オポジットに必要なメンタルについて 西田有志選手の事例
オポジットとして必要なメンタルとは?
現役高校生の鮮烈デビュー
三重県いなべ市出身の西田有志選手が、バレーボールを始めたのは5歳の時。兄と姉がバレーをしていたことがキッカケでした。小学生の頃にも少年バレーボールチームに所属し、中学生になると地元の海星高校バレーボール部の監督が率いるオーシャンズというクラブでプレーしました。
同時に自身の中学校のバレーボール部へも掛け持ちで所属。学校のバレーボール部には経験者がいないため、西田有志選手自身が率先してメンバーに指導していたそうです。2年生の時に全国中学バレーボール大会の三重県選抜チームに選ばれた西田有志選手。この大会での活躍からバレーボール強豪校として知られる星城高等学校からの推薦を受けました。
しかし強豪校からの誘いを断り、中学校時代に指導を受けた地元の海星高等学校へ進学することを決意したのでした。高校時代にはアジアユースバレーボール選手権とユース世界選手権でそれぞれ選出され、日本代表として世界一を達成しました。
しかし全国大会には、インターハイに一度のみの出場に止まります。強豪校である三重県立松阪工業高等学校に行く手を阻まれたことで春高バレーへの出場も叶わず、その才能に見合った功績を挙げることができませんでした。それでも高校卒業後の進路は、迷うことなく幼い頃からの夢である”Vリーグ選手”になることでした。
その道を開くキッカケとなったのが、トヨタグループの自動車部品製造会社であるジェイテクトで社会人バレーボーラーとして所属していた6つ年上の兄の存在がありました。
西田有志選手も高校3年生の時に高卒内定選手としてジェイテクトSTINGSに入団することが決まりました。プロとしての初舞台は、まだ現役高校生だったことで大きな話題となりました。70%という脅威のスパイク決定率とチーム最多得点となる26点を挙げ、全日本の次期エースとして期待されるほど鮮烈なデビューを飾ったのです。
妻となり共に病を乗り越えてくれた”古賀紗理那選手の存在”
187センチの長身で特技は、バスケットボールのダンクシュートだという多才な西田有志選手。そんな彼の大きな武器は、最高到達点346センチの”脅威的なジャンプ力”です。この高さを簡単に例えるとブロックする相手のさらに上をいくほどの高さなのです。
人並はずれたジャンプ力に加え、”抜群の反射神経”を併せ持つことで絶妙なタイミングのスパイクを打つことができます。そして強豪国イタリアの監督からも絶賛されたのが”弾丸サーブ”。勝負どころであっても失敗を恐れず、強いサーブで攻める強いメンタルを持っています。
どんな時も逃げずに真っ直ぐ勝負するという気持ちが伝わってくるほどのサーブにチームメイトも身が引き締まること間違いありません。身長が伸びる前にリベロの経験も活かされていてレシーブにも定評があるオールラウンドプレーヤーへと成長をさらに遂げました。
コロナ禍での自粛期間にも主に下半身のトレーニングを強化し、体幹を鍛えることで体のバランスの安定感が増しました。また物怖字しないと自負する性格で清水邦広選手など年上の先輩にも積極的に話し掛けるなどのコミュニケーション能力も持っています。
しかし、これほどまでにアスリートとして必要な才能を全て兼ね揃えたような西田有志選手を苦しめたのが”原因不明の病”。新型コロナウイルスの抗原検査でも陰性でありながら微熱から高熱に悩まされる日々が何日も続き、一時は入院も余儀なくされました。
まず倦怠感から始まり、夜中に悪寒で目が覚めるので熱いシャワーを30分ほど浴びなければ眠れない日々が待ち構えていました。試合中にも体育館のLEDライトを目にするだけで視界がぼやけてしまい、バレーボールを終えて部屋に戻ると充血してしまう目の不調まで現れました。
ある時、胃のムカつきと熱が39度まで上がったことで血液検査を受けました。その他にも尿検査や腫瘍マーカーそしてDNA検査など疑われるもの全ての検査を受けました。就寝中にシーツどころかマットレスまで変えなければならないほどの大量の汗をかき、1日中食事を取らずともお腹が空かない異常な状態までに。
不安感と体調不良の中でもなんとかリーグを戦い抜いた西田有志選手。心配かけたくないと親にも話せなかった状況の全てを曝け出すことができた存在が、妻である古賀紗理那選手でした。
「夜寝る直前まで話して朝起きたらまたおはよう」そう言い合える唯一の存在。彼女との電話がなければ夜が来るのも朝が来るのも怖かったとまで話すほどの精神状態でした。
”結婚するならこの人しかいない”と決意したものの「もしも命に関わる大病であれば連絡も結婚も付き合うこともやめよう」と話し合ったこともあったそうです。
それでも恐怖や不安そして病を乗り越えることができたのは、妻となった古賀紗理那選手という唯一無二の大きな存在があったからなのです。
強くなるのに必要だった”人に頼れること”
体調不良に陥りながらもVリーグそして日本代表シーズンをプレーし続けた強靭なメンタルを持つ西田有志選手。得意である弾丸サーブを行う際やトスをあげる時でさえ手が震えるほどの不安と緊張感に襲われていました。恋人であった古賀紗理那選手以外、親にも話せずにいた自身の不調を、遠征中に同部屋になった高橋健太郎選手に勇気を持って打ち明けたそうです。
そしてプレーをアドバイスするために呼び出されたフィリップ・ブラン監督にも伝えました。「これとこれができていない」と言われると「自分でもわかっている。でもできないんだよ」と今まで抱えてきた不安な辛い思いが溢れてしまいました。
フィジカルもメンタルも強い西田有志選手が、初めてフィリップ・ブラン監督に見せた涙。その後、チームにも自身の精神状態や体調不良である現状を話したと言います。
一人で抱え込むのに限界を感じたからでしたが、ただ「そこで言えたことで人に頼れるようになった」と結果的に良い方向に変化し、西田有志選手の気持ちは軽くなったのでした。
18歳で日本代表入りしてからチームの主軸として走り続けた彼に訪れた最大の難関。思い当たる検査を全て済ませ、結果が出るまでの間にいろんなことが頭をよぎりました。白血病なのか癌なのか、またはリウマチなのか調べれば調べるほど余計に怖くなったそうです。
結果を出すのが当たり前のプロアスリートの世界。心配されることもありますが、逆に厳しい意見までさまざまな評価を受けています。忘れてはいけないのは、一番苦しんでいるのはアスリート本人だということです。
嬉しい時は、スポーツに興味がない人までも日本列島がお祭り騒ぎのように共に喜び合います。しかし不安な時ほど頼れる人が周りに居ないアスリートも多いです。『気持ちを少しでも軽くしてあげたいと』一人でも多くのアスリートに寄り添っていきたいと思うのです。
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