”メンタリティーの強さ”で挑み続ける侍、鎌田大地選手
目次
スキルよりも”人としての姿勢”
愛媛県出身の鎌田大地選手。父も大阪体育大学のサッカー部に所属し、ボランチとしてプレーしていました。そんな父から「大事なものは”人としての姿勢”の方だ」と厳しく育てられたそうです。大雨の後のグラウンドでトンボ掛けをしていて愚痴った事を厳しく叱られたこともありました。
また6年生でキャプテンを務めた際にも仲間に対してきつい言い方をしたり、すぐ諦める姿に「もっとちゃんとやれ」と厳しく諭されたと言います。父の厳しい教えもあり徐々に頭角を現し、U13のJリーグ選抜に選ばれ韓国戦に出場。中学生になると大阪の岸和田市に住む祖父母の家に住み、そこから通えるガンバ大阪ジュニアユースに入りました。
しかし中学3年生になっても守備やハードワーク不足と判断され、叶わなかったユース昇格。高校は、父と監督が大学時代の先輩後輩だった縁で京都の東山高等学校に進学を決めました。初めは寮生活を送っていましたが、高校2年生の時に愛媛から兵庫への転勤が決まった父と2人で暮らすことになりました。
自宅のある尼崎市から京都の学校まで片道約2時間掛かるため、始発電車で通学。厳しかった父とは対照的に母は、リフティングなどの練習に付き合ったり何でも自由にチャレンジさせました。離れて暮らすようになっても包み込むようにサポートし、日頃の愚痴を聞くなど精神面で支えたそうです。
両親の献身的なサポートを受け、3年生で主将を務めると高円宮杯プレミアリーグウエストでチーム最下位ながら10得点を挙げ、得点ランキング4位を記録。この功績で5つのJクラブからオファーを受け、サガン鳥栖でプロサッカー選手人生がスタートしました。
中学生から地元を離れサッカーに励んだことで鍛えられたメンタルと父から教えられた”人としての姿勢”を心に刻み、一流アスリートへと成長したのです。
ヨーロッパリーグ優勝へ大貢献
サガン鳥栖に入団後、5月にはJ1デビューを果たした鎌田大地選手。デビュー戦で貴重な同点ゴールを決め、初得点を記録しました。2年後にはドイツのブンデスリーガに挑戦することを発表。しかし移籍したアイントラハト・フランクフルトでは、なかなか出場機会を得られず実践経験を求め、ベルギー1無リーグ・シント=トロイデンVVへのレンタル移籍を決意しました。
7試合目で移籍後初得点を挙げ、このシーズン二桁得点を達成。大きな手形えを掴んだ経験を得てフランクフルトに復帰しました。2019年のUEFAヨーロッパリーグでは強豪アーセナル相手に2ゴールを挙げ、次の試合でもゴールし決勝トーナメント進出に貢献。決勝トーナメントでも自身初そしてクラブ史上初となるハットトリックを達成しました。
シーズン通して得点を重ね、公式戦二桁得点を記録した実りある復帰年。そして2021年のUEFAヨーロッパリーグでも準決勝バルセロナ戦での決勝ゴールを皮切りに、PK戦までもつれ込んだ決勝のレンジャーズ戦では、3人目のキッカーとして見事に成功。
チームを優勝に導き、クラブとして42年ぶりとなるヨーロッパリーグ優勝に大きく貢献した鎌田大地選手。世界のビッククラブに所属し、チームを優勝に導くような選手に成長したのです。
”自分の強みはメンタル”というメンタリティーの強さ
攻撃のタクトをふるい”王様”と称されるポジションでフリーの相手を動かすことも上手い選手だと評価されている鎌田大地選手。自身で決めきるシュートの精度も魅力です。ベルギーのシント=トロイデンで経験を積んで得たもので一番大きなものは”動じない、焦らない”という落ち着きです。
どれだけのスキルがあってもメンタルの強さが伴わないとどのスポーツであっても力を発揮することはできません。しかし鎌田大地選手本人は、周りからの評価に対して「僕自身は何も変わっていない。むしろ僕に対する周りの見方が変わっただけ」と冷静に分析。異国の地であっても”全く動じない”そんなタイプだそうです。
そして「自分の強みというのはメンタル。(足元の技術がある)上手いとかそっちに見られがちですけどサッカー選手としての一番の強みはそこだと思っています」と話した鎌田大地選手。現在184センチの長身ですが、中学入学時には140センチほどの背丈しかありませんでした。
3年生で一気に身長が伸びたため体のバランスが安定せず、スピードを意識して走れずに「足が遅い」「走れない選手」だと評価されるのが悔しかったそうです。そのため自ら重りをつけてとにかく走りまくったと言います。その成果もありプロになってからの評価は”よく走る選手”。フランクフルトのグラスナー監督も鎌田大地選手に対して「ダイチは、ほぼ全ての試合で12キロも走っている」と褒め称えました。
高校時代には”メンタルに課題がある”と繰り返し言われた鎌田大地選手。独特のテンポ感で優雅にプレーすることから”気持ちの感じられない選手”と見られ「他の人ならすごく評価されても僕がすごいことをしてもマイナスに見られがちだった。周りに理解されないことばかりの人生だった」と歯痒く感じた思いも話しました。
そんな鎌田大地選手が、メンタルが試されたのはUEFAヨーロッパリーグのPK戦にまでもつれ込んだ決勝戦。グラスナー監督は、選手たちの希望と覚悟を個別に聞いた上でキッカーの順番を決めました。3番目を任せたいという意志を聞くと「俺蹴りますよ」と即答。結果5番目のキッカーが決め掴んだ優勝のタイトルを掴んだのでした。
実は、6番目に決まっていた長谷部誠選手と鎌田大地選手どちらに3番目を任せるか監督は悩んでいたそうです。ブンデスリーガで決めたゴールが全て格上チームからという鎌田大地選手。単に即答したからだけではなく、いかに劣勢の状況と強敵相手にゴールを決めてきた選手かを知る監督だからこそ鎌田大地選手に勝負がかかる3番目のキッカーを任せたのでした。
「ただ練習の方法や辛い経験、自分が積み重ねてきたものには自信があります」と自身の勝負強さを話した鎌田大地選手。UEFAチャンピオンズリーグのグループステージ最終節でもメンタルの強さが際立ちました。PKを獲得し成功すれば同点に追いつくという場面でキッカーを務め見事に成功。実はこの時、蹴る前にボールをセットする鎌田大地選手に対して相手のサポーターからレーザーポインターの光を顔に当てられていました。
しかしこの照射を受けても動揺することなく、不敵な笑みを浮かべ見事に決めたPK。日本人初となるチャンピオンズリーグ3試合連続ゴールの記録を達成したのです。
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