チームに目的意識があると競技パフォーマンスが上がる?【論文を元に解説】
競技において目的を持つメリットとは
競技やスポーツにおいて目的意識を持つことで得られるメリットについて解説します。 メリットを学ぶことでどのような点に留意すれば良いかもわかりやすくなります。
モチベーションの向上
目的意識の高いアスリートは自身の行動や努力の背景にある理由を明確に理解できていると考えられます。
そのため、モチベーションの高いアスリートは、自己に必要な努力と何が足りていないのかが理解できており、試合だけでなく練習においても成果を発揮しやすくなります。 特に、明確な目標があることで、困難な状況や逆境においても諦めず、挑戦し続ける力が養われます。
心理的安定
チームで目的意識を持つことは、アスリートの心理的な安定にも寄与します。 個々人が自分の行動に対する明確な意味や方向性を持つことで、ストレスやプレッシャーに対する耐性が強化されるでしょう。
これは一人で受容することの難しいストレスやプレッシャーに対しても、集団で解決する術を論理的に思考できることや、周囲がそれぞれの変化に敏感になることが影響しています。
こうした心理的安定は、逆境においてもパフォーマンスを著しく落とすことなく持続するためにも重要です。
競技パフォーマンスに影響する心理的効果「自己効力感 」「自己犠牲」とは
ここでは、スポーツや競技においてパフォーマンスに大きく関与する心理的効果である、「自己効力感 」「自己犠牲」およびその関係性について解説します。
自己効力感 (Self-Efficacy)
自己効力感とは、特定の状況や課題に対して効果的に行動できる能力を有していると認識することです。 これは自信や信念に基づき、困難な状況に直面した際に行動を取る意欲や粘り強さに影響します。 「きっとうまくいくはずだ」「困難であっても自分がやるなら乗り越えられる」と考える状態のことです。
競技中のパフォーマンスだけでなく、練習やリハビリ、チーム内選抜といった、競技や試合以外においても効果を発揮することの期待できる効果です。 自己効力感の効果については以下の記事もご参照ください。 Self-efficacy(自己効力感)は怪我の回復に関係する?
自己犠牲 (Self-Sacrifice)
自己犠牲とは、個人が自分の利益や快適さを他人や集団の利益のために犠牲にする行動や態度のことです。 スポーツや競技においては、個々の選手が自分の欲望や利益を抑えて、チーム全体の成功のために尽力することなどが挙げられます。
チームマネジメントにおいてはプログラムや普段の活動などを通じて、選手同士の信頼性を構築することで目的意識を自然に醸成でき、自己犠牲を厭わずチームに貢献できるような組織作りが可能になるでしょう。
自己効力感と自己犠牲は相互に影響しあう
自己効力感と自己犠牲は互いに相互しあうとも考えられる特徴を有しています。 自己効力感が高いアスリートは、自分が成功や成果を上げる能力を信じているため、チームのために自己犠牲を払うことに対して前向きです。
自己効力感によって自分の貢献がチーム全体の成功に繋がると信じていると、個人の犠牲を気にしにくくなりやすいとも考えられるでしょう。
また、自己犠牲に基づく行動は、チーム内での評価やフィードバックを通じて自己効力感を強化することがあります。 例えば、チームメイトやコーチからの評価によって個人の自信が高まることが、自己効力感の強化につながることもあるでしょう。
【論文で解説】選手のリーダーシップは他のチームメンバーのパフォーマンスに影響する?
リーダーシップが他のチームメンバーの自己犠牲をはじめとするパフォーマンスに影響することがわかっています。 そこで、ここではスペインのエストレマドゥーラ大学の研究者らによって行われた研究 Is Perceived Athlete Leadership Quality Related to Inside Sacrifice and Perceived Performance in Team Sports? The Mediating Role of Team Identification(López-Gajardo etal.2021)を解説します。
この研究ではチームスポーツにおけるアスリートのリーダーシップの質が、自己犠牲およびパフォーマンスの認識に与える影響を調査しました。 299人のアスリートを対象に構造方程式モデリングという因果関係を分析する統計手法によって分析を行った結果、質の高いリーダーシップが自己犠牲とパフォーマンスを向上させることがわかりました。
このようなリーダーシップによる目的意識があることで、他のメンバーは共通の目標に向かって協力し合い、困難な状況でもモチベーションを維持しやすくなると考えることができるでしょう。
競技において目的意識を形成する方法
このように、目的意識の醸成は競技パフォーマンスに影響する可能性があるということがわかりましたね! ここでは、そんな競技における目的意識を形成する方法について解説します。
目標達成後に自分をイメージする
目標達成後の自分を具体的にイメージすることは、競技における目的意識を形成する効果的な方法の一つです。 成功した自分の姿や感情を細かく思い描くことで、目標に向かうモチベーションが高まるでしょう。
この方法は、日常のトレーニングや試合前のリハーサルに取り入れることで、集中力やパフォーマンスの向上にも寄与するでしょう。
メンタルコーチング
メンタルコーチングは、目的意識を形成し、維持するための重要なサポート手段です。 経験豊富なコーチやメンターから定期的に指導を受けることで、自分の強みや弱点を理解し、具体的な改善策を見つけることができます。
自己の力のみで実現することが難しくてもコーチとの対話を通じて、自分の目標を明確にし、その達成に向けた具体的なアクションプランを策定・支援することができます。
目的意識を持たせて競技パフォーマンス
チームで挑む競技において、目的意識を持つことでパフォーマンスの向上につながる可能性があります。
ただし、パフォーマンスに繋げるためにはただ共通認識があれば良いということではなく、自己犠牲や自己効力感を発揮するためにはまずチーム間の信頼関係が重要です。 そのためにも、まずは円滑なコミュニケーションを行うことから始めてみましょう!
参照論文・ Is Perceived Athlete Leadership Quality Related to Inside Sacrifice and Perceived Performance in Team Sports? The Mediating Role of Team Identification(López-Gajardo etal.2021)