スポーツ選手のメンタルを強くさせる”ポジティブな声掛け”とは?|眞鍋政義監督
メンタルを高める指導者の秘密
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優勝貢献した”名セッター”の選手時代
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”IDバレーで”獲得した待望のメダル
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選手に自信を与える”ポジティブな言葉”
優勝貢献した”名セッター”の選手時代
兵庫県姫路市出身の眞鍋政義監督。姫路城や大手前公園で毎日暗くなるまで遊んでいた少年時代に当時憧れていたのは、長嶋茂雄さんや王貞治さんで中学から野球を始めようと思っていたそうです。
サードやファーストのポジションで希望していましたが、野球部入部後に任されたのはキャッチャー。実際にやってみるも目の前でバットを振られる感覚に恐怖を感じ、苦手意識から次第に野球部から足が遠のいて行きました。
そんな時に出会ったのがバレーボールでした。長身の眞鍋政義監督に目をつけた顧問が、バレー部に勧誘します。チームメイトにも恵まれ、スパイカーとして活躍しました。姫路城周辺を走り、特に坂道ダッシュでは体とメンタルを鍛えられたそうです。
高校は、大阪商業大学附属高校へ進学。1年目の全国高校総体の予選で敗退するとセッターへポジション変更を告げられました。監督の口癖は「セッターは常にボールと仲良くなれ」というものだったそうです。この言葉通り寝る時もボールを離さなかったという高校3年間。野球ではモチベーションを無くしてしまったポジション変更でしたが、バレーボールでは見事に新しいポジションで活躍して行きます。
インターハイ優勝を経験すると大阪商業大学に進学後も西日本インカレ、関西リーグでは1年目から4年間全てで優勝。在学中に日本代表メンバーにも選出され、ワールドカップにも出場を果たしました。
卒業後は、新日鐵へ入社。すぐに中心選手となり、日本代表としてオリンピック出場も果たしました。結婚し、3人の子供に恵まれた眞鍋政義監督。実業団で経済的に安定した生活を送ることもできましたが「海外でプレーしたい」という夢を捨て切れませんでした。
そして家族4人で海外移住という大きな一大決心を決め、イタリアのセリエAに挑戦することを選びました。世界の有名選手たちとのプレーの経験が指揮官となった今でも活かされているのです。
”IDバレーで”獲得した待望のメダル
現役引退した年に久光製薬スプリングスの女子チーム監督に就任した眞鍋政義監督。初年度からVリーグで準優勝、黒鷲旗で初優勝に導きました。新日鐵の先輩、柳本晶一氏に次ぐ2人目となる男女チーム優勝監督となり、全日本女子代表チームの監督にも就任。信頼する4人のコーチで指導する分野を担当させ、試合中に自らiPadを手に分析するというIDバレーで選手に懸命な指示を出しました。
自ら掲げたチームの方針は、『スパイクの決定率よりもミスなどが少ない効率化』。そのために徹底した4つのポイントは、サーブ、サーブレシーブ、ディグ(レシーブ)そして失点を少なくするというもので「この4つだけは、世界一になろう」と選手たちに言い続けたそうです。徹底したチーム方針と指揮官やコーチ、そして選手たちの絆の強さで世界最終予選をギリギリで通過。皆でロンドン出場の切符を掴みました。
本戦では、12人中10人の背番号を変更した眞鍋政義監督。相手チームがすでに持っている日本チームのデータ分析を撹乱させるためだったそうです。この大会で3位に輝いた日本。眞鍋政義監督のIDバレーは、オリンピックで28年ぶりとなるメダルを獲得したのです。
選手に自信を与える”ポジティブな言葉”
選手たちからの印象は、”ポジティブ”や”プラス思考”だという眞鍋政義監督。指揮官として多くの選手たちのメンタルを強固なものにしてきました。「24対24の場面で自分にサーブ回ってきたらどうする?」と問いかけたのは、ミドルブロッカーの山田二千華選手。「ミスしないようにアンパイなサーブを打っちゃいます」と答えた彼女に対し、”勿体ない”という表情をした眞鍋政義監督は「そんなチャンスが回ってきたら”ここでもしサービスエース取ったらスーパーヒーローになれる”って考える」と言葉を掛けました。
するとそれまで消極的だった山田二千華選手を変えたのです。「プラス思考になることによってパフォーマンスも自然と上がってくる。気持ちの上げ方もこれからは大事だぞ」とも声をかけました。
勝つためには、ポジティブさでも日本は海外の選手に負けてはいけない。そんなメンタルの重要さに目覚めた山田二千華選手。世界選手権で迎えたブラジル戦では、サーブで積極的に攻めブラジルから5年ぶりの勝利を挙げたのです。
連敗が続いていた時に声をかけたのは、セッターの関菜々巳選手。「試合楽しいか?」と聞くと口がもごってしまったのだそうです。そんな彼女に対し「試合ぐらい楽しめよ。何十時間も練習してこの日のためにずっと積み重ねてきた。試合は、その発表会みたいなもんだから楽しむくらいの気持ちでいけばいい」と言葉を掛けました。楽しみたいという気持ちがありながら代表では”勝たなければいけない”という思いが強かった関菜々巳選手。指揮官のポジティブな言葉で「自分が楽しい時が一番いいプレーができる。バレーボールが好きな気持ちは忘れちゃいけない」と気持ちを切り替えることが出来たそうです。ブラジル戦で乗っている選手を見極め、トスをあげ得点に繋げることが出来ました。
そんな日本代表チームでも眞鍋政義監督が”真面目さが故に心配した”というのが、石川真佑選手でした。欲よりも栄養を重視するほどの食事の徹底ぶりや練習前後のストレッチからクールダウンなど1日を通して毎日同じものにこだわっていたそうです。さらには髪型もその大会中ずっと同じでした。
そこで真鍋監督はブラジル戦に向け、何か爆発力を与えるために石川選手のルーティンを崩そうとしたそうです。お団子ヘアからブラジル戦で三つ編みにしたポニーテールは、チーム内でも「ラーメンマンやモンゴルマン」とイジられながらも前向きに臨めたと言います。
もちろん全てのおいて上手くいくというわけではなく、”やってきたことを崩すこと”は非常に勇気が必要です。しかし、日頃から指揮官のポジティブさを感じていた石川真佑選手もこの提案を受け入れ「もし上手くいかなかったとしてもそこでまた新たな築きがあるからいいんだ」と思えるようになったそうです。
たった一言であっても多くの選手をポジティブに変えることができる指揮官の言葉。選手たちのメンタルをより強固なものにし、パフォーマンス向上のためにどの指導者にとっても意識すべき大切な能力と言えます。
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