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日本人未踏の世界陸上連覇へ、北口榛花選手のメンタル

アスリートの望む結果にメンタル面でサポートするスポーツメンタルコーチの鈴木颯人です。世界選手権の陸上女子フィールド種目で初めてとなる金メダルを獲得した北口榛花選手。カステラや大福のような甘い食べ物が大好きで飛び跳ねて喜ぶ明るさと笑顔がトレードマークです。幼少期からスポーツ万能少女として注目され、勉学にも励み文武両道を貫いてきました。

179センチの長身で運動万能として知られてきた彼女に向けられた期待感とプレッシャーは、計り知れないほどのもの。それでも”自分は最終的に強い”という心で、重要な場面で実力を発揮させるメンタル強さを持っています。今回は、北口榛花選手についてスポーツメンタルコーチとしての視点でお話し出来ればと思います。

スポーツメンタルコーチ

目次

  • 陸上以外での”2刀流、全国2連覇”の運動能力

  • ポジティブな挑戦心で誕生した”やり投げの女王”

  • ”誰もやっていないことを自分で選んでやりました”という覚悟

 

陸上以外での”2刀流、全国2連覇”の運動能力

北海道出身の北口榛花選手。彼女の名前”はるか”は、アートホテル旭川でパティシエとして製菓料理長を務めていた父の幸平さんが、思いを込めて付けたものです。”はるか”の読みに合う漢字としてお菓子作りに欠かせないヘーゼルナッツを指す”榛(ハシバミ)”という字と花という字を書き、”榛花”になりました。

 

2019年に日本記録となる快挙を達成した際には、名前の由来ともなったヘーゼルナッツのケーキでお祝い。今でも帰省する際には、甘い食べ物が大好きな北口榛花選手のためにシュークリームやマカロンをたくさん用意してくれるそうで「どれもみんな美味しいんです」と話していました。

 

そんなパティシエの幸平さんは、182センチの長身で学生時代にバスケットボールをしていた元アスリートです。母の規子さんも172センチの長身で実業団でバスケットボール強豪の共同石油(現在のENEOSサンフラワーズ)に所属していた元アスリートです。

 

北口榛花選手自身も3ヶ月だけですが、ミニバスケットボールをしていた経験があります。今でもプライベートで女子バスケットボールWリーグの観戦に出掛けるほどの大ファンです。中学の頃からのルーティーンとなっているのが、母が所属したENEOSサンフラワーズのタオルを必ず試合で使うことだそうです。

 

北口榛花選手のアスリート人生のスタートは、3歳の時に水泳をはじめたこと。夫婦共に娘にバスケットボールをさせたいと考え、体力作りのために水泳を習わせました。しかし当の本人は、小学生になるとバドミントンに夢中になって懸命に励みました。元アスリート夫婦の運動神経の良さを受け継いだ北口榛花選手は、バドミントンで全国制覇を達成します。

 

父の幸平さんも北口榛花選手の練習相手になるため、バドミントンに打ち込んだ時期もあったそうです。中学に入るとバドミントンに加え、2刀流アスリートとして水泳にも打ち込みました。結果、競泳で全国大会へ出場。高校は、地元の北海道旭川東高等学校に進学しました。進学校でもあるこの学校の偏差値は66。成績も万能な北口榛花選手は、スポーツ推薦ではなく自力で合格しスポーツと学業の文武両道を貫いたのです。
 

テニスのロジャー・フェデラーと似たように、幼少期から様々な競技に触れてきた経験がある北口さん。アスリートとして重要なのは経験年数ではなく、経験値といえます。特に、槍投げという競技は投げる動作です。陸上競技として求められる身体能力だけでなく、投げの技術をバトミントンで得てきたことがわかります。アスリートとしてのキャリアはどのように決まるか?未来は誰にもわかりません。どの道が自分に相応しいのか?経験してみることで見えてくるものがあるのです。

 

ポジティブな挑戦心で誕生した”やり投げの女王”

中学時代のバドミントン部の先輩が顧問の先生に話したことがキッカケで陸上を始めた北口榛花選手。運動神経の良さなどを聞き、クラブ顧問である松橋昌巳コーチから正式に勧誘されました。

 

179センチの恵まれた体格で他にも多くの部活動から勧誘を受けましたが、それでも新しい競技を始めるのはとても勇気が必要なことでした。しかし「他の競技でも一花咲かせたい」というポジティブな挑戦心と強いメンタルを持って陸上を始めることを決意しました。

 

高校でも水泳を掛け持ちし、1年生の時に競泳種目でインターハイへ出場。陸上では砲丸投げと円盤投げをしていた北口榛花選手でしたが、長身と身体能力と肩の強さや柔軟性を見込んだ松橋昌巳コーチがやり投げを勧めました。

 

陸上競技1本に専念するとやり投げを始めてわずか2ヶ月で北海道を制覇します。2年生の時に全国高校総体優勝を果たしました。3年生の時にも全国制覇も達成しました。2年連続となる全国優勝を達成した北口榛花選手は、オリンピックの代表選手候補と期待される”ダイヤモンドアスリート”に認定されました。

 

「やり投げなら世界一になれる」と自信を持てたことで専門種目とすることを決意しました。コロンビアで行われた世界ユースでは陸上競技選手権大会で女子主将を務め、女子やり投げで金メダルを獲得しました。

 

大学で上京し、日本大学スポーツ科学部競技スポーツ学科へ進学。入学して間もなく行われたゴールデングランプリでは、日本歴代2位となる記録を残しました。「他の競技でも一花咲かせたい」というポジティブな挑戦心が、”やり投げの女王”を誕生させたのです。
 

アスリートとしてここまでトントン拍子で上手くケースも珍しいものです。しかし、北口選手が活躍できる背景には自分で考え行動できるメンタルがあると考えることができます。特に、多感の幼少期、多くの人に勧誘を受けると少しは舞い上がるものです。しかし、自分の中で確固とした信念があったのでしょう。北口選手が進みたいと思っている道を迷いなく進んでいることを見習う何かがあるのだと思います。

 

”誰もやっていないことを自分で選んでやりました”という覚悟

右肘靭帯を損傷する大きな怪我を負いながらも持ち前のメンタル強さで復活した北口榛花選手。大学2年生で出場した日本学生陸上競技対校選手権大会では、大会新記録を出して優勝しました。

 

しかし指導を受けていたコーチが離職したことにより、やり投げ専門の指導者が不在となった時期がありました。足踏みする時間の中で自分の実力をさらに伸ばすために選んだのは、海外コーチから指導を受けることでした。

 

フィンランドで行われたやり投げの国際大会でチェコのジュニアコーチをしていたデイビット・セケラックコーチの指導方法に惹かれたのです。不慣れな英語でありながらも懸命にメールを送ったことで熱意が伝わり、コーチを引き受けてもらえることになりました。

 

1ヶ月間という期間つきで単身チェコに渡り、デイビット・セケラックコーチの指導を受けることができました。その後も指導を仰ぐためにチェコ語の勉強まで始めた北口榛花選手。彼からの指導が身を結び、大学4年生で出場した木南道孝記念陸上競技大会では、日本新記録更新とアジア歴代5位となる記録で優勝を決めました。

 

日本選手権でも初優勝を飾り、数多くの新記録を塗り替えていくしていく北口榛花選手。初めの頃は、指導を受けるのみだったデイビット・セケラックコーチとの関係もお互いの意見を話し合えるほど信頼関係の強いものに変化していきました。

 

これは、北口榛花選手が”心から強くなりたい”という熱量が上がってきた証拠とも言えます。彼女の陸上人生においてチェコに渡ったことが、大きな財産となったことはいうまでもありません。

 

自分で望み、選んで異国の地に修行に出たものの時差や食生活、友人がいない孤独感などの辛い思いもたくさん経験しました。しかし北口榛花選手の強いメンタルと持ち前の明るさや笑顔で乗り越えました。チェコでお世話になった人が異国の地までも応援に来るほど良い関係を築けました。

 

そんななかで金メダルを掴めたことの嬉しさ、確固たる自信を得ることも出来ました。「誰もやっていないことを自分で選んでやりましたし、誰もできなかった結果にたどり着けて嬉しい」と話した北口榛花選手。自らの強い意志とポジティブな行動で練習拠点をチェコに移し、日本人やり投げ選手として誰もやったことがないことを実践したのです。

 

今回は、北口榛花選手についてお話しました。元アスリート夫婦の両親のDNAを受け継ぎ、様々な競技をこなしてきました。陸上のやり投げという競技で大きな記録を達成し、誰も達成したことのない前人未到の連覇へと歩んでいきます。アスリートとして何が正解なのか?自分が突き進みたいと思える道を北口選手の活躍から学べることに感謝です。

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【このコラムの著者】

プロスポーツメンタルコーチ/一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
慶應義塾大学健康情報コンソーシアム 幹事会員
メンタルトレーニング推進議員連盟 所属
代表理事 鈴木颯人

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

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