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”ポジティブな開き直り”でメンタルコントロール、早田ひな選手

「誰が日本代表の座を掴むのか」才能ある選手が凌ぎを削り合う日本卓球界で輝きを放っているのが、早田ひな選手。平野美優選手、伊藤美誠選手と共に”女子卓球黄金世代”と言われ、小柄な選手が多い中で166センチの長身で長い手足を活かしたダイナミックなプレースタイルが特徴的な選手です。華がある彼女に卓球ファンのみならず、多くの人が魅了されます。今回は、早田ひな選手についてお話します。

目次

  • ”大きな存在”によって開花した才能

  • ”ポジティブに捉えたリザーブ”から得たメンタル

  • ”負けを認める”開き直り方

”大きな存在”によって開花した才能

福岡県出身の早田ひな選手。ご両親は卓球未経験だそうですが、祖母が卓球の経験者だったことと先に卓球クラブに通っていた姉の影響で4歳の時に卓球と出会いました。

 

早田ひな姉妹が通った石田卓球クラブは、世界ジュニア選手権男子ダブルス初の金メダリストである岸川聖也氏を排出した名門として地元では有名なクラブ。卓球競技は、左利きにメリットが多い競技だと言われているため、元々右利きだった早田ひな選手も左利きプレーヤーとしてラケットを握るように訓練を受けました。すると、徐々に才能が開花していきます。

 

小学校2年生の時には、全日本卓球選手権大会・バンビの部(2年生以下)で全国大会出場を果たしました。この大会では、予選リーグを勝ち抜きながらも決勝トーナメントの1回戦で敗退。敗れたのは、のちに親友であり良きライバルとなる伊藤美誠選手だったことに縁を感じています。

 

小学校4年生で出場した全国大会・カブの部(4年生以下)ではベスト4。最終学年でも全国大会に出場し、ホープスの部(6年以下)では準優勝という記録を残しました。中学に上がっても1年生ですぐに全国大会出場。すると小学校時代は、後一歩届かなかった念願の優勝を飾ることができました。2年生でも全国大会で優勝し、見事に2連覇を成し遂げました。これが早田ひな選手にとって大きな転機となったと言っても過言ではありません。

 

のちに彼女を支える大きな存在となったのが、石田大輔コーチでした。元々早田ひな選手は、石田大輔コーチのご両親から指導を受けていました。しかし、中学2年生で全国制覇した彼女に「世界で戦える選手かもしれない」と強く感じた石田大輔コーチは、勤務していたスポーツ会社を退職。専属コーチとなって支えることを決意したのでした。

 

毎朝フルーツと野菜の特製ジュースを作るなど練習以外の面でもサポートし、食事のレパートリーも50以上もあるそうです。もちろん家族の存在も非常に大きなもの。遠征の時にも必ず持っていくのが、ひよこ柄の毛布というお茶目な一面を持っています。”ひな”という名前にちなんで6歳の時に母から買ってもらった大切なものだそうです。

 

中学2年生から急激に伸びた身長の影響で思うように卓球ができない時期もあった早田ひな選手が、トレーニングで心掛けることは”疲れない体づくり”。「スタミナが持たないのは食事に原因がある」と考えました。

 

5歳年上で自身も卓球経験がある姉が、妹の早田ひな選手をサポートするために取得した管理栄養士の資格でした。体重が増減しやすいと言う同じ体質も近い姉からのサポートは、最強に心強いものです。信頼できるコーチと家族。大きな存在からの支えが、早田ひな選手の卓球人生に良い影響を与えたのです。

 

”ポジティブに捉えたリザーブ”から得たメンタル

中学生で世界デビューも果たした早田ひな選手。高校1年目でインターハイ女子シングルスで優勝を飾るとワールドツアーでも初優勝を掴みました。2年目、3年目でも数多くの大会で活躍していきます。そして高校卒業後もその勢いがとまることはありませんでした。全日本選手権女子ダブルスで3連覇を果たし、シングルスでも伊藤美誠選手、石川佳純選手を破り初優勝を飾りました。

 

しかし、2021年の東京オリンピックではリザーブ選手として選手たちをサポートする側に徹することになるのです。日頃は”あまり闘志を剥き出しにすることはない”という早田ひな選手でも相当悔しい思いをしたと誰もが思いました。しかしながら「今まで味わったことのない感覚。13日間、毎日新鮮というかいろんな発見があった」と非常にポジティブに捉えていたのです。

 

早田ひな選手が感じていたのは、今まで選手生活を続けてきた自身の経験からの”応援の重要性”。大きな大会では今回、初めて応援する側の視点で卓球を見る機会となったのです。「ハラハラ、ドキドキして本当に心臓に悪いなと感じた」という早田ひな選手。選手と同じように強い緊張感を持って”本当に勝ってほしいと願う証拠”でした。

 

どんなスポーツであっても補欠の立場では、”選手として出場したかった本音”が強いため、心から応援できないこともあります。しかし”下を向くことなく、食事管理と地道な体幹トレーニングを続けること”を選手生活を通して大事にしてきた早田ひな選手。そして”普通なら心が折れそうな時でも自分が変わりたい”という思いや”自分なら変えられる”と常に諦めず、チャレンジするポジティブなメンタル強さを持っているのです。

 

”負けを認める”開き直り方

全日本選手権で女子史上4人目となる三冠などを成し遂げた早田ひな選手。張本智和選手との混合ダブルス、そして親友でもある伊藤美誠選手との女子ダブルスで優勝を決めました。”残る1種目も優勝してほしい”と多くの人が期待する三冠へのプレッシャーは半端なく大きなものでした。それでも持ち前の強いメンタルで決勝まで勝ち進んできた早田ひな選手。

 

しかし迎えた決勝では18歳の木原美悠選手の若さ溢れる勢いに押され、2セットを先取されてしまいました。こんな時に良く起こるのが、強者が負ける”番狂わせ”と呼ばれるジャイアント・キリング。劣勢の状況となったことで焦りもがき、本領発揮できないまま相手のペースで負けてしまうのです。

 

それでも早田ひな選手は、2セット先取された劣勢の状況から4セットを取り返しました。結果、セットカウント4対2で逆転優勝。見事に全日本選手権三冠の快挙を成し遂げたのです。

 

死闘を制した後のインタビューで「2セット失ったところで”もう負けた”と思いました。だからその後は1プレー1プレーを積み上げて、しっかり戦うことを考えました」と話した早田ひな選手。”負けた”と割り切ることで勝敗を気にせず、目の前の直近のプレーのみに集中することに成功したのです。

 

負けたと認めたのは、決して諦めたのではありません。頭のなかで負けを認めること=終了ではないのです。重要なのは、それまで劣勢の(悪い)流れを自分自身で完全に断ち切ること。一度気持ちをすっきりリセットすることで感情をコントロールできます。

 

流れを変えることさえできれば、何が起こるかわからないのが真剣勝負。もちろん負けたくない試合だからこそ”負け”を認めるのは、非常に辛く勇気が必要なことです。

 

早田ひな選手が持つのは、運動能力と卓球スキルそして選手生活で培ってきたメンタルだったのだと思います。そして、番狂わせを起こすことも逆に奇跡の逆転勝利を起こすこともアスリートのメンタル次第で可能になります。三冠達成後にプラスされた”負けを認める”開き直り方で見事にメンタルコントロールできた早田ひな選手。まさに日本を代表するアスリートの一人なのです。

 

今回は、早田ひな選手についてお話しました。選手生活で支えられてきた大きな存在。地道に重ねてきた鍛錬やポジティブさから得られた強いメンタルが彼女の強さの秘訣。これからも多くの大会で勝ち続け、ご活躍されることを願っております。

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【このコラムの著者】

プロスポーツメンタルコーチ/一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

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