スポーツメンタルコーチという仕事の未来

試合に負けた日の夕方。
誰もいなくなったグラウンドで、
一人の選手がベンチに座っていた。
うつむいたまま、
スパイクの土をいじっている。
悔しさなのか、
情けなさなのか、
うまく言葉にできない感情を抱えたまま、
動けずにいる。
そこに監督がやってきた。
特別なアドバイスはしない。
戦術の話もしない。
ただ隣に座って、
こう言った。
「今日は、よく走ってたな」
それだけ。
たった一言。
でも、
その選手は少しだけ顔を上げた。
その日の帰り道、
「もう少しだけ頑張ろう」と思えたらしい。
監督はメンタルコーチの資格なんて持っていない。
心理学を学んだわけでもない。
ただ、
選手の隣に座っただけだ。
でも確実に、
彼の心を救っていた。
?
心を支えてきたのは、
いつだって「普通の誰か」
こんな瞬間は、
スポーツ現場にいくらでもある。
負けた夜に「次いこ」と笑うチームメイト。
黙って弁当を作り続ける親。
失敗しても変わらず送り出してくれるトレーナー。
資格も肩書きもない。
でも、
確実に人のメンタルを支えている。
私は長年スポーツメンタルコーチとして活動してきたが、
ある想いがずっとある。
本来、
人のメンタルを支えるのに
特別な肩書きなんていらないんじゃないかと。
むしろ、
「肩書きがないと支えられない社会」のほうが
不自然だと思うことがある。
?
メンタルコーチが必要すぎる社会は、
どこかおかしい。
もし、
専門家がいないと気持ちが立ち直れない
メンタルコーチがいないとチームが回らない
そんな世界になったら、
それは健全とは言えない。
本当は、
指導者が自然に寄り添い
仲間が自然に励まし
親が自然に信じる
その関係性の中で、
心は回復していくはずだからだ。
メンタルサポートは、
本来「日常」にあるものだと思っている。
?
それでも、
私がこの仕事をしている理由。
それは
少し矛盾しているようだけれど、
私は今もメンタルコーチを育てている。
一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会を立ち上げ、
指導者や支援者にメンタルコーチングを伝えている。
でも目的は
「専門家を増やすこと」ではない。
「心を扱える大人を増やすこと」だ。
監督が変われば、
チームは変わる。
親が変われば、
子どもは変わる。
関わり方が変われば、
空気が変わる。
その結果として、
メンタルコーチという職業が特別じゃなくなる。
それが本当の究極のゴールだとおもむている。
?
「One athlete, One mental coach」の本当の意味
私たちはこんな言葉を掲げている。
One athlete, One mental coach
1人のアスリートに、1人のメンタルコーチを
この言葉を誤解されたくない。
「全員に専門家をつける」という意味ではない。
そうではない。
監督が、
その子のメンタルコーチでいい。
親が、
その子のメンタルコーチでいい。
仲間が、
その子のメンタルコーチでいい。
あなたが、
目の前の一人を支えられれば、
それでいい。
つまり、
誰もが、
誰かのメンタルコーチなんだ
という世界をつくりたいのだ。
?
いらなくなるために、
育てている。
だから私は、
少し不思議な覚悟でこの仕事をしている。
メンタルコーチを育てながら、
メンタルコーチがいらなくなる社会を目指している。
依存させるのではなく、
自立させる。
頼られるのではなく、
手放す。
いつか、
「もう大丈夫です。自分たちでやれます」
そう言われる日が来たら。
それはきっと、
私たちの活動が成功した証だ。
メンタルコーチが活躍しなくていい世界。
それは
誰もが自然に、
誰かの心を支えている世界。
それが、
私たちが本気で目指している未来だ。
【このコラムの著者】
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