メンタル安定のリラクゼーション、マスターしたい自律訓練法
目次
自律訓練法、”2つの効果”
1932年にドイツの精神医学者であるヨハネス・ハインリヒ・シュルツ教授によって定義されたのは、オートジェニックトレーニング法とも呼ばれる自律訓練法になります。オートは”自分”をそしてジェニックは”遺伝子”、直訳して”自分の遺伝子のトレーニング”を意味する言葉です。
自分の遺伝子がうまく発現させることができれば、自分らしいトレーニングができるという非常にポジティブな考え方のトレーニングです。精神科や心療内などの医療分野として近年では、教育や産業またスポーツの世界でも注目されています。”言葉とイメージ”によって自己コントロールしてバランスの崩れた自律神経を改善させるリラクゼーション法になります。心身の疲れに優れた即効性を発揮する自律訓練法によって期待できる効果は2つです。
まず1つ目に”生理的変化”。体温を上昇させ、血液量を増加させます。そして心拍数の減少、脳波のa波などの増加でリラックス効果も期待できます。
2つ目に”心理的変化”。不安や緊張感を減少させ、うつを予防する効果も期待できます。自己催眠法とも言われるこの方法で重要なのは、集中とリラクゼーションを両立させること。もちろん1、2日では少しハードルが高いですが、マスターする短期間で全身がリラックスできる画期的なものです。
初心者のうちには、ゆったりくつろげる場所で実践します。慣れてくると場所を選ぶ必要もなく、仕事の休憩時間や移動手段の待ち時間などでもできるようになります。日々アスリートのコンディションなどを記録し、”モニタリング”などと合わせて実践することで更にパフォーマンスアップが期待できるのです。
”姿勢と背景公式”から実践スタート
途中で集中力が途切れないようなるべく静かな場所で時計やベルトなど体を締め付けるものを外し、リラックスした状態で行いたいのが自律訓練法になります。
姿勢→背景公式→6つの公式(慣れるまでは、第2公式までで構いません)→消去動作が実戦の流れをご紹介します。
姿勢
まず初めに行うのは、”姿勢”です。椅子に座るか仰向けに寝ます。椅子の場合は、天井から頭を吊り下げられるように深く腰をかけ、背中を真っ直ぐ当て座ります。両手は膝の上、足は肩幅に開き、足の裏は床にピッタリとつけます。
寝る場合は、背中がべったりと床に着くように仰向けに寝ます。両手は脇の下にボールが1つ入るくらい、手のひらは床に向けても天井でもやりやすい方で構いません。両足は肩幅に軽く開きます。いずれの姿勢の場合も腰や背中、肩などに力が入らないようリラックスすることが重要になります。
背景公式
次に行うのは、”背景公式”です。体をリラックスさせ、ゆっくり深呼吸をして気持ちを落ち着けます。目を軽く閉じ『気持ちが落ち着いている』と心の中で数回唱えて心が落ち着けば、6つの公式に進んでいきます。
2つのポイントを押さえ”6つの公式”へ
1つにつき3分から5分程度で行う6つの公式。慣れるまで体の変化を感じなくても心配せず、時間が経てば次へ進んでいきます。第1を感じなくても3なら感じることができたなど個人差があるためです。公式を進める上で重要なポイントとなるのは、言葉(言語公式)とイメージ(受動的集中)の2つがあります。
言語公式
まず1つ目の言語公式とは、自己催眠に入りやすくするために一つの言葉に絞って使うことです。いつも同じ言葉を使用することによって暗示効果が高まります。例えば『体が重くなる』という言葉に決めたなら『体が重い』という言葉は使いません。語尾が少し違うだけでも暗示効果が弱まってしまうためです。
受動的集中
2つ目に受動的集中があります。『体が重くなる』など言語公式で決めた言葉を単に繰り返し唱えるだけでは、体の変化まで感じにくいのです。背景公式を行ったことでリラックスしやすい環境や集中できる状態は整っています。焦らずしっかりイメージし、体の部位の変化に注意を向けることで少しずつ感じる体作りができます。
6つの公式
第1公式
まず第1公式は四肢の重感として”手足が重たい”と唱え、イメージ。
手足の重さを体で感じることで余分な力が抜け、体の微細な感覚を意識できます。
第2公式
次に第2公式は四肢の温感として”手足が暖かい”と唱え、イメージ。
十分にリラックスすることで手足の温度が上がり、温かさを自然と感じることができます。
第3公式
続いて第3公式は心臓調整として”心臓が静かに打っている”と唱え、イメージ。
リラックスできた状態で心臓は静かに打っています。ただそのまま感じることでより深くリラックスできます。
第4公式
次の第4公式は呼吸調整として”楽に呼吸している”と唱え、イメージ。
リラックスした状態で楽に深く呼吸できています。ただそのまま感じることでさらに深くリラックスできます。
第5公式
続く第5公式は腹部温感として”お腹が温かい”と唱え、イメージ。
リラックスした状態でお腹が温まってきます。ただそのまま感じることでより深くリラックスできます。
第6公式
最後に第6公式は額涼感として”額が心地よく涼しい”と唱え、イメージ。
深くリラックスすることで手足や腹部が温まります。その逆に額には涼しい風を受けているような感覚。
そのまま感じることでさらに深くリラックスできるのです。
仕上げの”消去動作”、今後のメンタルトレーニングの課題
最後に行う消去動作になります。両手は、強く握ったり開いたりします。そして両手を組んで大きく伸びをします。首や肩は、よく回します。その他の体の部位もしっかりとほぐし、自己催眠状態からさめます。6つの公式全てを覚えるのは大変だという人は、第1、2公式のみでも十分なリラックス効果が得られるので無理する必要はありません。
第1、2公式の後に消去動作を行います。これを2回から3回行えば、手軽な自律訓練法の完成。1日5分から10分取り入れるだけでもリラックスした状態を保つことができます。また逆に週1回、第4公式まで20から30分ほど行うことで『穏やかな気持ち、安心している、快適、安定した気分だ』と感じた人が多いとスポーツ経験者による自律訓練法の実践アンケート調査で明らかになっています。
メンタルトレーニングにおいて最も重要なのは、アスリートのモチベーションを維持させることです。自律訓練法を含むメンタルトレーニングの問題点は、”効果が実感できなかった”と答えたアスリートのモチベーション意識を回復させることにあります。アスリートのパフォーマンスアップにとって優秀な指導者が必要であることはもちろんです。更に指導者が新しい知識やトレーニング法などを常にアップデートしていくことも今後の大きな課題なのです。
今回は、自律訓練法についてお話しました。マスターすることで達成感を感じ、更にリラックス効果の高いメンタルトレーニング法です。ぜひ1日5分から10分の短時間からの実践をオススメします。今後もアスリートや指導者の皆様にとってパフォーマンスアップへ効果的な情報を発信していきたいと思います。
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