昨日の自分を乗り越えるための真の法則
アスリートの皆さん、こんにちは。スポーツメンタルコーチの鈴木颯人です。
日々、厳しい練習やプレッシャーの中で競技に向き合っていると、ふと周りの選手が気になってしまう瞬間はありませんか?
- 「本当は人と比較したくない……」
- 「自分自身の芯をしっかりもっていなきゃダメなんだ……」
頭ではそう理解しているからこそ、「周りではなく、昨日の自分を超える事を大事にする!」と心に決めているアスリートは非常に多いです。
それでも、ふとした瞬間に無意識に人と比較してしまう自分に気づき、落ち込んでしまう。もし、人と比較することで自分の競技力や人間性が劇的に変わるのであれば、これほど楽なことはありませんよね。しかし、現実はそう甘くありません。他者と比べて得られるのは、焦りや自己嫌悪であることがほとんどです。
だからこそ、比較するのであれば「昨日の自分自身を超える事が大事だ」と、私もこれまでブログやSNSを通じて何度か発信してきました。
しかし、現場で多くのアスリートと接していると、新たな壁にぶつかる選手の声も耳にします。
- 「昨日の自分を超える事が出来ない……」
- 「昨日の自分と比較すると、今日の自分は本当に何も出来ていない……」
不調な日や疲労が溜まっている日、私たちはどうしても「調子が良かった昨日の自分」に勝てないことがあります。その結果、「自分はダメだ」と自己否定に走り、スポーツに向き合うモチベーションを大きく下げてしまう選手も少なくありません。
では、他者とも比較せず、昨日の自分とも比較して苦しまないためには、一体どうしたらいいのでしょうか?
その答えこそが、『積み重ね』なのです。
【コラムの著者】鈴木颯人

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会 代表理事
慶應義塾大学健康情報コンソーシアム 会員
メンタルトレーニング推進国会議員連盟 所属
プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら
【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから
【著書】
・弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉(三五館シンシャ)
・一流をめざすメンタル術(三五館シンシャ)
・モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術(KADOKAWA)
・最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす(KADOKAWA)
・メンタルコーチが教える潜在能力を100%発揮する方法(KADOKAWA)
・親が変われば子どもが変わる(三五館シンシャ)
・うちの子のやる気スイッチを押す方法教えてください(かんき出版)
・アスリートの心を磨く言葉と魂を揺さぶる絶景(PIE International) 他多数

なぜ私たちは「人と比較」してしまうのか?心理学的な理由
本題に入る前に、そもそもなぜ私たちは「人と比較」してしまうのでしょうか。自分のメンタルが弱いからだと責める必要は全くありません。
心理学には、レオン・フェスティンガーという学者が提唱した「社会的比較理論」というものがあります。人間には、自分自身の能力や意見の妥当性を評価したいという根源的な欲求があり、明確な基準がない場合、他者と自分を比較することで自己評価を行おうとする心理的な性質があるのです。
特にスポーツの世界は、勝敗やタイム、レギュラー争いなど、他者との優劣が明確になりやすい環境にあります。生存本能として自分の立ち位置を確認しようとするのは、脳の仕組みとして極めて自然なことなのです。
しかし、常に上には上がいる世界において、上方比較(自分より優れた人と比べること)ばかりをしていると、自己効力感(自分にはできるという自信)が低下し、最終的には限界を突破するエネルギーさえも奪われてしまいます。だからこそ、視点を「他者」でも「昨日の単発の自分」でもなく、「過去からの連続した自分」へと移す必要があるのです。
限界を超えるための「複利の法則」
皆さんは「複利」という言葉をご存知でしょうか?よく金融や投資の世界で話される言葉で、元本(元の金額)が増えることで、そこにつく利息も大きくなり、雪だるま式にどんどん結果が増えていく仕組みのことです。
実はこの複利の力は、スポーツにおけるパフォーマンス向上にも全く同じことが言えます。言葉だけでは少し分かりにくいと思うので、パフォーマンスと時間の関係を数字でイメージしてみてください。
縦軸を私たちの「パフォーマンス(実力)」、横軸を私たちが費やす「時間」とします。
日々の練習で、どれだけ積み重ねたかによって、パフォーマンスの伸び率は劇的に変わってきます。「今自分がどれだけの基盤を積み重ねてきたかによって、掛け合わされる日々の成長数値が同じであっても、得られる結果は全く変わる」ということです。
例えば、毎日の基礎的な実力(元本)を1.1、毎日の成長の歩み(掛け合わせる努力)を1.1だとします。
初日は、 1.1(毎日積み重ねる数) × 1.1(毎日進める数) = 1.21 になります。
これを毎日コツコツと積み重ねていくと、10日後には基盤となる数字が11.0まで成長したとしましょう。
この時、あなたが1日に進める努力の幅は「1.1」で変わりがありません。同じように1日の練習をこなしているだけです。しかし、元の基盤が積み重なっているとどうなるでしょうか?
11.0(積み重ねた実力) × 1.1(毎日進める数) = 12.1
同じ「1.1」という一歩を踏み出しただけでも、得られるパフォーマンスの数値は「1.21」から「12.1」へと跳ね上がります。同じ一日の努力でも、過去の積み重ねがあるかないかで、全く違う結果を生み出すことが出来るのです。
これが30日、100日、300日と積み重なったらどうなるでしょうか?同じ一歩の努力でも、積み重ねた数の違いが、圧倒的で大きな違いを生み出します。これこそが、自分自身の限界だと感じていた壁を超越していくためのメカニズムなのです。
継続を止めるとどうなるのか?
では、一時的な感情に流されて、いったんこの「継続」を止めてしまうとどうなるでしょうか。
練習や意識の積み重ねを止めてしまうと、その分だけパフォーマンスを高めるためのスタート地点(元本)が下がってしまいます。自分が立ち止まっている間にも、ライバルたちはコツコツと小さな1.1を掛け合わせ続けています。すると、自然と埋めようのない差が生まれてしまうのです。
だからこそ、同じ時間を過ごして同じ練習メニューをこなしたとしても、最終的な到達点は人によって大きく変わってきます。
この「積み重ね(複利)の法則」の本質を深く理解することが出来れば、目の前の単発の結果や、調子の良し悪しに捉われる事はなくなるはずです。
何故ならば、今日一日上手くいかなかったとしても、それは「最高の結果を出すための、積み重ねの途中」に過ぎないということを、あなた自身が理解できているからです。心理学的にも、長期的な視点を持つことは感情の安定をもたらし、結果として高いパフォーマンスを発揮しやすい精神状態を作ることが証明されています。
「積み重ねる自分」になるための適切な目標設定
だからこそ、昨日の自分を超える事ももちろん大事ですが、それ以上に『毎日コツコツと積み重ねる事が出来る自分』を、もっと大事にしてあげてください。単発の「昨日の自分」に勝てなかったからといって、悲観する必要は全くありません。あなたが続けてきた過去は、確実にあなたの筋肉に、脳に、そしてメンタルに複利として蓄積されています。
そして、その積み重ねを途切れさせずに行っていく為にも、心理学でいう「目標設定理論」に基づいた適切な目標設定が重要になってきます。
高すぎる目標は挫折を生み、低すぎる目標は成長を生みません。いまの自分がほんの少し背伸びをすれば届く「適切な目標」を階段のように設定し、それを一つひとつクリアしていくこと。それが自己効力感を高め、揺るぎない自信へと繋がっていきます。
限界を自分で決めず、他者というコントロールできないものを気にするのをやめてみましょう。あなたの中にある「積み重ねの力」を信じて、今日も新しい一歩を踏み出してくださいね!心から応援しています。




