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「小さなプロ野球選手の履歴書/ヤキュイク編集部」は野球に携わるすべての指導者、保護者にオススメ。

ヤキュイクとは「野球を通した教育」がテーマの全国の野球少年保護者、指導者向け情報サイトです。 大人はどのように子どもをサポートするべきか? 子どもの成長を引き出すためにどう関わるべきか?保護者、指導者に役立つニュース、コラムを無料配信しているほか、小学生を対象に「ライフスキル」と「野球技術向上」をテーマにしたキャンプを、プロ野球球団と共に毎年実施しています。本書はそんなサイトを7年間運営している中で気になっている事がきっかけとなって制作を始められたそう。その一つは野球界の「うさぎとかめ現象」です。

 

『小学生離れした体格から、投げては剛速球、打っては大ホームランを連発する、そんな選手「スーパー小学生」を取り上げることが増えてきたが、中学、高校へと進む中で、かつての「スーパー小学生」たちの名前が聞かれなくなる、そういうことが意外と多い。反対に、身体も小さく、目立った活躍もしていなかった「無名だった小学生」たちが成長するにつれて、かつての「スーパー小学生」たちを越えていく「うさぎとかめ現象」のようなケースが多々ある。フィギュアスケートや卓球、ゴルフなどのスポーツは幼い頃からトップレベルだった選手がその後もずっとトップレベルであり続けるイメージがありますが、野球の世界ではなぜ「うさぎとかめ現象」のような逆転現象が多く起こるのか。』
(はじめにより)

 

もう一つはプロ野球の世界で身長の低い選手の活躍が目覚ましいこと。

 

『昔から身体の小さな選手はいましたが、どちらかというと小技を求められるタイプが多かった。しかし現在では、森友哉選手(オリックス/170センチ)、宮崎敏郎選手(DeNA/172センチ)のように高い技術とパワーを兼ね備え、打線の中軸を担う選手も珍しくない。ピッチャーに目を移しても、平良海馬選手(西武/173センチ)は160キロ近い剛速球を投げ込み、球界を代表するリリーフ投手になっています。そんな彼らは、いったいどんな少年野球時代を過ごしたのか?早熟タイプだったのか、あるいは子供のころから小さかったのか?自分の体格とどのように向き合い、どんなふうに練習に取り組んできたのか?体が小さいことで壁にぶつかったとき、どのように乗り越えてきたのか?そんなことを考えている内に彼らの野球ヒストリーを追いたくなった。』
(はじめにより)

 

本書では8人のプロ野球選手とアマチュア時代の指導者にインタビューを行っています。それぞれの記事毎に担当記者が記載されており、記者と指導者との信頼関係を個人的に感じます。こういった背景はなかなか語られてこないので、記者の皆さんの熱意や努力が1つ1つに込められているのを感じます。これらの疑問を追っていきますが今回は2つのトピックスを抜き出してみましょう。

自分の武器を見つける

インタビューしたプロ野球選手に共通していた点のひとつとして、全員が「今の身長で良かった」と話されています。自分の体にあった投げ方や打ち方を、いろいろなことを考えて、自分で試してみながら、プロとして通用する自分の武器を見つけていったと話しています。投手と野手それぞれ一名見てみることで気付きがあります。

 

宮城大弥選手
『昔は「180センチあればもっと速い球を投げられる」とも考えていたが、今は171センチの身長の中でベストな体の使い方をして、キレを出せているのでこの身長で良かったのかなと思います。クルっとまわって投げるのがぼくの特徴ですけど、背が大きかったらこの投げ方はできていないかも。だから体が大きければすべてが有利に働くとは、言い切れません。』(119~120ページより)
森友哉選手

『野球をやるうえでの身長が低いというのは、何のハンデもデメリットもないと思います。身長が低いなら低いなりのやり方があるはずですし、そこでどう考えて工夫するかということが大事ですよね。単純なパワーは体の大きい人の方が有利なのかもしれません。でも、身長が高くて手足が長い人よりも、身長が低い選手は手足を器用に使えます。実際に自分は内角の厳しいボールを窮屈にならずに打つことができますけど、それは身長が低いからというのもあると思います。』(166~167ページより)

 

岸創価大学前監督(小川投手の大学時代指導者)

『やっぱり大事なことは桜梅桃李、桜や梅、桃や李それぞれの良さがあって、どれも代わりにはなれないという意味なのですが、野球選手においても同じなんです。体の大きい人には大きい人なりの良さがあり、小さい人には小さい人なりの良さがある。誰かをうらやましく思う必要なんてありません。自分らしく個性を輝かせながらベストを尽くせば成功できるということを小川は示してくれています。』(106~107ページより)

 
 

 

だからこそ、小中学生でも高校生でも、身長に関係のない自分の武器を先ずは見つけてもらいたいと話されています。ここから物事に対して深く考えて自分なりの答えを見つけ出す姿勢こそ学ぶべき事だと思います。その上で、小中学生から自分の武器を見つける力をどのように養ったのかを指導者や家族の視点から聞いてみたいです。

伸び伸びプレーすることができた環境

プロ野球選手になるには小さい頃から専門的な指導者が必要かと思いがちですが、必ずしもそうではないようです。今回紹介する美馬選手は小学生時代はチームに長年指導している監督やコーチがいるわけではなくて、その時々の選手の親が指導をしていたりしていたようです。そして宮崎選手は監督やコーチはいましたがチームに対する指導(礼儀等)は厳しかったそうだが選手個人に対しては伸び伸びとした指導だったようです。

 

美馬学選手
『「フォアボールを狙え」「叩きつけてゴロを打て」など、「お前は小さいんだから」というようなことを指導者から言われたことがまったくないんです。打ち方だったり投げ方だったりも好きなようにやらせてもらいました。今にして思えば、それが自分の身長のことを気にせずに、野球選手として小さくまとまらなかったことに繋がっているのかもしれないですね。』(49ページより)
 
宮崎敏郎選手
『現在の独特のバッティングフォームは、小学生の頃には完成していたんです。ボールを遠くに飛ばすために試行錯誤する中で、ああいうスイングにたどり着いたという感じですね。指導者から「体格に見合ったコンパクトなスイングをしろ!」「もっとゴロを転がせ!」と言われた記憶はまったくありません。割と伸び伸びと自由にやらせてもらっていました。』(64ページより)

 

そうした練習環境ではありましたが、野球に対して手を抜くことは一切なく、楽しみながら上手くなれるように練習に取り組み続けていたようです。昔は厳しい環境に身を置くと結果が出ると思いがちでしたが、野球を楽しみながらプレーすることが結果に結びつく事例がどんどん増えてきました。野球離れという問題がありながら、野球界が裾野からどんどん変わってきている事例だと思います。野球は礼節を重んじる競技でもあるので、人間性を高めたいと思っている親御さんにとってまた魅力的な競技になれるキッカケこそがこのようなのびのびとプレーできる野球環境だと思います。

まとめ

平良選手がインタビューで語った「身長や体重に関係なく活躍できるのが野球の魅力」というのが本書のまとめになると思います。野球というスポーツに出会う入口としての少年野球では、子供たちに「野球が楽しい、野球が好き」と思ってもらうことが何より大事です。そう思うことができれば、体が小さくても、思うような活躍ができなくても、子供たちは野球を頑張っていけます。本書が多くの野球に携わるすべての指導者、保護者の思い込みの蓋を外すきっかけになることを祈ります。

 

 

 

【この書評の著者】

プロスポーツメンタルコーチ/一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

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