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ミスよりも”強みに目を向ける”ポジティブなメンタル、楢本光選手

アスリートの望む結果にメンタル面でサポートするスポーツメンタルコーチの鈴木颯人です。出身地の福岡県小郡市ふるさとスポーツ大使に任命された楢本光選手。ゴール時に行う”肘パフォーマンス”が、愛らしいと人気を博すサッカーなでしこジャパンの司令塔です。U17女子W杯で全6試合に出場し準優勝、U20女子W杯でもヤングなでしこの3位に貢献しました。

尊敬する選手として挙げているのは、元スペイン代表のシャヴィ選手やイニエスタ選手。プレースタイルの特徴は、広い視野から正確なパスを出せる高いスキルでターンや細かいタッチなどから前線にパスを出すことで攻撃につなげることが出来ます。今回は、楢本光選手について
スポーツメンタルコーチとしての視点でお話し出来ればと思います。

目次

  • 文武両道を貫き”なでしこジャパンの司令塔”へ、楢本光選手

  • 海外移籍を通じて感じた違和感、”良いところに目を向ける”

  • 仲間や両親から学んだ”サッカー選手として大切にしたいもの”

文武両道を貫き”なでしこジャパンの司令塔”へ、楢本光選手

福岡県出身の楢本光選手がサッカーを始めたのは、小学校1年生の時。少年サッカークラブに入っていた1歳年上の兄の練習を見ていたことがきっかけで自然とサッカーを始めたのだそうです。

 

小学校入学と同時に入団した”小郡東野少年サッカークラブ”が、彼女のサッカー人生の原点。13歳の時には、福岡J・アンクラスの下部組織である”アンクラスFC・Paso Dorad”との2重登録でトップチームへも招集されるほど才能を認められました。

 

U17日本代表にも選ばれ、トリニダード・トバゴで行われたFIFAワールドカップに出場。あと一歩のところまで勝ち進みましたが、決勝でPK戦の末に韓国に敗れました。しかし準優勝となったこの大会で2得点を挙げた楢本光選手は、女子サッカー界へ大きなアピールができたのです。

 

U20でも日本代表としてFIFAワールドカップに出場し、この大会でも3位入賞へ貢献。福岡女学院高等学校を卒業すると成績も優秀だった楢本光選手は、筑波大学に進学しました。同時に”浦和レッズレディース”への移籍が決まり、サッカー選手としても順調に進んでいきました。

 

高い評価を受けたことで念願の”なでしこジャパントップチームのメンバー入りを叶え、ニュージーランド戦で代表デビュー。ヨルダン戦では、先発メンバーとして出場を果たしました。

 

なでしこリーグのベストイレブンにも選ばれ、華々しいデビュー年を飾った楢本光選手。大学卒業後も筑波の大学院に進み、体育学で博士号を取得しました。大学、大学院と名門筑波で懸命に学業とサッカーの文武両道を貫きました。

 

そして彼女の向上心は、留まることを知らず、大学院課程を修了するとドイツへ移籍。フラウエン・ブンデスリーガのSCフライブルクでプレーしました。女子サッカー選手として初めて日本航空からのサポート契約を交わした楢本光選手。”ポスト澤”としてボランチを引き継ぎ、才色兼備と称される”なでしこジャパンの司令塔”なのです。

 

スポーツメンタルコーチとして選手をサポートする際に、楢本選手のように現役でありながらも大学や大学院に通われる方がいます。すごく大変なことですが、時間が許される限りはとてもいい選択だと私は思っています。人は、常にこういった学びたい欲が潜在的にあるからです。この欲をしっかりと消化しておくことが競技にもいい影響を及ぼすからになります。

 

海外移籍を通じて感じた違和感、”良いところに目を向ける”

母校の筑波大学での6年間、”上半身の体幹を鍛えるための槍投げ”や”走り方を学ぶためのハードル”などサッカー以外の競技要素のトレーニングも行ってきた楢本光選手。年間通して10ヶ月が試合のサッカー選手に必要な”怪我をしない体つくり”を見据えてトレーニングを考えてからだそうです。

 

毎週末の試合で最大のパフォーマンスが出せるように逆算して計画的にコンディションを整えるのは「世界でも活躍できる選手を目標にしているので常にどうしたら自分が成長できるかということに向き合っている」からだと話しました。

 

アスリートの中には、オフの日にはリラックスさを求めて競技から離れた趣味で過ごす選手も多いもの。しかし休みの日でも楢本光選手の頭の中は、サッカーのことでいっぱいになってしまうほど大好きだそうです。世界のトップレベルの選手たちが”どんなプレーをして試合をこなしているのか”を見て過ごす日々。自分が設定した目標に向かっていく過程が楽しくて仕方がないのです。

 

もちろん自分で思い描いたような思うプレーができない時、結果がついてこなかったりすることで悩むこともあります。そしてミスしたことばかりに目を向けて反省することも多く、常に自分自身に厳しく向き合っていたという楢本光選手。そんな彼女が安定したメンタルを維持できるようになったのは、ドイツへの移籍がきっかけだったそうです。

 

発見したのは、日本の選手と海外の選手の決定的な違い。海外の選手は、”自分の良いところに目を向けて強気でプレーする”のだと言います。そんな国民性もあり、もちろん監督の指導やアドバイスや要求も楢本光選手の”強みを出す”こと。このような環境のなかで日本でプレーしていた頃の”ミスばかりに目を向けていた自分”を改めることができました。

 

考え方を180度変えることで”自分の成功を積み重ねるように”意識づく変化を実感していきました。また、プレー以外での言葉の壁や不慣れな海外での厳しい環境とも闘う必要があったドイツでの生活。「議論を大切にするため意見をぶつけ合い、お互いの考えを尊重し合うところが、ドイツ人の素敵なところ」と話しました。

 

ドイツ人以外にもさまざまな国に選手がいたことも良い刺激になったのです。日本とは異なった文化や考え方に触れることで驚くことも多かったそうですが、そんな経験も全てひっくるめて”いろんな角度から物事を考える”という大切なことを学んだ楢本光選手。メンタルを鍛えられ、サッカー選手として必要な見方を変えることのポジティブさも身につけることができたのです。

 

アスリートとして、特定の競技のパフォーマンスを高めることに集中した練習をしがちです。しかし、専門の競技者である以前に人としてのパフォーマンスをしっかりと発揮できる状況なのか?人として結果に道徳や倫理観を備えた人であるのか?こういったそもそもの部分をしっかりと見直すことが遠まりのように見えて結果を出すための近道だったりすることが多々あります。

 

仲間や両親から学んだ”サッカー選手として大切にしたいもの”

サッカー選手としてプレーする上で大切にしていることは、周りの人たちへの感謝の気持ちだという楢本光選手。個人技などで結果が左右されるもののチームプレーなのがサッカーです。誰かのミスは、仲間でカバーし合うこと。みんなでワイワイと過ごすことや笑い合うコミュニケーション作りもチームに良い影響をもたらし、お互いを高め合うことができます。

 

良いチーム環境の中では、選手たちも個々の能力を成長させたり、最大限に持っている力を発揮できるのです。そんな楢本光選手は、特に両親からの教えを大切にしているのだそうです。

 

子供だからと甘やかしたりはせず、現実から逃げることなく自分の心に問いかけるような言葉をかけてくれたのだと言います。そして調子が良くても決して鼻を高くしないようにも諭してくれました。「あなたがいくら調子が良くてもレギュラーとして試合に出ていない。調子が悪くても結果を残して入れば、あなたなら使ってもらえるんじゃないの」という言葉などです。

 

調子が良くても油断はしないように、そしてレギュラーを取るために結果を残すことの重要性も理解できるような言葉。しかし本当に行き詰まった時に優しく手を差し伸べ、包み込んでくれたのも両親だそうです。”なでしこジャパンの才色兼備”と言われてチヤホヤされても勘違いなどせず、アスリートとして強い芯を持ってプレーに邁進してこれたのは、両親からかけられてきた言葉があったからなのです。

 

今回は、楢本光選手についてお話しました。愛らしいルックスから繰り出される彼女の武器は、なでしこジャパンの司令塔を任されるほどの広い視野やパスセンスなどの高い技術。ドイツ挑戦で得ることができたのは、”強いメンタルや強みを見つめること”です。そして両親や仲間からサッカー選手として大切なもの”を教わった楢本光選手。どこを見ても魅力あるアスリートの一人です。

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【このコラムの著者】

プロスポーツメンタルコーチ/一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

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