頭脳で勝利へ導く女性戦略家、F1界の軍師ハンナ・シュミッツ氏
目次
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機械工学を駆使する頭脳明晰なF1界の軍師
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F1という世界で戦う女性戦略家
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ハンナ・シュミッツ氏が作る女性も活躍するF1界
機械工学を駆使する頭脳明晰なF1界の軍師
実際に戦うのはマシンを運転するF1ドライバーですが、頭脳と経験をフル活用し、舞台裏で戦術を考えチームに指示を行うのが戦略家ハンナ・シュミッツ氏。戦国時代で言えば軍師のようなもの。裏方でありながらドライバーが走るレースの結果を左右し、その命まで預かってると言っても過言ではないほど重要な役割を担います。
学生時代に、ケンブリッジ大学で学んだのは機械工学。2009年にインターンとしてレッドブルのチームに参加したのをきっかけに現在チームの主席戦略エンジニアという肩書きで活躍しています。レースの戦略責任者であるウィル・コート氏やストラテジーチームと共に舞台裏からドライバーたちを支えるパワフルで勇敢なキャリアウーマン。
出産し産休を終え、フルタイムでチームに戻ってきました。4時間もの時間をかけて通勤し、この仕事に情熱を注いでいます。統計モデリングや回帰分析、最適化などのデータ分析が特技である彼女は、数値解析のソフトウェアである”MATLAB”やVBAを使いこなす頭脳明晰なエンジニア。
その分析結果を頭の中で張り巡らせ、最適となるレース戦略を練ります。もちろん単に組み立てればいいというものではなく、黄色や赤旗、クラッシュやペナルティ、悪天候など予測可能な限り考慮して考えなくてはなりません。起こりうること全てを想定し様々なパターンの戦略を組み、チームやドライバーに提案します。ドライバーがレースに対して万全に望めるように送り出すのも戦略家の役割なのです。
F1という世界で戦う女性戦略家
F1は、馬術などと同じく基本的には男女の区別はないとされている数少ないスポーツです。それでも”まだまだ男社会”と言っても過言ではない世界でキャリアを積んできたハンナ・シュミッツ氏。レッドブルで過ごしてきた10年以上の長い期間は、決して平坦な道ではありませんでした。
ストラテジスト(戦略エンジニア)として成功するために絶対に欠かせないのが信頼関係ですが、ハンナ・シュミッツ氏にとって大きなハードルとなっていました。
「ストラテジストは、チーム内のたくさんの人たちに何をすべきか指示して自分の意思を聞いてもらう必要があります。そのために信頼関係を築く必要があるのですが、残念ながら女性であるがゆえ、簡単にはいきませんでした。今でこそ敬意を持って見てくれていますけれどもね」と話します。
信頼そして”敬意”を得るために彼女は、人一倍努力し多くの功績を積み重ねてきました。マックス・フェルスタッペン選手のタイトル獲得、2度に渡り赤旗が振られることとなった雨のなかのモナコGPでのペレス選手の優勝、戦略家として選手を表彰台へと導いた輝かしい功績。どのピット・プランもハンナ・シュミッツ氏だからこそ果たすことができました。
「戦略が功を奏してチェコ(ペレス選手)が優勝できたのは最大の収穫」と彼女を讃えたマックス・フェルスタッペン選手。戦略家という舞台裏の役割であるハンナ・シュミッツ氏もコンストラクターの代表として表彰台に上がりました。
「勝利への大きな手助けとなった報酬」と話したチーム代表であるクリスチャン・ホーナー氏。”働くお母さんの希望に”と報じられ、一気に彼女の名が世界に知れ渡るキッカケとなり、レッドブルでモータースポーツ・アドバイザーを勤めているヘルムート・マルコ氏も「勝利は主にハンナのおかげだ」と賞賛の言葉を贈りました。
表彰台に立った感想を「信じられないほど特別な瞬間でした。私のキャリアの頂点でしたね」と喜びを爆発させたハンナ・シュミッツ氏。初めての出産を終え仕事復帰したばかりで現場から離れた期間があることに不安を感じていたそうですが、”まだチームで良い仕事ができることを証明できた”とこの素晴らしい経験が彼女にとって大きな自信へとつながったのでした。
ハンナ・シュミッツ氏が作る女性も活躍するF1界
ピットインの回数なタイミング、使用するタイヤや交換のタイミング、アタックするタイミング、ペースを維持するタイミング、ドライバー同士の連携などの全てがデータに基づき決められます。レース当日には、自身もミーティングに参加するハンナ・シュミッツ氏。そこでは、ドライバーやレースエンジニアメンバー、チーム代表らと共にレースプランを検討するためのディスカッションを行います。
サーキットのピットウォールにいる際には、冷静でレースに勝つために対局的な判断をする役割を担い、本拠地にあるオペレーションルームにいる際には、ストラテジストが行った計算やシュミレーションによるデータなどをリアルタイムで現場に伝え戦略的判断を下す役割を担います。
かつては女性チーム代表でもあったというハンナ・シュミッツ氏。ドライバーの実力や運転センスなどももちろん必要ですが、モータースポーツはチームの全てが機能することによって初めて優勝できるものです。そのため男女関係なく、才能や経験により適材適所の役割を果たすことが重要となります。
そんななか”真のパフォーマンス差別化要因”となる才能とスキルを持つ女性の人材を活用することを目的とする組織として”アルピーヌ”がF1界で立ち上げられました。現在12%に満たない女性従業員を5年間で30%に増やすことを目指し”Rac(H)er”というプログラムを開始。このプログラムでは、女性が科学や工学の分野に進み、学ぶことを奨励しています。
ハンナ・シュミッツ氏もアルピーヌの一因です。レース面では”ドライバー・アカデミー”としてF1参戦を目指す若い女性カート選手も発掘しています。アルピーヌは現在”レース計画、テスト計画、体力トレーニング計画、さらにはメンタルトレーニングプログラムまで作成しました。
「全ての才能が開花できるように、スポーツと産業の双方で大きな変革が必要とされていることを認識している。」と話したのは、アルピーヌのローラン・ロッシCEO 。それぞれの専門分野で役割と責任をリードする女性たちが活躍するF1界の未来を見据えているそんな組織で先陣を切ってハンナ・シュミッツ氏は働く女性の代表として活躍し輝いているのです。
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【このコラムの著者】
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