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チームダイナミクスとは|コミュニケーションだけじゃない壁の越え方 

スポーツメンタルコーチ

【このコラムの著者】

プロスポーツメンタルコーチ/一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから 
 

アスリート、スポーツ選手の皆さんは、ミスをした場合や課題を抱えている状況の克服の仕方はどのように捉えているでしょうか。 単に「気をつける」だけや「気に掛ける」といった安易な方法に頼ってしまっていることはありませんか。

 

特に、自分自身や個々人で解決できないような大きな課題に直面した際にこそ、安直に解決しようと思ってしまう方は少なくないと思います。 近年、あらゆる場面でチームダイナミクスという考え方が注目されています。

 

この考え方を用いると、課題を抱えた際に根本的な解決ができるようになるだけでなく、常に改善をし続けることも可能になります。

 

そこで、この記事ではそんなチームダイナミクスについて構成要素や、海外の研究から見えてくる改善方法も交えながら解説します。

 

チームダイナミクスを把握して成果を挙げたいと考える全てのアスリート、スポーツ選手必見の内容です!

チームダイナミクスとは

チームダイナミクスとは、チーム内で自然に生まれ、お互いに及ぼし合っている協力関係や関係性のことです。

 

また、こうしたチーム内に働く”力学(英語でdynamics)”に対する考え方という意味合いでも用いられている用語です。

 

この考え方はスポーツだけでなく、ビジネスや医療現場といった高いプレッシャー下でもチームで高い成果の求められる様々な場所で活用されています。

チームダイナミクスの構成要素

チームダイナミクスとはチーム内における相互関係に対する考え方ですが、「考え方」とだけ聞いても漠然としていて抽象的に感じてしまうという方もいると思います。 そこで、ここでは具体的にチームダイナミクスを構成する代表的な要素を幾つか紹介します。

 

チームダイナミクスは時と場合によってあらゆる形で作用し合います。

 

そのため、ここで触れていない要素が加わることもあります。 特に集団でプレーするスポーツに励まれている方は、ぜひ皆さんのチームや組織に当てはめてみながらご覧ください。

 

コミュニケーション

コミュニケーションはお互いの意思を目に見える形で表明し発信しあうという点でチームダイナミクスの根幹を構成しています。 競技中には、戦術の伝達や突発的なトラブルへの対処が求められます。

 

また、競技中ではないトレーニング時やミーティング時にもフィードバックや交流を行う際にコミュニケーションは非常に重要であることは明白でしょう。

 

チームの環境

充実したトレーニング施設やサポートスタッフの存在や、組織的な運営や効率的な管理体制はアスリートのパフォーマンスを支えます。

 

施設やスタッフといった視覚的に判断できる要素だけでなく、チーム文化や価値観を共有しやすい環境であるかといった定性的な要素も重要です。 目標達成への共通認識を持たせるためにはこうした環境づくりは非常に重要です。

 

チームメンバーの特性

メンバー個々の技術、体力、メンタルの強さもチームダイナミクスの基盤となります。 多様なスキルや経験が相互に影響しあい競技中の柔軟な対応ができた、という経験のある方もいるのではないでしょうか。

 

役割分担・ポジション

選手・アスリートのポジションや役割はチームダイナミクスにおいて非常に重要です。 本来の役割でない仕事を求めた場合、自分の役割に集中することもできず著しくパフォーマンスが低下してしまうこともあるかもしれません。

 

一方で、特性や振り分けられる役割によっては同時に複数の役割を果たすことが得意な場合もあるでしょう。

海外の最新研究から見えたチームダイナミクスの根幹

ここではチームダイナミクスの重要性をアメリカのチャップマン大学の研究者らによる論文「“Detrimental to the Team Dynamic”: Exploring College Student-Athlete Dissent (Rikishi T. Rey et al.2023)」を元に解説します。

 

大学生アスリートが”異議を唱える”原因を調査

この研究では大学生アスリートを対象に、彼らが異議を唱えたタイミングやその原因を調査しました。

 

研究の対象となった72名の大学生アスリートは、それぞれ11種類のスポーツ( サッカー、野球、ソフトボール、陸上など)を行っており、平均年齢は26.4歳(年齢の範囲は18~51歳)でした。

 

参加者の内訳は女性45名(62.5%)、男性26名(36.1%)、報告なし1名(1.4%)です。

 

なおかつ、現役アスリートが15名(20.8%)と、卒業後にアスリートとしての活動を終了した57名(79.2%)で構成され、学年やスポーツの種類も多様なバックグラウンドをもつ学生で構成されていました。

 

大学生アスリートが異議を唱えた原因

大学生としてストイックにスポーツに励んでいたアスリートが意義を唱えたタイミングや原因には以下のようなものが挙げられます。

 

不公平な扱いを受けた

ある選手は、練習に遅刻しても罰を受けないチームメイトがいることに不満を抱いたと述べられています。

 

また、別の選手は、あるチームが他のチームよりも成功していたにもかかわらず、十分な報酬を受けとっていなかったことに対しても不公平だと感じたという事例も挙げられています。

 

健康上の支障や学業に対する支障が生じた

フットボール選手が、暗く点滅するストロボライトの中でトレーニングさせられ、怪我をした事例が述べられています。

 

なお、学業に対する支障では、ある選手は参加している競技のスケジュールのために希望する専攻の授業に参加できず、最終的に専攻を変更せざるを得なかったそうです。

 

不適切と感じられる配置換え

コーチがとある選手を試合に出さないと決定した際に、その理由が選手に伝えられなかったことにより、選手が不満を抱いたケースがあります。

チームダイナミクスを改善するには

今回の記事で扱った研究で挙げられた「不満を述べた事例」は、単に「気に食わなかったから」意を唱えたのではなく、周囲の環境や人間関係が根源に存在することが垣間見えるものばかりでした。

 

もちろん、本人が努力をすることや工夫を講じることが必要である点はいうまでもありません。

 

しかし、それ以上の課題や困難、特に「理不尽さ」によるチームダイナミクスの悪化は本人のパフォーマンスのみならず意欲を削ぎかねない原因となり得ます。

 

どのような競技であれアスリートやスポーツ選手は一人だけで活動することはできません。特に、今回の研究では実に77.8%もの学生が何らかの奨学金を受け取っており、他者からの評価やサポートを受ける機会は多大に存在していたと思慮されます。

 

このような状況のアスリートやスポーツ選手をサポートするためにはチームダイナミクスを意識した根本的なサポートを意識するようにしましょう。

 

引用論文・「“Detrimental to the Team Dynamic”: Exploring College Student-Athlete Dissent (Rikishi T. Rey et al.2023)

 

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