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”ボトムアップ理論”で育てるステキな人材作り、畑喜美夫氏

サッカー選手として国体2位、ユースで日本代表、大学でも地区選手権、総理大臣杯、インカレの三冠に輝いた畑喜美夫氏。怪我で現役引退後も教員となり、サッカーの指導者としてクラブユース6連覇、高校サッカーでも全国制覇。

 

選手、指導者としても全国制覇を成し遂げた素晴らしい経歴を持ちます。その指導方法として取り組んだのが”ボトムアップ理論”です。今回は、畑喜美夫氏についてお話します。

スポーツメンタルコーチ目次

  • 選手、監督の両方で”全国制覇”達成の畑喜美夫氏

  • 練習よりも”考える時間”の重要性

  • ”ステキに育てたい”という信念

 

選手、監督の両方で”全国制覇”達成の畑喜美夫氏

広島県出身の畑喜美夫氏が、地元、広島大河フットボールクラブでサッカーを始めたのは小学校2年生の時。東海大一高校へ進学すると静岡県選抜に選ばれ、国体2位の成績を残しU17日本代表に選ばれました。順天堂大学へ進むと2年生でU20日本代表に選ばれ、4年生で関東選手権、総理大臣杯、インカレの三冠達成に貢献。

 

卒業後は、腰の怪我を理由に現役を引退し、故郷で公立高校の教師になりました。初めて教師になった廿日市西高校では、サッカー部ではなく広島大河FC(中学部)を指導し、クラブユース全国6連覇に導きました。その後広島観音高校に赴任した畑喜美夫氏は、日本サッカー協会A級ライセンスを取得しサッカー部を指導。

 

初の全国大会に出場するとその翌年、広島観音を全国高等学校サッカー選手権大会でベスト16に導きました。翌年はベスト8、さらに翌年には、全国高等学校総合体育大会サッカー競技大会で初の全国制覇を達成。U16の日本代表コーチも務めました。安芸南高校、高揚高校で31年間努めた公立高校教員を退職後は、生徒を全国大会制覇に導いた自身の経験をもとに講演活動などを全国で行い、人材育成や組織構築活動にも携わっています。

 

実業家、ユーチューバー、コメンテーター、さまざまな分野に活動の場を広げ、”人工知能AIに負けない人材を”と目標を掲げています。そんな畑喜美夫氏が、サッカーのみならず他競技やビジネスの現場でも全国へ発信しているのが”ボトムアップ理論”です。

 

練習よりも”考える時間”の重要性

”ボトムアップ”という言葉で表現され具体化したのは、広島観音高校に教員として赴任し7年が過ぎた頃だったと話す畑喜美夫氏。その頃から県の代表としてメディアに取り上げられるようになりました。”ボトム”というのは、まず下に小さなグループを作り色んな意見を取り上げながら方向性を定めていくというやり方だそうです。

 

生徒たちが話し合うことによって、年齢別ならではの様々なアイデアが出てきます。その生徒たちが決めたアイデアに先生や指導者が仕上げをしていくことでより良い方法、成果が望めるようになります。このボトムの1番のキーポイントは、”生徒たちに考えさせること”です。技術や戦術の指導を指導者が先にすると、生徒たちは言われた通りに実践するでしょう。

 

それがごく当たり前で自然な指導方法ですが、この従来の方法では生徒自身が”考える”という機会を奪いかねませんでした。そのため敢えて”教えない指導”という方法を実践してみた畑喜美夫氏。教えないなら生徒たちは一体どのようにするのでしょうか。

 

”自分たちで何とかしなければならない”と必死に考え、本やDVDを見ていいものを学ぼうとしたのだと言います。もちろん最初から生徒たちだけに丸投げしてしまうというわけではありません。まず最初の軸作りが大事なので、その部分だけ指導者が決めてあとを生徒たちに委ねたそうです。

 

例えば「攻撃はどうする?」「守備はどうする?」と大まかな疑問を投げかけるとその後は、自然と生徒たちのなかで意見が出て議論しあうのだそうです。さらに練習試合をすることで勝てなかったら「どの動きが悪かったのか」何度か繰り返し経験していくと次に「何が足りてないか」と課題が次々に浮き彫りになって見えてきました。

 

毎日していた練習を半分にして後の半分は、生徒や指導者で考え合う時間に当てるということを取り入れました。練習時間がぐっと減ったのに成果が出てくることに選手たちは、驚きと手応えを感じたようでした。

 

その結果、2年目には県で3位、中国大会に初出場で3位を達成し、目に見える成果が出て選手たちもこのボトムを信じて乗っかってきたそうです。個々の技術向上は、もちろん重要なことです。しかしサッカーのようにチームプレイの競技では、話し合いや戦術を確認し合う時間を作ることこそ時に技術の練習の時間よりも重要なのでしょう。

 

選手に寄り添いながら、選手と一緒に成長していく姿はとても素敵だなと思いました。そう言った姿勢から子供たちのメンタル面にもいい影響を与えているのだと思います。

 

”ステキに育てたい”という信念

ボトムアップという指導の中で生徒たちを”ステキに育てて行く”という信念を持っているという畑喜美夫氏。物の整理整頓や部室をキレイに使うことも重要だと考えています。これから活躍するために良い準備をするのが部室。そのスタートとなる部室が汚れたままだと気持ちがすっきりしない状態で練習することになります。

 

”神は細部に宿る”また”神様は綺麗好き”という言葉も生徒に伝えると生徒たちは自然と整理整頓するようになりました。すると練習でも、ピッチ上でラインを整えることに繋がり、パスやポジションでのミスが減ってきたそうです。サッカーでは技術や戦術、体力を鍛えるピッチベースの練習をしますが、それ以上に勝敗を左右する重要なものは、ピッチ外でのコンディションや運、フェアなプレー、モチベーションという普段は決して目に見えないものです。

 

10倍、20倍に力を発揮させるためには、物の整理整頓で身につく心の整頓も大事なのでしょう。”24時間をサッカー選手としてデザインする”とノートに書いている畑喜美夫氏。朝起きて自分が寝ていた布団を片付けて、靴をしっかり整えてから学校に行くところからサッカーは既に始まっているといると指導しました。

 

”人間教育という考え方まで指導者ができるのであれば、勝率を1%でも上げることができる。荷物や部室の整頓をやれば勝てるわけではなくとも1%でも勝率が上がるなら取り組んでやっていきたい”と考える畑喜美夫氏。どれほど技術がある選手でも、ピッチ外の目に見えないもので結果が左右されます。全体で見るとズバ抜けた技術を持つ選手は0.1%で、99.9%が普通の選手。その99.9%をしっかり指導しステキに育ってもらえれば、良い成績が残せてプロに入る選手も生まれてくるのです。

 

プロに育てようと思ってやっているわけではなく、生徒たち主体で自主的にやっていく能力を作ってあげることで、プロとしてもやっていける実力を持つことにつながるのです。”ボトムアップ理論”として生徒主体で物事を考えていくやり方で5年後、10年後、大人になった時に社会で伸びていける、活躍できる人間に育てることが最大の目的。

 

もちろん目の前の勝利に向かって生徒たちの力を最大限に引き出してあげることによって、結果も出てくるという強い信念を持つ畑喜美夫氏。幼稚園から大人までどんな組織においても実践できる組織論、それが”ボトムアップ理論”なのです。

 

今回は、畑喜美夫氏についてお話しました。自らも頂点を極めた選手であり、監督、指導者としても頂点を極めた指導法は、自主性を重んじるというとても理にかなったものです。社会に出ても活躍していける人材作りをも担う”ボトムアップ理論”をたくさんの人に知ってもらいたいと実感しました。今後のご活躍も期待しております。


 

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【このコラムの著者】

プロスポーツメンタルコーチ/一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

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