パフォーマンスアップへの近道、外的集中と内的集中の使い分け
目次
- 自分か自分以外かで判断する”外的集中と内的集中”
- 使い分けるべき”4種類の集中”
-
”集中力を高める”メンタルトレーニング
自分か自分以外で判断する”外的集中と内的集中”
感情をコントロールするために必要なのが集中力です。イギリスの研究者であるMoranによって「集中とは、ある状況下で重要なことに注意を向けるスキルである」と定義されました。
集中力は、”外的集中”と”内的集中”の2種類に分けられます。集中する対象が外側(外的)にあるのか内側(内的)にあるのかです。まず最初に外的集中についてお伝えします。
外的とは、自分の外にあるもの、自分以外のものを指しています。よって外的集中は、自分以外の対象に対して集中すること。
例を挙げると球技スポーツの場合には、ボールに集中したりすることです。一対一など相手がいる競技の場合には、相手に集中することが外的集中に当たります。
そしてもう一方が内的集中になります。内的とは、自分の内にあるもの、自分自身のことを指しています。内的集中は、自分自身に対して集中することになります。
例えば、理想的なプレーをしたり成功している自分をイメージすることなどが内的集中に当たります。簡単に言えば、自分に集中するのが内的集中、自分以外に集中するのが外的集中になります。集中力の種類を理解しておくことで仕事の種類やスポーツの競技によってどれが最適なのかを判断することができます。
使い分けるべき”4種類の集中”
外的集中と内的集中の2種類。さらに細かく分類すると双方で広い集中と狭い集中の4種類に和明けることができます。
人は、場合によって瞬時に4つの中から集中力を使い分けると言われています。まず”広い集中”とは、集中する対象の範囲を広くすること。例えばフィールド競技などでコート全体に対して集中したり、対戦相手全員の動きを対象とする時の集中です。
もう一方の”狭い集中”とは、集中する対象の範囲を狭くすること。例えば先ほどと同じフィールド競技などでコート全体ではなく、ボールや目の前でマッチアップしている相手の動きだけを見ている時の集中です。
これを踏まえて使い分けるべき4種類の集中があります。
1つ目が”外的で狭い集中”です。集中が自分の外側に向いている中でも集中の範囲が狭い状態。”何か1点を見て集中”している状態でさらに1点を見るにしても遠くのものを見る遠位、もしくは近くのものを見る近位にも分けることができます。
例えば、多くの人がいる中で(遠くまたは近くにいる)一人の人を見ている時。これが外的で狭い集中状態です。サッカーのフリーキックの際に蹴るボールだけを見ている時やアーチェリーで矢を放つ際に前にある的にだけを見ている集中などが、外的で狭い集中に当てはまります。
2つ目に”外的で広い集中”です。集中が外側を向いている中でも集中の範囲が広い状態。広範囲を見ている状態のことで先ほどと同じようにこちらも遠位、または近位によって遠くの広範囲か近くの広範囲に分けることができます。例えばスピーチを行う際に多くの人の前に立ち、(遠くまたは近くの)全体を見ている時。これが外的で広い集中に当てはまります。
3つ目が”内的で狭い集中”です。集中が内側を向いている中でも集中の対象を自分の中に持ち、対象の範囲が狭い状態。例えば、試合の前に自分の体やメンタルの状態に意識を向けている時などが、内的で狭い集中に当てはまります。
4つ目に”内的で広い集中”です。集中が内側を向いている中でも集中の対象を広げている状態。例えば試合の流れをイメージしたり、成功や勝利をイメージすることが内的で広い集中にあたります。同じスポーツの競技であっても本番の何日か前、もしくは直前にどの集中を行うかによってパフォーマンスにばらつきが現れることもあります。そのため事前に打ち合わせや練習の時から本番を想定してイメージトレーニングを行う必要があるのです。
興奮状態を操る集中方法
高くても低くても良いパフォーマンスができないため、バランスが難しい興奮状態になります。しかし、自由自在に操ることができればパフォーマンスアップへの近道となります。
トレーニングとして興奮状態を操る集中方法があります。まず”興奮状態を高めたい時の集中方法です。サイキングアップとも言われている方法は2つあります。口から息を吸い込んで口から短く息を吐き、激しく呼吸します。もう1つは、大声を出して叫ぶことです。これは多くのスポーツ選手が実践していることになります。
この2種類の方法には、脳から分泌されるドーパミンを放出させて興奮状態を高める効果があります。次に”興奮状態を下げたい時の集中方法”があります。
多くの人が頭を悩ませる状態なのでぜひ実践してほしいと思います。鼻から息を吸い込んで口から長く吐いて呼吸します。もう1つは、目を閉じて内的に目を閉じて”内的に狭く集中”します。緊張している時は、無意識に呼吸が短く早くなっています。意識的に長くゆっくりと呼吸し、内的に狭く集中することで強制的に興奮状態を下げることができるのです。
”集中力を高める”イメージトレーニング
理解しておきたいのは、人が緊張すると行う集中は”内的で狭い集中”の傾向にあると言われていることです。この状態に陥ってしまうと内的から外的に集中力を向けるのがとても困難となり、外的で広い集中ができなくなります。その結果、良く知られている通り”緊張すると周りが見えていない状態”となってしまうのです。
内的で狭い集中を行うと”失敗したらどうしよう”などとネガティブな考えになってしまい、心臓の鼓動が早く聞こえてしまうなど焦ってしまいメンタル的に良くないことです。緊張しやすい場面で必要なのは、内的から外的に転換するという意識が必要になります。
転換するためにオススメのトレーニング方法が”フォーカルポイントトレーニングになります。集中するための目標を意味するフォーカルポイント。目標となるものを何か一つ決めてそれを一定時間見つめる練習を行います。
目印の位置は遠い(遠位)方が良いとされています。このトレーニングを行うことで緊張しても集中力を維持できるようになります。そして目印の範囲を広くすると外的で広い集中のトレーニングにもなると言われているのです。
今回は、外的集中と内的集中についてお話しました。この他にもルーティーンやコーピングなどパフォーマンスを発揮できる近道となるような様々なメンタルトレーニングがあり、私自身もご紹介しています。手軽にできる簡単なものが多いのでぜひ実践してみることをオススメします。今後もアスリートの皆様にとって有益となる情報を発信し続けていきたいと思います。