ゴルフで「刻み」を選んで失敗するのはなぜ?メンタル弱さではなく「損失回避性」の罠
パー5のセカンド、
届く距離なのになぜか刻んでしまう
ゴルフをしていると、
こんな場面に心当たりはないでしょうか。
本来なら、
フェアウェイウッドでグリーンを狙える距離。
練習場では何度も打ってきた得意なクラブ。
それでも、
「ここでミスしたら一気にスコアを崩すかもしれない」
「刻んでおけば大怪我はない」
そう考えて、
無難にアイアンで刻む選択をする。
しかし結果は、
中途半端な距離が残り、
寄せきれずにボギー。
このとき多くの人は、
自分を責めます。
「自分は勝負弱い」
「メンタルが弱いから逃げたんだ」と。
けれど実は、
この行動は脳科学・心理学的に見れば、
非常に自然な反応なのです。
■人間は「得」よりも「損」に敏感な生き物
行動経済学に「プロスペクト理論(損失回避性)」という有名な考え方があります。
人は「得をする喜び」よりも、
「損をする痛み」を約2倍?2.5倍も強く感じるという性質です。
ゴルフの場面で言えば、
脳内ではこんな計算が無意識に行われています。
プラスよりもマイナスのインパクトの方が、
脳には強烈に響くのです。
だから脳は生存本能として、
「成功の可能性」ではなく、
「失敗を避ける選択」を最優先で命令します。
これが、
「刻み」を選んでしまうメカニズムです。
「失敗したくない」が体を固くする
問題はここから。
戦略的に「刻む」という選択自体が悪いわけではありません。
しかし、
「恐怖(損をしたくない)」という感情に支配されて選んだ刻みは、
パフォーマンスを劇的に下げます。
脳が「失敗を避けろ!」と警報を鳴らしている状態では、
身体は無意識に萎縮します。
注意は「スムーズなスイング」ではなく、
「ミスしないこと」「当てに行くこと」に向いてしまう。
結果として、
安全策を選んだはずなのに、
スイングが緩んでダフったり、
引っ掛けたりする。
これが
「メンタルで自滅する」の正体です。
メンタルは「勇気」ではなく「理解」
このメカニズムを知ると、
一つ分かることがあります。
失敗したくない気持ちは、
あなたの弱さではありません。
人間の脳が正常に機能している証拠です。
大切なのは、
その心理を根性で消そうとすることではなく、
「あ、今、自分の脳は『損失』を過剰に怖がっているな」
と、客観的に気づけるかどうか。
気づけた瞬間、脳の暴走は止まり、
選択権はあなたの手に戻ってきます。
ゴルフで言えば、
刻むか、狙うか。
どちらが正解かではなく、
「自分は何を恐れて、この選択をしようとしているのか」
を正しく理解すること。
メンタルを強くするとは、
恐怖を感じないように勇気を振り絞ることではありません。
自分の脳や心の動きを、
正しく「理解」し、
使いこなす技術のことです。
その「正しい理解」があるだけで、
あなたのプレーの質は、静かに、しかし劇的に変わっていきます。
【このコラムの著者】
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