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選手の自信とメンタルが喪失…指導者としてどうしたらいいのか?

指導者として選手の自信の有無を敏感に感じとってしまうことがあると思います。試合前、試合中、練習中や何気ない会話から感じ取れる自信のなさに「自信を持て」と伝えたことがあると思います。しかし、自信を持てと伝えても、自信がない選手のメンタルが早々に変化するほど簡単なものではありません。そこで、自信のメカニズムから自信を高める具体的な手法についてスポーツメンタルコーチ鈴木颯人が実際にあった選手の事例を交えながら綴っていきたいと思います。

目次

  • 自信とは何か?
  • 自信を脅かす科学的な理由
  • 自信を高めるための具体的な方法

そもそも自信とは何か?

そもとも自信って何?と考えることがとても大事になってきます。自信に囚われていならが、自信を正しく人に伝える事ができないものです。自信は自信!けど、人が求める自信は必ずしも一致しないものです。そこで、自信の意味について統一する必要があります。

 

そもそもの意味ですが、自信とは「自分の能力や価値などを信じること」という意味になります。この自信について、心理学や自己啓発では2つの意味合いで語られます。 


1つ目が自己肯定感と、
2つ目が自己効力感です。

とても似たような言葉ですが、自己肯定感については心理学では記載がありません。それに代わる言葉として、自尊感情という言葉で称されています。自尊感情(self-esteem:セルフ・エスティーム)とは、自分自身を価値ある者だと感じる感覚です。一方で、自己効力感(Self-efficacy:セルフ・エフィカシー)とは、ある状況下で結果を出すために適切な行動を選択し、かつ遂行するための能力を自らが持っているかどうか認知するための言葉のことです。 

 

両方とも大切な「自信の感覚」です。その中でも、私は「自己効力感」を皆さんに学んで欲しいと思っています。この自己効力感を提唱したのがアルバート・バンデューラ(Albert Bandura)氏です。「自己効力感」や「社会的学習理論」を提唱した、20世紀を代表する心理学者です。  バンデューラ氏は、社会的学習理論をはじめとした多くの業績で知られています。学術雑誌や教科書での引用数などをもとに作成された「20世紀の著名な心理学者」(2002年)というランキングでは、スキナー、ピアジェ、フロイトに次いで第4位を占めました。


社会的学習理論の研究および心理学の発展に対する功績を評価され、バンデューラ氏は2014年度のアメリカ国家科学賞を受賞。2015年にオバマ大統領(当時)からメダルを授与されました。そんなバンデューラ氏が提唱した自己効力感を一言で表すと「自分ならできる!」という自信に満ちた感覚です。心から湧き出た感情です。勘違いしてほしくないのが、「自信がある!=自分ならできる!」ではないのです。  

「自分ならできる=自分ならできる」なんです。出来ると思える感覚であって、ここには「自信がある」と思える感情は抜きにして欲しいのです。例えば輪投げで例えてみます。めちゃくちゃ近い距離で投げるときに「自分ならできる」って思いますよね。その時に自信とか関係ないのと思うのです。「自分なら出来る=自分なら出来る」なんです。  

 

しかし、ちょっとずつ距離を伸ばしていくと「自分なら出来る」と思える感覚(数値)が下がってきます。どんどん距離を離していくと、「自分にはできない」と思うようになると思います。その時に、出来るかどうかの微妙な距離にすると気持ちが燃え上がってきます。「出来そうかも・・・」そんな感情になったときに私たちは自信が欲しいと思うのです。なぜならば「出来る」って思いたいから。

 この自信、正直いらないと私は思っています。「出来そうかも・・・」と思った際に自分の能力を過大評価する一端を担うのが自信なのです。「出来そうかも・・・」と思う事が悪ではなく、「出来そうかも・・・」と思った際にさらに確信に変えたいと思う自分の「欲」が誤った結果を引き起こします。いわゆる、過信です。能力が低い人ほど、自分を過大評価する事がわかっています。(これをダニング・クルーガー効果と言います。)一方、能力が高い人ほど自分を正しく評価できるので謙遜できるのです。 

 

それよりも、「自分ならできる」と心の底から思える状態が必要であり、「自分ならできる」と思えてないのに、無理して「自分ならできる」と思うことは自分の心を偽った状態になります。そして、気付いた時には心が疲弊し立ち直れないくらいの状態になりかねません。なので、ポジティブシンキングに代表されるように、心の底から思えない自分の心に嘘をついた見せかけの自信を演じることは非常に危険だと思っています。 

 

自信を脅かす科学的な理由

 

 パンデュラーの考え方でいくと、効力予期が関係してきます。自己効力感(自分ならできそう)を感じる際にはこの効力予期と呼ばれる「自分の能力を信じること」と、結果予期と呼ばれる、外的な要因による予測で「結果は出るだろう」が関係していきます。 

 

 その中でも、効力予期はとても重要で得たい結果に対して自分の能力が相応しいかどうか?がポイントになります。これが、私が著書や資格講座で伝える「結果に相応しい〇〇」になります。どんな人間も、結果に相応しい能力、メンタルが備わっていたら結果は自然とやってくるものです。しかし、それらの能力やメンタルが本番までに備わっていないと自分を疑い出すわけです。この疑った状態を、「自信がない」と形容されます。 

 

 また自信に影響されるものの代表例に、モチベーションやリラックスが挙げられます。これらは自律神経の働きが影響しており食事や生活習慣を整えることで手に入れることが容易です。逆にいえば、生活習慣が整っていないとメンタルの土台が崩壊していると言っても過言ではないのです。 

 

 古代ローマの詩人ユウェナリスは詩の中で、「健やかな身体に健やかな魂が願われるべきである」と書いています。メンタル的な課題を感じる場合には知識を手に入れるだけでなく、肉体的な改善にも目を向ける冷静さと、本質を見極める俯瞰力を大事にしましょう。 

 

自分だけの自信の育て方

 

最後になりますが、いよいよ自信(自己効力感)の育て方をご紹介します。まずはパンデュラーさんの理論でいくと下記の経験がとても大事になります。  

 

達成経験……自分自身で目標を達成した経験
 代理経験……自分以外誰かの目標達成を観察した経験 
言語的説得……スキルや能力がある事を言語的に説明・説得される事 
生理的情緒的高揚……モチベーションがアップする生理現象 
想像的体験……自分自身で目標達成することを想像すること 

  

この理論を踏まえて私が5年以上前からアスリート向けのセミナーでお伝えしていたのが「自信がある理由を箇条書きで10個書く」というワークでした。まずは自信を持ちたいテーマを決めます。(例。〇〇大会でゴールを決める)この際に、チームの目標に関することを書いてしまう事があるので、あくまでも自分事として書いていきましょう。また、他者と比較すると書けないので、比較しないことが大前提です。なかには「こんな小さな事でもいいんですか?」と聞かれる事がありますがそれでもオッケーです。 

 

私自身がスポーツメンタルコーチとして起業した際に自信がなくて何度も心が折れそうになりました。その際に、手帳のアドレス欄に自信がある理由を丁寧に書いていきました。今、読み返すと本当に小さな事です。しかし、自信とは植物を育てるのと同じように最初の芽は小さいものです。この芽を大切に育てていきたいのです。自分だけの自信の芽を、大切に大切に、水をあげたり、陽を浴びさせたり、大切に大切に育てていくのです。 

 

そういった感覚で自分だけの自信(自己効力感)を育てていってくれれば、「自分ならできそう」と思える自分に自然となれます。ぜひ、小さなチャレンジを大切にしてください。  

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【このコラムの著者】

プロスポーツメンタルコーチ/一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

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