卓球がしたいのに柔道をやり続けた子供の話
ずいぶん前の話になりますが、ちょっと変わったアスリートが私のコーチングを受けに来てくれました。
それが、「卓球がしたいのに柔道をしていた子供」の話です。
アスリートの望む結果をメンタル面からサポートするスポーツメンタルコーチの鈴木颯人です。
何を質問をしても、答えがやってこない…
どうしたことか、話さないんです。困ったので、質問を紙に書き出し本人に答えてもらいました。
最初にこんな質問をしました。
「柔道を始めたキッカケを教えてください」でした。
そして次に聞いたのが、「柔道は楽しいですか?」でした。
勘違いしてほしくないのは、決して柔道という競技に対して私はどうこう言うつもりはありません。
競技を始めたキッカケを聞くことで何か気づけることがあるのではないかと思っているからです。
なかなか言葉が出ない人ほど、あることを疑ってしまいます。それが、親御さんの存在です。
質問を繰り返す中で、ご本人から答えがやってきました。それが、「キッカケが親」という答えでした。
親にやらされているケースはたくさんあります。この子に限った話ではありませんが、親にやらされているが上の心境を語ってくれました。
それが、「楽しくない」と答えるのです。
ただ、最初は楽しくなくても、自然と楽しみを見つけたりする方もいます。もう少し続けたら良いのかなと思ってしまうのですが、そこで違った質問をしました。
「他に何か興味があることはありますか?」
すると、目を輝かせて卓球と答えてくれました。柔道を頑張ったら卓球やらせてもらえるから、どうしたらいいか教えてくれと聞かれました。
予想の上をいく質問をされてイスがひっくり返るくらい驚いたのを今でも覚えています。
彼女が本当にやりたかったのは卓球でした。なので、柔道を楽しいと思っていなかったようです。
楽しいと思えない競技の話をされて、楽しいと思えない競技で結果を出そうとするなんて大変なことです。
そりゃ、コーチングの時間に沈黙するよなって思いました。何がキッカケで私のコーチングにたどり着いたのかな?と聞いたら親御さんからのご紹介でした。
この子には罪はないし、親御さんとして子供のためになればと思うのも必然なのかなと思います。
だから、決して、今回のケースがダメとかいけないとか言いたくないです。
それよりも私が1番伝えたいのは、「本音を大切にしよう」ということです。
この本音に気付くために、この子は柔道をしたのだと思えばとても良いキッカケだったのかなと思います。
もしかしたら、卓球に繋がる何かを柔道から無意識に学んでいるのかもしれません。
逆に柔道や他の競技を知らずに卓球だけしかやってこなかったら、何かしらの可能性に蓋をしたり、自分の気持ちに気づけずに人生を過ごしていたかもしれません。
そうやって考えてみると、結果を出したり、メンタルを強くすることだけがメンタルコーチの仕事ではないのだと気付いていただけるかと思います。
しかし、仮に結果を出すこと、メンタルを強くすることだけしか考えていないメンタルコーチだったら、この子の本音を引き出そうという視点にまで気付けないのだと思います。
もっといえば、本音で気付ければ、スポーツ以外のことで夢中になれることもあると思います。
1人のアスリート以前に、1人の人間として目の前のクライアントさんと向き合える人が世の中に増えていくことを願います。
「One athlete,Oen mental coach 1人のアスリートに、1人のメンタルコーチを」