあげる(傾聴する)」ことができない人が圧倒的に多いと私は思っています。

臨床心理学の巨匠であるカール・ロジャーズは、相手の心に寄り添うために「共感的理解」「無条件の肯定的関心」「自己一致」の3つが不可欠であると提唱しました。つまり、選手の言葉を否定せずにありのままを受け入れ、選手の感情をまるで自分のことのように理解しようとする姿勢です。これこそが、スポーツ メンタル コーチングの土台となります。

「教育」の本来の意味。選手の才能が育つまで「待つ」勇気

「教育」という漢字には、「教える」と「育む」という二つの文字が含まれています。しかし、最近のスポーツ現場を見ていると、「教える」ことだけに偏ってしまっている人が増えたように感じてなりません。

教育と言いながらも、選手自身が考え、悩み、そして自ら答えを出して「育つ」という過程を待てない指導者が増えているのです。

なぜ待てないのでしょうか。それは、指導者自身が早く結果を出さなければならないというプレッシャーを感じているからかもしれません。「待てない」からこそ、「教える一辺倒」になり、時には押し付けになってしまっているのかなと感じます。

心理学の「自己決定理論」によれば、人は他人から強制されたことよりも、自分自身で選択し決定したことに対して、最も高いモチベーション(内発的動機づけ)を発揮すると言われています。

だからこそ、スポーツメンタルコーチは、メンタルを良くするための知識を選手に「一方的に教え込む」ようなコミュニケーションはしません。

求められればアドバイスや話をすることはありますが、基本的には選手の内面にある答えを引き出し、寄り添うことを最も大切にしています。

そのため、コーチから見て経験的に「そのアプローチは間違っているかもしれない」と思う行動を選手が選択したとしても、あえて見て見ぬふりをすることがあります。

なぜならば、その選手自身が決断し、行動しようとしたそのプロセス自体を最大限に尊重することを大切にしているからです。自分で決めたからこそ、失敗してもそこから深く学ぶことができます。

そして、その選手が行動を起こし、結果が現れるまで、じっと「待つ」ことを大切にしています。

だからこそ、次にお会いした時に、「そういえば、先日話していた〇〇の件、その後どうなりましたか?」と、相手の経験や気づきにじっくりと耳を傾けることを大切にしているのです。

共に歩むパートナーとしての存在意義

これだけを聞くと、「それはカウンセリングと同じではないか?」と思われるかもしれません。確かに重なる部分は多くありますが、スポーツメンタルコーチは、過去の悩みを癒すだけでなく、選手が目指す目標や行きたい未来の場所へ向かって、共に前を向いて歩む「パートナー」なのです。

もし、あなたが学んだ素晴らしい心理学の知識やメソッドを、選手たちに「教えてあげたい」「指導したい」と強く思うのであれば、それは「メンタルトレーナー」という役割の方が向いていると思います。トレーナーは知識をトレーニングとして教え込む役割だからです。

それよりも、選手とともに困難に立ち向かい、選手の可能性を心から信じ、選手と一緒に成長していきたいと願う方は、是非ともスポーツメンタルコーチとして、未来ある選手たちのために行動を起こしてほしいと願っています。

近年、アスリートのメンタルを支えたいという熱い想いを持つ方は本当に増えました。しかし、その支え方の目的によって、「役割(肩書き)」と「振る舞い方(コーチングなのか、トレーニングなのか)」が一致する人が一人でも多く増えることを私は願ってやみません。

選手に寄り添い、信じて待つ。その静かなるサポートが、結果としてアスリートの計り知れない潜在能力を引き出し、最高のパフォーマンスへと導くのです。

あなたのその想いが、いつかどこかで、苦しんでいるアスリートの心を救う光になるはずです。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

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