アスリートにとって大切な小さな成功とモチベーションの関係性
皆さんは、「最近なんだかモチベーションが湧かない」「モチベーションが長続きしない」といった悩みはありませんか?
今回は、アスリートとして競技を続けていく上で、非常に重要な要素となってくる「モチベーション」の作り方と、その保ち方を海外論文を元に紹介していきます。意外にも小さな成功体験の積み重ねが、モチベーションと密接に関わっているようです。明日から使えるメンタルコントロールの方法としても実用的な内容となっておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
- ・モチベーションとは?
- ・モチベーションとは前に進んでいる感覚
- ・小さな成功を積み重ねる
- ・小さな成功体験を再確認
モチベーションとは?
モチベーションがアスリートにとって大切なのは周知の事実ですが、実際、モチベーションが何で、どのように作り出されているか、あまり深く考えた事がある人は少ないでしょう。
モチベーションの正体とは何かを知るために、ひとつ参考となる海外論文で、アメリカ・コロンビア大学らが行った研究を紹介いたします。
この研究は、コーヒーを買うとスタンプが1つ貰えるという単純な仕組みで、スタンプカードに10個のスタンプが貯まると一杯無料になります。よく日本でも買い物をするともらえるスタンプカードですね。
その際、以下のようにグループを2つに分けました。
1、ゼロから10までが空欄のスタンプカードでスタート
2、ゼロから12までスタンプを貯めなくてはならないが、すでに2つスタンプが押してある状態からのスタート
ふたつのグループとも10個のスタンプを貯めなくては、無料券がもらえないという状況は同じですが、前提条件で、一方の側には、既に前に進んでいるという錯覚を与える事が出来ています。
この条件でどちらのグループの方が、より早くスタンプを貯める事が出来たのか。
その結果は、2番の既に2つのスタンプが押されていたグループの方が、早かったそうです。つまり、少し前提条件が違うだけで、スタンプを貯めるモチベーションに変化が見えました。
モチベーションとは前に進んでいる感覚
この実験から見えてくるのが、人間のモチベーションというのは、前に進んでいる感覚であるという事実です。
日常的にこの仕組みを使用しているのが、ユーザーの気を逸らさないようにモチベーションを与え続けるスマホゲームやビデオゲームです。
ゲームを注意深く見てみると、ユーザーに前に進んでいるという感覚を与えるために、適切なタイミングでフィードバックを与え、進捗度合いを再確認させるようにデザインされています。それによって、私たちユーザーは眠い中でも、疲れている時でも、なぜかゲームへのモチベーションを保ち続ける事ができます。
上記の事を踏まえて、アスリートがモチベーションアップに使えそうな戦略としては、以下の点となりそうです。
- ・タスクを細かく刻み、小さな成功を積み重ねる
- ・小さな成功体験を定期的に確かめる
小さな成功を積み重ねる
先述の通り、人は、前に進んでいるという感覚を持つ事によってモチベーションが作られます。そのため、タスクを細かく刻み、小さな成功体験を積み重ねるのは、アスリートが、モチベーションを作り、それをキープするのに効果的です。
例えば、数年単位でのゴールを設定します。その最終的なゴールから逆算したスモールゴールを細かく刻み、数か月から数日単位で設置しクリアしていく事によって、小さな成功体験を積み重ね、モチベーションアップに繋げていく事も可能です。
しかし、この場合、数年先は、状況や運によって左右される可能性があります。そのため、せっかくスモールゴールを設置し、クリアし続けても、最終的なゴールに変更を余儀なくされる場合も考えられます。
他におすすめとしては、練習に行うタスクを、1日単位で細かく刻むことです。1日練習というひと括りで考えるのではなく、ランニング、体幹トレーニングなど細かい練習メニューに変えていきます。
または、ウエイトトレーニングの中でも、腕を鍛えるウエイト、脚を鍛えるウエイト。技術練習の場合、反射神経を鍛えるトレーニングや身体の柔軟性を鍛えるトレーニングなど、もっと細かく刻んでいきます。
上記のように細かく刻んだタスクを、やることリストのようにノートにまとめ、完了後は斜線を引くなどして記録していくと、「前に進んでいる感覚」と「小さな成功体験」を同時に感じる事ができるため、モチベーションを保ちやすくなります。
小さな成功体験を再確認
人間はモチベーションを一定に保つことは不可能です。どれほど一流のアスリートでもモチベーションが下がってしまうことはあるでしょう。しかし、一流のアスリートほど、このモチベーションのアップダウンが小さいです。つまり、モチベーションが下がった時にどのような行動を取るかが、一流に近づく鍵となります。
モチベーションの低下を感じるときは、これまでの小さな成功体験を再確認し、前に進んでいる感覚を自分にもう一度与えるのが、効果的です。
これまでの練習を振り返る。または、先程取り上げた、1日の細かいタスクを記録したノートを読み返すなど、これまでに刻んできた、小さな成功体験を再確認してみましょう。下がったモチベーションをもう一度上げ、練習に集中する事を可能にしてくれます。是非参考にしてみてください。
参考:https://home.uchicago.edu/ourminsky/Goal-Gradient_Illusionary_Goal_Progress.pdf
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【このコラムの著者】