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選手のメンタルを強くさせる”ポジティブな声掛け”、眞鍋政義監督

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アスリートの望む結果にメンタル面でサポートするスポーツメンタルコーチの鈴木颯人です。世界選手権32年ぶりとなる銅メダル獲得、ロンドンオリンピックでも28年ぶりとなる銅メダルを全日本女子代表にもたらした眞鍋政義監督。特徴は、綿密なデータ分析を駆使した”IDバレー”です。選手たちが彼に持つ印象は「プラス思考、ポジティブ」。メンタルに不安を抱えがちなアスリートにとって、監督にこのようなイメージがあることは非常に心強いことです。

選手としても活躍し、バレーボール界の最高峰セリエAへも挑戦した名セッター。今回は、眞鍋政義監督についてスポーツメンタルコーチとしての視点でお話し出来ればと思います。

目次

  • 優勝貢献した”名セッター”の選手時代

  • ”IDバレーで”獲得した待望のメダル

  • 選手に自信を与える”ポジティブな言葉”

優勝貢献した”名セッター”の選手時代

兵庫県姫路市出身の眞鍋政義監督。姫路城や大手前公園で毎日暗くなるまで遊んでいた少年時代に当時憧れていたのは、長嶋茂雄さんや王貞治さんで中学から野球を始めようと思っていたそうです。

 

サードやファーストのポジションで希望していましたが、野球部入部後に任されたのはキャッチャー。実際にやってみるも目の前でバットを振られる感覚に恐怖を感じ、苦手意識から次第に野球部から足が遠のいて行きました。

 

そんな時に出会ったのがバレーボールでした。長身の眞鍋政義監督に目をつけた顧問が、バレー部に勧誘します。チームメイトにも恵まれ、スパイカーとして活躍しました。姫路城周辺を走り、特に坂道ダッシュでは体とメンタルを鍛えられたそうです。

 

高校は、大阪商業大学附属高校へ進学。1年目の全国高校総体の予選で敗退するとセッターへポジション変更を告げられました。監督の口癖は「セッターは常にボールと仲良くなれ」というものだったそうです。この言葉通り寝る時もボールを離さなかったという高校3年間。野球ではモチベーションを無くしてしまったポジション変更でしたが、バレーボールでは見事に新しいポジションで活躍して行きます。

 

インターハイ優勝を経験すると大阪商業大学に進学後も西日本インカレ、関西リーグでは1年目から4年間全てで優勝。在学中に日本代表メンバーにも選出され、ワールドカップにも出場を果たしました。

 

卒業後は、新日鐵へ入社。すぐに中心選手となり、日本代表としてオリンピック出場も果たしました。結婚し、3人の子供に恵まれた眞鍋政義監督。実業団で経済的に安定した生活を送ることもできましたが「海外でプレーしたい」という夢を捨て切れませんでした。

 

そして家族4人で海外移住という大きな一大決心を決め、イタリアのセリエAに挑戦することを選びました。世界の有名選手たちとのプレーの経験が指揮官となった今でも活かされているのです。

 

心理学の世界で「自己決定理論」と呼ばれるものがあります。これは自己決定の度合いが動機づけや成果に影響するという理論にいなります。その点において真鍋監督はご自身の経験を通じて誰からにやらされたことで辞めてしまった経験と、誰からにやらされて才能が開花した経験を持っています。そして、自分で決めて行動する最強の動機づけをセリアA移籍で経験しました。スポーツメンタルコーチングの世界ではこのような内発的動機を作っていくお手伝いをすることがあります。メンタルに悩む選手の多くが外発的動機と呼ばれる誰からにやらされて始めたケースがほとんどです。こういった選手が本当にやりたいことに気付いた時の行動力は本当に凄いです。

 

”IDバレーで”獲得した待望のメダル

現役引退した年に久光製薬スプリングスの女子チーム監督に就任した眞鍋政義監督。初年度からVリーグで準優勝、黒鷲旗で初優勝に導きました。新日鐵の先輩、柳本晶一氏に次ぐ2人目となる男女チーム優勝監督となり、全日本女子代表チームの監督にも就任。信頼する4人のコーチで指導する分野を担当させ、試合中に自らiPadを手に分析するというIDバレーで選手に懸命な指示を出しました。

 

自ら掲げたチームの方針は、『スパイクの決定率よりもミスなどが少ない効率化』。そのために徹底した4つのポイントは、サーブ、サーブレシーブ、ディグ(レシーブ)そして失点を少なくするというもので「この4つだけは、世界一になろう」と選手たちに言い続けたそうです。徹底したチーム方針と指揮官やコーチ、そして選手たちの絆の強さで世界最終予選をギリギリで通過。皆でロンドン出場の切符を掴みました。

 

本戦では、12人中10人の背番号を変更した眞鍋政義監督。相手チームがすでに持っている日本チームのデータ分析を撹乱させるためだったそうです。この大会で3位に輝いた日本。眞鍋政義監督のIDバレーは、オリンピックで28年ぶりとなるメダルを獲得したのです。

 

活躍する指導者ほど、得点をとることよりも、失点を防ぐ作戦をお好む傾向があります。プロ野球の世界で言えば、落合博満監督、サッカーでは風間八宏監督が典型例かと言えます。その背景には人間の損をしたくないと思う心理が働いていると考えることができます。この理論を心理学では「プロスペクト理論」や「損失回避」と言います。この働きを理解していると守りを重視するのですが、攻めを重視してしまう人がどうしても多いのが世の常です。歴代の戦国武将などの派手な戦い方を好む人が多いのと一緒で、いつの日も人は派手な勝ち方をしたいという自己承認欲求から現れるのかと思います。そういった自分との戦いやエゴに打ち勝てると守りを大事にできるのです。

 

選手に自信を与える”ポジティブな言葉”

選手たちからの印象は、”ポジティブ”や”プラス思考”だという眞鍋政義監督。指揮官として多くの選手たちのメンタルを強固なものにしてきました。「24対24の場面で自分にサーブ回ってきたらどうする?」と問いかけたのは、ミドルブロッカーの山田二千華選手。「ミスしないようにアンパイなサーブを打っちゃいます」と答えた彼女に対し、”勿体ない”という表情をした眞鍋政義監督は「そんなチャンスが回ってきたら”ここでもしサービスエース取ったらスーパーヒーローになれる”って考える」と言葉を掛けました。

 

するとそれまで消極的だった山田二千華選手を変えたのです。「プラス思考になることによってパフォーマンスも自然と上がってくる。気持ちの上げ方もこれからは大事だぞ」とも声をかけました。

 

勝つためには、ポジティブさでも日本は海外の選手に負けてはいけない。そんなメンタルの重要さに目覚めた山田二千華選手。世界選手権で迎えたブラジル戦では、サーブで積極的に攻めブラジルから5年ぶりの勝利を挙げたのです。

 

連敗が続いていた時に声をかけたのは、セッターの関菜々巳選手。「試合楽しいか?」と聞くと口がもごってしまったのだそうです。そんな彼女に対し「試合ぐらい楽しめよ。何十時間も練習してこの日のためにずっと積み重ねてきた。試合は、その発表会みたいなもんだから楽しむくらいの気持ちでいけばいい」と言葉を掛けました。楽しみたいという気持ちがありながら代表では”勝たなければいけない”という思いが強かった関菜々巳選手。指揮官のポジティブな言葉で「自分が楽しい時が一番いいプレーができる。バレーボールが好きな気持ちは忘れちゃいけない」と気持ちを切り替えることが出来たそうです。ブラジル戦で乗っている選手を見極め、トスをあげ得点に繋げることが出来ました。

 

そんな日本代表チームでも眞鍋政義監督が”真面目さが故に心配した”というのが、石川真佑選手でした。欲よりも栄養を重視するほどの食事の徹底ぶりや練習前後のストレッチからクールダウンなど1日を通して毎日同じものにこだわっていたそうです。さらには髪型もその大会中ずっと同じでした。

 

そこで真鍋監督はブラジル戦に向け、何か爆発力を与えるために石川選手のルーティンを崩そうとしたそうです。お団子ヘアからブラジル戦で三つ編みにしたポニーテールは、チーム内でも「ラーメンマンやモンゴルマン」とイジられながらも前向きに臨めたと言います。

 

もちろん全てのおいて上手くいくというわけではなく、”やってきたことを崩すこと”は非常に勇気が必要です。しかし、日頃から指揮官のポジティブさを感じていた石川真佑選手もこの提案を受け入れ「もし上手くいかなかったとしてもそこでまた新たな築きがあるからいいんだ」と思えるようになったそうです。

 

たった一言であっても多くの選手をポジティブに変えることができる指揮官の言葉。選手たちのメンタルをより強固なものにし、パフォーマンス向上のためにどの指導者にとっても意識すべき大切な能力と言えます。

 

自らも名セッターとして黄金時代を築き、指揮官としてもチームを優勝に導きました。全日本チーム監督就任後も多くの選手たちのメンタルを支えながら強豪チームを撃破し続けた真鍋監督の素晴らしさを物語るエピソードと言っても過言ではないのかと思います。言葉掛けがとても秀逸であることを感じさせてくれます。私自身、日本代表女子バレーボールに選ばれた選手をサポートすることもあるのですが、真鍋監督から出てくる言葉に胸を打たれる方が多い印象を受けます。真鍋監督のポジティブな言葉のかけ方は、バレーボール界のみならず他のスポーツや仕事などでも参考にできるのだと思います。今後の活躍が楽しみです。最後までお読みいただき有難うございました。

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【このコラムの著者】

プロスポーツメンタルコーチ/一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

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