育まれたのは”自由な感情”と”天才への集中力”、張本智和選手
目次
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”無敗で6連覇”を達成した少年時代
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最強夫婦が実践した”天才への子育て”
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”自由な感情”が育んだ強いメンタル
”無敗で6連覇”を達成した少年時代
宮崎県仙台市出身の張本智和選手。両親も共に中国四川出身の卓球選手でした。父は、男子ジュニア日本代表のコーチを務めたこともあります。母は、世界卓球選手権に出場した名選手。そんな両親を持ち、2歳の頃にはラケットを握っていた張本智和選手。卓球は生活のごく一部の環境で育ちました。
小学校1年生の時、全日本卓球協会が主催する小学生以下の卓球大会ホープス・カブ・バンビで優勝。驚くべきことにこの大会で無敗のまま6連覇の偉業を成し遂げています。父と妹と共に日本国籍を取得し、張から張本と言う苗字に変わった張本智和選手。小学校6年生の時、世界ジュニア選手権で日本最年少選手に選ばれましたが、結果的にパリ同時多発テロの影響で派遣中止となり出場はできませんでした。
しかし、将来オリンピックを目指す年少者のために設置されたJOCエリートアカデミーに入学しトレーニングを受け、出場した大会で有名選手たちを次々と破り190位だった世界ランキングもひと月で63位まで上がりました。東京オリンピックに向けた若手強化選手として平野美宇選手と共に選ばれた張本智和選手。世界ジュニア卓球選手権ではダブルスで銀メダル、団体とシングルスで金メダルを獲得しました。
世界ジュニアのシングルスでは、大会史上世界最年少となる13歳163日での優勝。両親譲りの天才的なボールタッチ、正確なバックハンドからなるプレースタイルと感情の表現が独特な強いメンタルを持つ張本智和選手は、全日本代表の倉嶋陽介監督からも「世界王者に育てなければならない選手」と将来性を認められているのです。
最強夫婦が実践した”天才への子育て”
史上最年少13歳で世界選手権ベスト8に入った張本智和選手。父は、中国の四川でプロの卓球選手として活躍した名コーチでもあります。始めた来日したきっかけは、アジア大会で優勝した小山氏の練習パートナーを務めることでした。カタールやイタリアでもプレーしたのち、来日経験の縁がきっかけで仙台ジュニアクラブの指導者を務めることになりました。
結婚し現役を引退後、マレーシアの女子代表監督も務めました。卓球界で名の通った夫婦には母国からのオファーもありましたが、日本での生活を決意します。当時まだ日本語も流暢に話せませんでしたが、日本の子供たちに卓球を教えるのが楽しかったことと長男の出産が決め手となりました。
4050gで大きかったという張本智和選手。生まれた直後から母に抱かれて仙台ジュニアクラブの練習場に来ていたそうです。そのため卓球が日常で育ち、音やリズム、雰囲気までも小さな体で吸収。よちよち歩きする頃には卓球のピンポン球に触れ、2歳になる頃にはラケットを握り両親とちょっとしたラリーまでできるようになっていたそうです。一通りの技術を習得するために2万と1000時間の時間がかかる卓球という競技。1日に6時間の練習を1年間360日すれば、10年で達成できる時間です。
小学生時代には、全日本選手権で6連覇、18歳以下の世界ジュニアを史上最年少となる13歳163日で快挙を成し遂げた張本智和選手。まさにこの2万と1000時間を達成したのだと思われていました。しかし「小学校卒業まで1日2時間以上の練習をしたことがなかった」と父は話します。卓球の”天才”を育て上げた子育て術をいろんな人から聞かれるそうです。
すると仙台ジュニアクラブの指導者として60人近くの子供たちを平等に指導しなければならなかった父は「ただ一つ”正しいフォームをしっかりと身につけるように”息子にも他の子供たちと同じように指導していただけ」だと言います。そして卓球の名選手だった母も「卓球よりも”勉強”を頑張るように息子に言い続けてきた」のだそうです。さらに夜の9時までだった仙台ジュニアクラブの練習にも「今日は、早く帰ってきてしっかり食事をとりゆっくり寝なさい」と途中で張本智和選手だけ先に帰るように連絡していたのです。
何よりも息子の体のこと、そして将来のことを考えていた母は「しっかりと勉強して東北大学へ進学してほしかった」と話しました。一方で”卓球は感覚のスポーツ”であることから「小さい頃から練習すればするほどその感覚が早く身につく。いろんな大会で優勝するようになり、もっと練習に時間をさくべきではないか」と考えたこともあったという父。
そんななか向上心が強かった張本智和選手は、小学校に入学すると自分の意思で学習塾に通い始めました。朝起きて30分かけて塾の宿題を仕上げてから学校に登校。授業を終えると一目散に帰宅し、学校の宿題を終えると仙台ジュニアクラブの練習場へ向かう日々を送りました。
そのため、宮城県で常に10番以内に入るほどの成績を維持。時間をしっかりと区切って、短い時間を有効に使う生活習慣を身につけてきたのです。「負けず嫌いなため、その短い時間のなかで卓球も勉強も一生懸命やった。その結果、集中力は他の子供たちより高められた」と息子の努力や懸命な性格について話した父。
まだ幼く、友達と遊びたい盛りの頃合いからしっかり将来へのビジョンを持った張本智和選手は、徐々にメンタルも鍛えられ文字通り”天才”へと成長していくのでした。
”自由な感情”が育んだ強いメンタル
国家的な強化プロジェクトで選手の育成をしてきた中国卓球界。地方のスポーツ専門学校に集められたエリートのなかでふるいにかけられた一部の優秀選手は、省の代表選手として超エリートとして指導を受けます。プロの選手として給料ももらえるそうです。8歳で本格的に卓球を始め、13歳でこの超エリートの一員となった父を持つ張本智和選手。
驚くことに母は、この超エリートへの父よりもさらに過酷な選考を勝ち抜いた才能の持ち主。北京に招集され中国代表の座を掴んだ名選手です。常人には想像もつかないような環境で育ったエリート夫婦は「子供であっても悔しさをあらわにすることができず、感情をぐっと抑えラケットを握っていた」と話します。
一方、試合に負けると人目もはばからず号泣するのでなだめるのが大変だったという張本智和選手。それがいいか悪いかではなく、息子を日本の環境に適応できるように育ててきたそうです。世界ジュニアや世界選手権で対戦する海外の選手たちは、年上で実力的にも張本智和選手より上でした。しかし、そんな選手たちにも怯まず、”勝ちたい”という強い気持ちでぶつかり、時にはその気迫で相手を飲み込んでしまうこともありました。
感情を抑えるよう育てられた両親が、”感情を自由に”と考えた息子の子育て方針。これが結果的に張本智和選手の強いメンタルを形成したのでした。「まだまだ課題はありますが、さらに高いレベルに飛び込んでいく気持ちの強さは、息子の卓球をさらに高めてくれるはず」と話す父は、息子のメンタルと卓球の才能を誰よりも信じているのです。
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