オーバートレーニング症候群から復活!日本代表の守護神、権田修一選手
目次
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”日本でNo.1”と信頼された権田修一選手
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燃え尽き症候群”オーバートレーニング症候群”
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”諦めるしかない環境”で取り戻したメンタル
”日本でNo.1”と信頼された権田修一選手
東京都世田谷区出身の権田修一選手。父はNKKシーホークスでプレーした元バスケット選手で母校である慶應義塾大学體育會バスケットボールの監督を務めた経験もあります。
弟もこの学校のOBでアシスタントコーチを務めています。母も元バスケットボール選手の一家で育った権田修一選手がサッカーを始めたのは3、4歳の時。”サッカーをやらせると成長に良い”と母が聞いたからだったそうです。
小学校では所属していた川崎市内でGKとして川崎市選抜・神奈川県選抜にも選ばれました。当時憧れていたのは、元アメリカ代表のGKトニー・メオラ氏。近所のサッカースクールにFC東京のコーチングスタッフが派遣され、GKコーチからも好印象を受けたことがキッカケでFC東京U15へ入団し、14歳で出場したクラブジュニアユース選手権で優勝し日本一を経験しました。
16歳の時には、2種登録選手としてトップチームの練習に参加。進学した国士舘大学在学中、正式にFC東京のトップチームに昇格しチーム初となる平成生まれの選手となった権田修一選手。3年後公式戦デビューで開幕2連敗と苦いデビュー戦スタートとなりましたが、3試合目以降はシュートに対して鋭い反応を見せチームの勝利に貢献していきます。
出場時間が規定に達しプロA契約になると年間15完封を達成するほどに成長。ナビスコカップ決勝でもフル出場し、無失点に抑えるMVP級の活躍でチームを5年ぶりの優勝に導き、プロ初タイトルを獲得しました。当時監督に就任したランコ・ポポヴィッチ氏から「日本でNo.1のGK」という信頼を受けていた権田修一選手。チームで大きな信頼を得ながら日本代表GKにも選ばれたのです。
燃え尽き症候群”オーバートレーニング症候群”
2大会ぶりに日本代表として戻ってきた権田修一選手。実は、ある種のうつ病を抱え「当時を振り返ると今こうしてプレーできているのが信じられない。現役を続けることが難しいという以前に何もしたくなかった。無気力だった」と話した権田修一選手が患ったのは”オーバートレーニング症候群”。
とにかく眠れないのに起きられないという状況で日常生活にも支障が現れました。サッカーどころではなくなり焼肉屋を経営する中学の先輩に「もし現役を続けられなくなったら僕を雇ってもらえないですか?」と相談したこともあったそうです。
小学校で神奈川選抜に選ばれ、中学校で全国制覇を達成し、高校在学中にトップチームに合流し19歳でJリーグデビューを果たした権田修一選手。20歳で日本代表にも選ばれ、ロンドンオリンピックでは正GKとしてベスト4、ブラジルW杯のメンバーにも選ばれていました。
順風満帆なサッカー生活を歩みながらも”日々成長することが人生のテーマ”とストイックな性格の権田修一選手は、周囲の評価と自己評価のギャップに苦しみました。ブラジルW杯の頃には”まだ自分は日本代表に入ったらダメなレベル”と感じていたのです。
同じく代表のGK川島永嗣選手は、ベルギーでプレー。西川周作選手も毎年優勝争いをする浦和レッズの正GKで自身は試合には出ているものの10、11位と低迷するFC東京でした。そのため「日本代表の試合に出られるようになるには、チームの順位も上がり自分も良いプレーができれば」と目標を持っていたそうです。
W杯が終わりチームに戻るとようやく思い描いた理想に近づいてきました。浦和レッズに続く2位でFC東京は好調をキープし、自身も実力が伴ってきたと手応えを感じていたのです。しかし監督に就任したハリルホジッチ氏は、権田修一選手をベンチに選ぶことはありませんでした。
何よりショックだったのは通常3人のGKよりも多い”4人のGKを招集”したのに入れなかったこと。「僕の今までの人生で一番辛かったこと」と話しました。”もうだめ、やばい。もう終わる”と精神的に追い込まれたそうです。
気分転換をかねて少し休んだ方がよかったのかもしれませんが、さらに練習を積むことで自信を取り戻そうとした権田修一選手。この選択が引き金となり、心身のバランスが崩れてしまいました。「この練習意味あるのかな。もう全て間違いなんじゃないかな」と練習が楽しく感じられない心理状態。
そんななかでも試合に出続け、東アジア選手権の日本代表に選ばれていましたが、ついに代表を辞退するまで追い込まれたのでした。完全に心身が悲鳴をあげ、”オーバートレーニング症候群”の公表に繋がったのです。
”諦めるしかない環境”で取り戻したメンタル
心身のバランスが保てなくなり、生活の中心だった”サッカーをやりたい”と感じることができずにいた権田修一選手。病気が公表された後の2日間、ベットから起き上がることもできなかったそうです。
そんな時目にしたのは、当時2歳だった長男のお昼寝をする横顔。 ”かわいいな”と感じた何気ない日常の一コマでしたが、息子が目覚めたタイミングで一緒に起き上がることができ、”息子と公園に行く時間が楽しい”と感じたのです。
「心配をかけた妻の支えと息子の存在が僕には大きかった」と話した権田修一選手。何かを”楽しむ”という感情を取り戻し、一時的にFC東京の全体練習から離れることにしました。マイナスに考えていたわけではなく”全てを一新したい”という前向きな思いからでした。
そんな時に助けてくれたのは「僕を雇ってもらえないですか?」と相談した焼肉屋を経営する中学の先輩の存在。自らのツテで元アメリカンフットボール日本代表選手である川口正史氏が経営するジムを紹介してくれたのでした。ここで研究されていたのは”外国人が持つ爆発力をどうしたら日本人の体型で発揮できるのか”というもの。この考え方に権田修一選手も共感し、ジムに通い始めると練習試合に復帰できるまでに回復しました。
休息に入り、3ヶ月後のことでしたが、いくら体は元に戻ってもメンタルまで戻ったわけではありませんでした。慣れ親しんだ風景すら見ることが辛くなり、自分を育ててくれたFC東京のクラブを離れる苦渋の決断を下した権田修一選手。この時に手助けをしたのが、ブラジルW杯で日本代表として共に過ごした本田圭佑氏でした。
ACミランでプレーする本田圭佑氏のマネージメント会社は、オランダ3部リーグのSVホルンの経営に乗り出していました。そのつながりで万全とは程遠い状態であることを知りながら「ゴンちゃんの力を貸して欲しい。今までの経験を若い選手に伝えてほしい」と声をかけたのでした。当時のホルンのレベルはJ2からJ3相当。しかし”欧州でプレーをしてみたい”という願望があり、環境を変えたかった権田修一選手にとって絶好の機会でした。
海外に行き良い意味で割り切ることができたそうです。「日本では全てが用意されている環境の中で自惚れていた。”諦めるしかない環境”に身を置いたことで自分になかった余裕を持つことに繋がった」と話した権田修一選手。ホルンでプレーしたのは1シーズンのみですが、サガン鳥栖でJリーグ復帰することができました。
その後、ポルトガル1部のポルティモネンセに移籍。清水エスパルスに戻るとコロナ禍を経験し、落ち込む選手たちと積極的にコミュニケーションを取るようにしました。自身が経験した心の病を他の選手に味わってほしくなかったのです。「心が閉ざされてしまうと健康な時に感じられるささやかな幸せが見えなくなってしまう。でもちょっとした喜びを見出すことで心の扉が開くこともあります。僕自身、息子の寝顔によって救われた経験もありますから」と話した権田修一選手。この思いは日本代表のチームに対しても同じでした。
コロナ禍で出場を予定していた選手を欠きながらも経験が浅い選手で大事な一戦を戦う機会が多くありましたが、権田修一選手の心配りがチームを救いました。さまざまな経験で強いメンタルを得た権田修一選手の存在。チームのピンチもピンチと感じさせない安心感を与え、日本代表では欠かすことができない存在となったのです。
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