金メダリスト!ネイサン・チェン選手その強さの秘密
フィギュアスケートは、日本でも多くの人を魅了するスポーツです。
2022年、北京オリンピックでは、羽生結弦選手、宇野昌磨選手、鍵山優馬選手を抑え、世界新記録となる高得点をマークして金メダルを獲得したネイサン・チェン選手。史上初となる5回の4回転ジャンプを完璧に成功させたのはとても見事でした。
今回は、世界選手権を3連覇し”アメリカの至宝”と称されるネイサン・チェン選手のその強さの秘密にスポットを当ててお話していきましょう。
目次
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大家族のネイサン・チェン選手
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ネイサン・チェン選手メンタルの強さ
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いつかは若いスケーターを助けたい
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今後のネイサン・チェン選手への期待
大家族のネイサン・チェン選手
両親は中国出身です。父は留学生としてアメリカに渡り、40歳を過ぎてユタ州立大学在学中に薬学の博士号を取得した努力家。母も医療系、特に薬学専門の通訳として仕事の関係でアメリカ国籍を取得して夫婦共に現地で暮らしていました。
そのためネイサン・チェン選手はアメリカ国籍であり、出生地もユタ州ソルト・レイク・シティです。姉、兄が2人ずついる5人兄弟の末っ子として1999年5月5日に生まれました。
家族の会話は英語だったので母国語は英語、中国語は少し理解できる程度で現在勉強中だそうです。フィギュアスケートをはじめ、バレエやピアノ、体操、アイスホッケーなど多くの習い事をしてきたネイサン・チェン選手は、どの習い事もすぐにマスターし、ピアノでは入賞するほどの奏者でした。
姉2人はフィギュアスケート、兄2人はアイスホッケーの経験者だそうで兄弟も皆スポーツ万能。まだ幼いながらもソルト・レイクオリンピックを見てフィギュアスケートに魅了されているのを見た母が、ネイサン・チェン選手に短期レッスンを受けさせてみました。
するとまず最初の「両足で立ちましょう」の課題をすぐにこなした姿に驚き、3歳には専属のコーチをつけたそうです。ピアノの演奏経験で培ったリズム感、そして10代半ばまで続けていた体操の経験で身につけた空間認識能力と体幹。これがブレない軸、ジャンプやスピンといった技術と人を惹きつける独特の表現力を持つネイサン・チェン選手のスケートパフォーマンスに繋がったのです。
子供が育つ環境というのとても大切な要素です。どんな環境で育ってきたかを調べるのも私が多くのアスリートを研究する際に重要視している情報の1つでもあります。
ネイサン・チェン選手のメンタルの強さ
トウループ、サルコウ、ループ、フリッツ、ルッツと5種類の4回転ジャンプを飛ぶことができるネイサン・チェン選手。どのジャンプも非常に高い得点がつくほどのレベルで跳ぶことができます。そして体調に合わせて自由に構成を変えることができる柔軟性が、ネイサン・チェン選手最大の強みです。
4年前の平昌オリンピックでも“4回転ジャンプの申し子“と称されアメリカのエースとして金メダルの期待がかかっていた18歳のネイサン・チェン選手。しかしショートプログラムでは、ジャンプでのミスを連発しまさかの17位でスタート、フリーでは良い演技ができたものの5位でメダルには、届かなかったのです。
そして4年前の悪夢から北京に望んだ22歳のネイサン・チェン選手。「勝つために来た、との考えをやめた」と話していました。北京での第一戦は団体戦男子ショートプログラム。完璧な演技でアメリカの銀メダルに貢献。迎えた個人ショートプログラムでも、素晴らしい演技で首位発進、ショートでも113.97点と世界新記録をマークし見事悲願の金メダルを獲得したのです。
「たくさんの人にお世話になった」と話すネイサン・チェン選手。コーチ、振付師、メンタルトレーナーに頼ったことで勝利に対する考え方に変化があったそうです。そして人生最大のイベントである北京オリンピックの会場へ向かうバスの窓から通勤途中の人たちを見て「勝っても負けても世界は回り続けているんだな」とふと感じたと言います。
「そこで何が大切かを学んだ。表彰台を狙うことよりも、戦う機会を与えられたことや他のスケーターへ感謝や敬意を持つことを優先させた」「4年間で学んだことは、未来を見過ぎないこと。今を大切にするんです」と優勝後のインタビューで語ったネイサン・チェン選手はまだ22歳です。4年後のミラノオリンピックでの活躍も期待してしまいますが、本人は今後も勝つことよりも周りへの感謝や今を大切にするのだと思います。
こういった感謝の気持ちを徹底的に表現出来る選手はそうそういません。もちろん、言葉に出して話す選手もいますが心の底から発する感謝なのかどうかは一目瞭然です。サポートする人を一人一人声に出したことで、彼の感謝の気持ちは本物と言えるでしょう。
いつかは若いスケーターを助けたい
ネイサン・チェン選手は2018年からアメリカの名門であるイェール大学に進学しています。イェール大学は、世界大学ランキングにてトップ10に入っている大学です。専攻して学んでいるのは、データサイエンスや統計学。そして将来的には、医大への進学も視野に入れているそうです。
医療系の通訳を仕事とする母の影響、コロナ禍で思うように練習できなかった自身の経験もあり”ゆくゆくは医者になりたい”と話しています。しかし、スケートと学業の文武両道はあまりにもハードです。そんな中でも試合やアイスショーの合間に勉強する姿が目撃されるネイサン・チェン選手。さらにコロナ禍で氷上練習ができなかった期間には指導者としてコーチの資格を取得しました。
世界王者でありながら、いつも謙虚で他人を尊重するネイサン・チェン選手の人格は、たくさんの人そして同じく世界王者として君臨する羽生結弦選手からも賞賛されています。そんなネイサン・チェン選手が「彼がいなければ私が今どうなっていたか分からない」と話すのがマイケル・ワイス氏です。
将来有望な若者に奨学金援助をするために”マイケル・ワイス財団”を設立。10年間で約7万5,000ドル、日本円にして8,69万1,000円をネイサン・チェン選手に援助してきました。「いつかはマイケル・ワイスがしてくれたように、自分も若いスケーターを助けたい」と話すネイサン・チェン選手。忙しい合間の中でコーチの資格を取ったのもマイケル・ワイス氏への恩返しはもちろん、将来エース候補となる選手の活躍を応援する熱い思いがあるのでしょう。
こういった自分の結果だけでなく、長い目で競技に対して貢献しようとする気持ちがあることはメンタル面においてとても大事なことです。一人では出来ない競技だからこそ、後任がしっかりと育成されることで競技人口を増やしていく取り組みは世界チャンピオンでなくても心がけていきたい考え方の一つです。
今後のネイサン・チェン選手への期待
ネイサン・チェン選手はオリンピック大舞台の直前にも”表彰台を狙うことよりも、戦う機会を与えられたことや他のスケーターへ感謝や敬意を持つこと”そして”未来を見過ぎないこと。今を大切にする”と話しました。
今後についても「自分の時間の大半はスケートに費やしますが、学ぶべきことがまだたくさんあります。また忙しくなるでしょうし授業の合間に練習をやることになるでしょう。」と、まず復学することの大切さを話しました。そして「過去14年間で学んだのは、スケートだけではなく自分と向き合って過ごす時間も大切だと言うこと」と、スケート以外の時間も人生において重要視しているようです。
また「友人や家族と一緒に過ごす、ギターを弾く、ユーチューブで動画を見たり。本業には関係ない楽しめることを見つけるようにしています」とも話したネイサン・チェン選手。きっと何かを楽しめるということが、氷上で最大限の力を発揮するための活力になっているのだと思います。
今回は、その人柄で様々な人から賞賛されているネイサン・チェン選手の強さの秘密にスポットを当ててお話ししてきました。
ここで私が彼の活躍を通じて皆さんに是非とも真似して欲しいことが一つあります。それは、どんなスポーツにおいても、”金メダルを目標”にして欲しくないのです。金メダルはあくまで通過点です。何かしらの目的を達成する上での手段でしかありません。
この点を理解しないと、金メダルと取った後に不幸しか待っていません。なぜならば、人生最大の目標を達成してしまうことはそれ以上の目標を見つけることが困難になるからです。金メダルを取ることは手段でしかありません。
金メダルを取った後、どのような人生を歩きたいのか?彼の活躍とその過程を通じて、是非とも競技を続ける真の目的をしっかりと見据えて欲しいなと思っています。
参照元
https://the-ans.jp/beijing-olympics-2022/225590/
https://search.yahoo.co.jp/amp/s/www.vogue.co.jp/celebrity/article/nathan-chen-men-figure-skating-gold-medal-beijing-olympics-interview/amp%3Fusqp%3Dmq331AQIKAGwASCAAgM%253D
https://search.yahoo.co.jp/amp/s/olympics.com/ja/featured-news
https://nonno.hpplus.jp/article/82901/03/
【このコラムの著者】