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ピッチャーのメンタルに必要なこと 田中将大選手の事例

楽天ゴールデンイーグルスを優勝に導いた立役者であり、アメリカ大リーグ屈指の常勝軍団と言われるヤンキースでも挑戦した経験を持つ田中将大選手。日本球界へ復帰後も後輩選手の心の支えとして育成などにも貢献する魅力あるアスリートです。朝ない頃から輝きを放った強肩を活かし、キャッチャーからピッチャーとして成長してきた野球選手としてもセンスはさることながら、とても強いメンタルの持ち主としても知られています。

甲子園出場の常連選手として斎藤佑樹選手と共にハンカチ世代と呼ばれ、37年ぶりとなる決勝再試合の死闘を繰り広げた甲子園の伝説的ヒーローでもあります。プロになってから心掛けている大切なことは、相手を上回ること、そして課題に対して受け入れる気持ちだと話しています。今回は、田中将大選手についてスポーツメンタルコーチ目線でお話します。

スポーツメンタルコーチ

ピッチャーに必要なメンタルとは?

  • 繰り広げたのは”37年ぶりとなる死闘の決勝戦”

  • 譲れないのは、メンタル上で”相手より上回ること”

  • 課題に対して受け入れる気持ち

 

繰り広げたのは”37年ぶりとなる死闘の決勝戦”

兵庫県伊丹市出身の田中将大選手が野球を始めたのは、小学校1年生の時。軟式少年野球チームの昆陽里タイガースが原点です。このチームでは、4番バッターでキャッチャーのポジションとして活躍しました。

 

当時同じチームでバッテリーを組んでいたピッチャーは、読売ジャイアンツの坂本勇人選手というのは野球ファンなら誰もが知るほど有名です。中学校に入ると宝塚ボーイズに所属。この頃には、キャッチャーとして培った強肩を買われてピッチャーを兼任する機会も多くなってきました。中学3年生の時には、関西南選抜のチームメンバーに選ばれた田中将大選手。

 

高校は、北海道の駒澤大学附属苫小牧高校へ進学しました。1年の秋に行われた明治神宮野球大会で正捕手としてデビューし、2年生になるとピッチャーとして夏の甲子園大会に出場しました。この大会では、チーム最多となる25回を力投し、優勝に貢献。チームを全国2連覇へと導きました。

 

この年の決勝戦で優勝を決めた最後の一球は、2年生では史上初となる150キロを記録しました。高校野球界にその名を轟かせた田中将大選手は、3年生の時にも夏の甲子園で決勝まで勝ち進みました。チームの3連覇がかかったこの決勝戦で目の前に立ちはだかったのが斎藤佑樹選手の所属する早稲田実業高等学校。3回から投球し、延長15回まで投げ抜く死闘を繰り広げながらも引き分け。実に37年ぶりとなった決勝戦で再試合が決まりました。

 

この伝説の決勝戦は、のちに高校野球に興味がない人も大注目することになります。翌日も前日の死闘の疲れを感じさせず、1回の途中から7回まで熱投を見せましたが、結果的に3対4と惜敗。最後の打席が田中将大選手だったことも非常にドラマチックなものです。今後も何十年先まで”死闘を繰り広げた甲子園球児”として語り継がれるアスリート、それが田中将大選手なのです。

 

譲れないのは、メンタル上で”相手より上回ること”

8年ぶりに日本球界に復帰した楽天ゴールデンイーグルスの田中将大選手。久しぶりの日本での野球生活を楽しんでやっていると言います。もちろんベテランと言われる年代に突入した体では、疲れは貯まりやすいものです。それでもチームメイトとの刺激ある良い関係性も田中将大選手の充実感を後押ししています。

 

幼い頃から野球を始め、プロ野球選手そして大リーグ選手と大きな夢を叶えながらさらに高みを目指して挑戦し続ける姿。若手選手のお手本にもなっているベテランには、キャリアを踏まえて”譲れないこと”があります。それが”相手より上回る気持ち”。ピッチャーとしてマウンドに立ち続けるというのは、相手バッターと対峙するというよりも打線や相手チームと戦うという考え方をするそうです。

 

そんな長い戦いの中でも勝負どころを見極める必要があります。そんな時にメンタルを支える魔法の言葉となるのも”相手より上回る気持ち”です。どうにかして相手より上回る、自分が上に行く、自分が勝つという強い気持ちを常に持つように心掛ける、それが田中将大選手の譲れないものです。

 

もちろんアスリートはどんな選手でもメンタルトレーニングを積み重ね、自分が相手より上回るという強い気持ちでプレーしています。そんな相手を上回るためには、”相手より上回る”という考えをしっかりと意識を持ち、トライしていくことが重要で練習の時から次のゲームに向けての準備をし、対戦相手の傾向を見極めつつ投げ方などプランを練っていきます。そういうところからすでに相手より上回るために準備が始まっているのです。

 

課題に対して受け入れる気持ち

勝ち負けがあるアスリートの世界でも常に強いメンタルを持つ意識を持ち続ける田中将大選手。もちろん常に最高の結果ばかりを得ることはできません。

 

そんな中で必要なのは、失敗に対しての不安など”ネガティブな気持ちが出てくるのも当たり前”と割り切ってしまうのだそうです。もちろん不安も感じるし緊張もしますが、それが自分がやろうとしていることが”どれだけ大切なことなのかの裏返し”と考えます。

 

そう感じる自分をまず受け入れ、乗り越えるために必要な今の課題を見出すのです。課題を見つけることで一つ一つ考えが固まり、その課題を潰していくことで少しずつ自信を積み重ねていきます。それを繰り返し経験することでその自信は確固たるものとなっていくのです。「一生それが終わることはない」そう話す瞳が、心強い田中将大選手。非常に難しいことでもそれを乗り越えて掴み取ることができれば、感じる喜びは凄まじいものとなります。

 

スポーツを通して喜びを分かち合えるファンやチームメンバーがいることは非常に心強いもの。そして、そんな大切な人たちと分かち合いたい夢が日本一です。リーグ優勝や日本一を狙える戦力を自覚している田中将大選手。あとは、自分達がどう上回っていくのか、どう試合に勝っていくかです。一人一人が自分の役割を考えながらやっていくことでチームとして大きなものとなります。

 

若い頃には、ガッツポーズや吠えるなど感情を表に出すタイプだった田中将大選手。現在も中に秘めている負けん気の強さは健在だと言います。しかし相手に悟られてしまうことや逆に相手を勢いづけてしまうケースも考え、使い分けることも必要です。感情をコントロールすることでメンタルを安定させています。そしてコミュニケーションについても心掛けていることがあります。

 

元々自ら進んで話しかけたりコミュニケーションを取りに行くタイプではないそうです。しかし向こうから来にくい雰囲気を察し、若手選手や外国人選手に対しても安心してプレーしてもらえるように自分からコミュニケーションを取ることを考えるようになりました。

 

一見相手を思いやっている行動ですが、自分自身もチームメイトとのコミュニケーションでモチベーションをあげることが出来ているのです。

 

今回は、田中将大選手についてお話しました。感情を表に出してきた元気一杯の若手時代、そしてアスリートとして課題を乗り越えていくという強いメンタルもベテランとして身につけてきました。田中将大選手の更なる活躍をお祈りしています。今後もアスリートや指導者の皆様にとって有益となる情報を発信し続けていきます。
 

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【このコラムの著者】

プロスポーツメンタルコーチ/一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
慶應義塾大学健康情報コンソーシアム 幹事会員
メンタルトレーニング推進議員連盟 所属
代表理事 鈴木颯人

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。>> 今も増え続ける実績はこちら

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

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