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「選手たちに本当に必要なサポートを」今浪隆博さんのスポーツメンタルコーチングへの想い

スポーツメンタルコーチ資格講座卒業生インタビュー第6弾

 

今回は当資格講座卒業生であり、元プロ野球選手でスポーツメンタルコーチの今浪隆博さん。現役時代に患った甲状腺機能低下症による鬱の症状を通して経験したメンタル面での困難を乗り越えた彼だからこそ分かる選手たちへの本当の意味で寄り添うサポートとは。そんな彼にメンタルコーチングへの想いと資格講座の経験談を聞いてみた。

プロ引退にまで追い込んだ精神的苦痛を経験した先に見えた光。スポーツメンタルコーチになるきっかけとは

-スポーツメンタルコーチになりたいと思った理由やきっかけは何ですか?

 

きっかけというか事の発端であるメンタル面での不調を感じ始めたのはプロ野球選手として活動する中、2016年に甲状腺機能低下症を患ったことでした。その病気の症状の一つに鬱のような状態になることがあるのですが、メンタルの不調はずっとそのせいだと思って投薬治療を続けたところ数値が正常に戻ってもその「うつ病(*1)」の症状が消えなかったんです。

 

その症状がひどい時には、ある日球場へ車で朝向かう途中に突然涙が溢れてきて「何やってんだろう俺」って、「このまま突っ込んだら俺は楽になれるのか」って良からぬことを考えてしまうこともありました。

また遠征先でも同様で、ホテルから球場までのたった15-20分くらいのバス移動で周りにチームメイトがいる中でも突然涙がポロポロ落ちてきてそれをサングラスで隠しているような状態でした。

そんな精神状態がずっと続いていて、それがとても苦しくてとにかく誰かになんとか助けて欲しかったんです。

 

-本当に聞いているだけでも胸が締め付けられる程の苦しい経験ですね。。

 

はい。ただ選手としては技術的にも成績的にも全盛期でこれからもっと伸びる感覚があるくらいとても良い状態だったので、同時に込み上げてくる「野球とはなんだろう?」とか「自分ななんでここにいるんだろう?」という苦しい思いとの葛藤がありました。

 

当時はとにかく誰かに助けて欲しかったので、メンタルトレーナーやスピリチュアル系のセラピストの方など色んな人に会って話を聞いてもらったり、最終的には神頼みで有名な神社にお祓いに行ったりもしましたが納得できる効果は得られませんでした。

 

病院もサードオピニオンまで行きました。自分の病気である甲状腺機能低下症に特化した有名な病院に行ってもお医者さんに言われることは「数値は安定しているので問題ありません」という一言でした。

 

常に苦しい精神状態の中で、だんだん自分で病院を探したり、メンタル関係に従事されている方と会ったりすることが辛くなってしまって、助けて欲しいということを諦めてしまいました。

 

 

-鬱の症状が辛いにも関わらず、それでも諦めるくらい辛かったんですね。

 

はい。諦めた理由は何かというとどんなメンタル関係に従事されている方に話を聞いてもらっても、皆さんどんなスタイルであれ最終的なアプローチやゴールって一緒なんだなって感じたんです。結局はプロアスリートの自分のことを理解してくれないんです。

プロの世界はアマチュアとは異なり前例がないことが多い世界なので、同様にメンタルトレーナーさんやスピリチュアル系の方が学んできた正攻法や型にはまったアプローチでの治療は通用しないことにも気付かされました。どの方にお話を聞いても同じような話やアプローチをされるので、鬱の症状から助かることを諦めざる得なかったんです。

 

そんな状況だったのでプロ野球というチームスポーツで仕事として人生をかけている他のチームメイト達のためにも私のミスで迷惑をかけるわけにはいかないという思いから、シーズン中にも引退を球団に伝えることも考えましたが、ずるずるプレーを続けてしまいシーズン終了後に戦力外を告げられた瞬間プロ野球選手を引退しました。そこでセカンドキャリアどうしようって考えるようになりました。

 

-引退したもののセカンドキャリアをどうするかは重要なことですよね。

 

球団からのお仕事のオファーもあったのでお世話になれば何も考えずに楽だったのですが、しっかり自分にできること・やりたいことを考えたときに当時の僕はプロ野球コーチをしたいという思いが強かったんです。プロ野球の世界では能力のある選手が二軍で成績を残していても一軍に上がった瞬間に結果が出ない人が多いという現実があったので、コーチになり技術的なことを教えるよりも現場で彼らに寄り添って適切なアドバイスやサポートをしたいという思いがありました。ただ球団からのその時のオファーはコーチのポジションではなかったんです。

 

そこで本当にやりたいことを我慢して球団に球団に残るよりも、私のやりたいことであるメンタルコーチングをしっかり突き詰めて勉強しようと思いました。しっかり勉強して自分の望んだキャリアを描けるようにしたいと思い、まずはどこで勉強すればいいかをすぐ調べました。

 

ただ私の今までいろんな方と会った経験から、メンタルについて学校とか教科書で学んでいる方には決まった型があるのではと考え、あえてメンタルを専門とする学校を卒業していなくて、独学で成功している人に絞って調べたんです。なぜならそういう方ほど型にはまらず何が実践的に必要かを分かっていて僕が学ぶ上でも近道じゃないかなと思ったんです。そこで調べていて見つけたのが鈴木さんでした。

 

実際に資格講座を受けてみて感じたこと

-どうして当方の資格講座を選んだのですか?

鈴木さんを見つけてからは一度会ってもらいたくてすぐホームページから連絡しました。当時は資格講座をやっていることも知らなかったので鈴木さんの近くで働かせてくださいって言ったんです。ただ鈴木さんに会って話をした時にこの協会の資格講座について聞いてからはすぐ受けることを決めました。

 

-実際に資格講座を受けてみてどうでしたか?

シンプルに楽しかったです。恥ずかしながらそれまで勉強したことがなく、自分で何かを学びたいと思ったことがなありませんでした。今までは野球をやることが全てで受験もしたことがないですし、入学テストなども受けたことがなかったのでそんな中で自分で学びたいことを勉強することってこんなに楽しいんだというのが素直な感想でした。

 

-資格講座の中で印象に残っているワークはありますか?

講座の一発目で行ったバランスゲームのワークですね。やっている方としてはただただゲームに没頭して楽しかっただけなのにゲームに結びつけて伝えたいことを伝える方法って凄い伝わりやすいんだなって感じて面白かったです。

 

-資格講座後はすぐプロ講座も受けて頂きましたがいかがでしたか?

プロ講座も資格講座後すぐ受講させて頂きましたが、自分自身のことを客観的に見る良い機会になりました。

自分が相手に対して「こうなって欲しい」という思いって、誰しもがあると思うんですけどその思いに相手を誘導しないことを学びました。

私が現役の時に感じていたその人の思いで決められたゴールに対して誘導されて良い思いをしなかった経験や、結果を残せずに野球を辞めていった人たちを見てきた経験がこの学びにも繋がっていると感じます。

例えば、私が鬱状態になっている時に出会ったメンタルトレーナーさんたちが「私を誘導したいんだな」と感じてしまったゴールだったり、一方野球の指導者で言えば「俺はこれで強くなったからこうしろ」みたいなことが「こうなって欲しい」という思いに当てはまります。
ただそれって「全員に当てはまるの?」ということで、選手もそれぞれ体格も違えば、出すべき結果とか求められるものも違う中で一つの型にはめていくことに疑問を感じます。
 

もちろんその型にはまる人もいれば逆にとことんはまらない人もいます。ただ野球の世界だとその型にはまれなければそのコーチに「俺の指導法に従えないなら試合で使わない」って言われることもあるので、私自身やそういう選手を見てきた経験からも誘導しないことを改めて客観的に見られるようになったんだなと思います。

 

-その後はチームメンタルコーチングも受講されてセミナー講師のような立場も学んでいただきました。当時から夢先生などもされていましたが人前で話すのは得意だったんですか?

 

得意か不得意で言えば、人前で話すのは得意だったと思います。現役の時にオフシーズンでよくトークショーがあったのですが、そういう場面でもちろん緊張はするんですけど得意ではあったと思いますし人前に出て話すことには苦手意識はなかったです。

 

-そんな中で大勢の前でメンタルコーチングをするような話術を学んで頂いていかがでしたか?

 

鈴木さんも仰っていましたが、私がやってたトークショーって今浪隆博に興味がある人が来るのでどんな話をしてもウケるんですよね。逆に私に興味がない人に興味を持ってもらえるように話すことが難しいことだと講座を通して気付かされました。
 

これって僕のことを知らないチームにコーチングに行く時は今でも感じることですし、そういう場面では話しながらどうしようって感じることもあるんですけど以前ほどその気持ちの波みたいなものは抑えることができています。

 

-ちなみにこれらの3つの講座を通して、特に自分の成長を感じられた印象的な出来事はありましたか?

 

セルフイメージ・思い込みの話がすごく印象的でニューロ・ロジカル・レベルの話も聞いて本当にその通りだなと感じました。


ワークの中でも自分の思い込みの話について「人前で歌が歌えないということ」を挙げました。自分の過去の経験として小学2年生の時に合唱コンクールで「友達シンドバット」っていう曲を歌った時に、当時は歌うことに抵抗がなかったんですけど大声で歌っていたら先生が近くに来て「今浪、声を落としてくれ」って言われたことがすごいショックでトラウマになっていてその経験を引きずって今でも影響しているんだなって気付かされた時に衝撃を受けたんです。

 

その時にセルフイメージってアスリートにとってもよくない思い込みや足かせになっているものってたくさんあるなと感じました。

私生活において些細な歌を歌うということ一つでもこれだけ足かせになってしまうのに、プレーをするという正解・不正解/成功・失敗がはっきり結果で出る世界の中で足かせがあることってもったいないなって強く感じました。

 

コーチング中、私が見ているアスリートたちにはセルフイメージをプラスな感情にしてあげることをいつも心がけています。

 

怒らないコーチング方法で選手に本質を伝える

 

-最近はスポーツメンタルコーチとしてどんな活動をされていますか?

 

最近は自ら何かメンタルコーチとしての発信することはあまりやっていない状況ですが、ゴリラクリニックベースボールチームの監督業をメインにして、日本航空石川高校のメンタルコーチ兼技術コーチ、そして選手個人のコーチングもしたりしています。

 

ゴリラクリニックベースボールチームでは監督はもちろんですが、スポーツメンタルコーチとしても関わっている感覚も持っています。

 

実はチームができた3年前に監督っていう呼び方を廃止して欲しいという提案をしました。なぜなら監督って呼ぶことで選手たちを緊張させてコミュニケーションを取りづらくしてしまいますし、親しくしてはいけないという固定概念を作って選手との距離を作ってしまうと自分の経験上感じているからです。その監督という言葉一つで選手のプレーやパフォーマンスにネガティブな影響があってはいけないと思っています。

 

結局チームとして表向きでは肩書きとして監督をすることになったのですが、チームのみんなからは浪さんと呼んでもらうようにしました。これも私は監督でありスポーツメンタルコーチとしてチームの指揮をとった時、チームは良い方向に向かうのではないかと感じていたからです。

実際に創部2年目で部員はまだ12名しかいませんでしたが2021年は天皇賜杯という全国大会で全国ベスト4という成績を残すことが出来ました。

 

この関わり方をして興味深かったのはとある選手から「どうして浪さん怒ってくれないの?」って聞いてきたことです。試合後のミーティングで集まって話し合いをしていた時に、絶対にいけないプレーでのミスを今までの監督からは怒られてきたのにどうして私は怒ってくれなかったのかって言われたんです。

 

-確かに選手側から怒って欲しいと言われるのは興味深いですね。

 

はい。その時に僕がしていたことは「どうしてそうなったの?」「これから良くしていくにはどうしたら良い?」という質問をしていたんですよね。そこで彼にどうして怒って欲しかったのを聞いていくとミーティングの場で怒られることでそのミスが精算させて気持ちが楽になれるということで、そうすることで実は自分のミスから目を逸らしたかっただけなんですよね。それでは本質的に選手たちのためにならないのではと思います。

なぜなら、今まで怒られたことのあるプレーを繰り返してしまうのはその場しのぎは成功したとしても改善になっていないと感じるからです。

 

同時にこの経験を通して怒る代わりに選手たちに質問して聞いていくことって怒られてきた選手たちには新鮮なんだなっていうことが分かったんです。実際にチームは成績も上がってきていて僕的にはとてもありがたいことでしっかりメンタルコーチングで学んだことが仕事として生かされて結果として見え始めてきたことが嬉しいです。

資格講座を検討している方へ一言

-最後に資格講座を検討している方へ一言お願いいたします。

 

まず迷っているなら受けた方がいいです。学んで損することは絶対ないですし、その迷っている時間がもったいないですよと言いたいです。

 

今後の人生やスポーツ関連の仕事においても、指導者の方が受けることで武器になる講座だと思いますし、指導者に関わらずコーチングを行う方のためになることがたくさんある講座なので受けない手はないと思います。

 

僕がまさにそうだったので、「是非受けた方が良いです」という事は声を大にして伝えたいですね。

 

注釈:

(*1)※本文中に出てくるうつ病は、現役引退後に精神科の医師とお話をする機会があり、自身の経験を話したところ甲状腺機能低下症の症状ではなく、うつ病の可能性が高いと助言していただいたことで判明しました。


 

今浪隆博さんのプロフィール

スポーツメンタルコーチ

1984年7月6日生まれ。福岡県北九州市出身。平安高校(京都府。現・龍谷大平安高校)、明治大学を経て2007年北海道日本ハムファイターズに入団。2014年東京ヤクルトスワローズに移籍。2017年、持病である甲状腺機能低下症の影響から現役引退を決意。現在は、スポーツメンタルコーチとして、自身の選手時代におけるケガや病気の経験から、 アスリートが抱える「メンタル」における問題を解決し、より高い成果を出すためのサポートを行なっている。

 

Interview by 鈴木 颯人

Edit by 畠山 大樹

 

インタビュー動画

 

 

次回のスポーツメンタルコーチ資格講座のご紹介

 

スポーツメンタルコーチ

 

スポーツメンタルコーチ資格講座は「日本スポーツメンタルコーチ協会(R)」にて発行されている資格です。One Athlete,One Mentale coachの理念を掲げスポーツメンタルコーチの普及に力を入れております。
 

 

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