”問題焦点型と情動焦点型”、2種類のコーピングでのメンタルケア
目次
”メンタルケアの一環”であるコーピング
英語で直訳すると対処する、または処理するという意味を持つコーピング。ストレスに対して意図的に対処するメンタル的なセルフケアの一つです。ストレスコーピングと称されるこの方法のメリットは、ストレスを上手く発散したりイライラしてしまう感情を緩和すること。
ストレスの原因となる主なものは、ストレッサーと称される”外部から受ける刺激”です。まず騒音・温度などによる物理的なストレス。次に酸素・薬物による化学的ストレス、炎症・感染などによる生物的ストレスです。
そして最も現代人を悩ませていると言っても過言ではないのが、心理的社会的ストレス。人間関係や社会的なものそして将来に対しての不安などがこれに当たります。例えばアスリートにとっての心理的社会的ストレスは、怪我や身体的な不調、成績不振や将来への目に見えないものへの不安など様々なものがあります。
もちろんストレスの大小には個人差があり、ストレスをどのように捉えるかを表す”認知”によって状況が変わってきます。ストレスを感じた体や心の反応によっては、胃に穴が空いてしまう潰瘍などやうつなどの疾患が発症してしまうケースもあります。体と心いずれもバランスをしっかりと保つことが重要なのです。
”深くアプローできる”問題焦点型コーピングと情動焦点型コーピング
メンタルケアの一種として行う必要があるコーピング。メンタルヘルス用語として生まれながらも一般的に浸透する言葉となりました。ストレス理論の研究者で心理学者でもあったR・Sラザルス氏が、『個人と環境とが影響しあった結果、個人の資源を脅かすと判断された場合に個人が取る認知的行動』と定義したものです。
コーピングの種類は、大きく分けて3種類。問題焦点型コーピング、情動焦点型コーピング、ストレス解消型コーピングの3つの種類に分けられます。最後に挙げたストレス解消型コーピングは、特にストレスを感じていない人でも自然に行っている気軽にできる方法です。
買い物や運動などで気晴らしをしたり、マッサージやアロマなどのリラクゼーションでストレスを解消する方法。これに対して問題焦点型コーピングと情動焦点型コーピングは、よりストレスの原因に深くアプローチできるオススメの方法です。
まず1つ目の問題焦点型コーピングは、分かりやすくするために2つに分けられています。”問題焦点型”は、ストレスの原因から離れたり遠ざけるなど物理的・意図的にストレスを除外する方法。例えば、悩む人間関係から抜け出すために転職することなどがこれに当たります。
次に”社会的探索支援型”でストレスの原因を感じると周囲に相談や支援を求め、解消する方法。例えば、仕事の進行に対してストレスを感じたため上司に相談することなどがこれに当たります。
もう一方の情動焦点型コーピングは、ストレスの感じ方や考え方を意識的に変えて対処する方法。こちらも分かりやすくするために2つに分けられています。
”情報処理型”は、ストレスを受けた感情を誰かに話すことで感情の整理をする方法です。例えば、試合で良い成績が残せずストレスに押し潰されそうな感情をチームメイトに相談することがこれに当たります。
次に”認知的再評価型”でストレスに対する捉え方を変えることでストレスを軽減する方法。例えば新しい仕事を任され、責任を感じすぎるのではなく『期待されている』と感じることでストレスを軽減することなどがこれに当たります。ぜひマスターしてほしいのが、問題焦点型コーピングと情動焦点型コーピングなのです。
コーピング”2つの重要ポイント”
近年増加する労災や過労死を防ぐためにも重要となるコーピングでのメンタルケア。コーピングを実践するために2つの重要なポイントを抑えることを心掛けます。
まず1つ目に、”自分自身の現状を把握すること”。もちろん強いストレスを受けた状態で自分自身を客観的に見るのは難しいものです。そのため自己判断のみでなく家族や友人、チームメイトやドクターなどの第三者から客観的な意見をもらうのが理想的です。1日5分でも良いので自分を見つめ直す時間を作ることをオススメします。
もう1つは、”解決に向けた強い意志を持つこと”。コーピングを行う上で必要なことは、主体的に解決しようとする気持ちが大切なのです。ストレスの原因に直接アプローチするのが難しい場合や時間で解決しない場合もあります。
重要なのは、本人が変わろうとすること。自主的に解決に向けて行動する姿勢が大切なのです。
効果的に行うための”3つの実践方法”
より効果的に行うのが理想的なコーピング。実践方法は3つです。
まず最初に”コーピングリストの作成”。あらかじめストレスへの対策や解消方法をリスト化しておき、いざストレスを感じた時に実践する方法です。気晴らしになることや相談する友人などなるべくポジティブなものを書き出しておくことが理想的で、内容が多いほど効果が上がりやすいと言われています。
2つ目が”セルフモニタリング”。ストレスを感じるキッカケとなった出来事やストレスを感じたことで生じた体や心の変化、それに対して自信が行った行動などを書き出しておきます。ポイントは、パソコンやスマートフォンではなく紙に書くこと。自分の字で書くことで書き出した際の感情がよりリアルに受け止めることができます。
最後3つ目に”ストレス反応の結果を分析すること”です。コーピングリストを実践し、どれだけ解消できたかを記しておくことでどのストレスにどのコーピングリストが有効だったかを把握することができます。さらにストレスの度合いがわかるようになれば、対処すべきストレスの優先順位を決められるほど冷静にメンタルケアを行うことができるのです。