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”メンタル強化にも効果的”、アスリートのセルフモニタリング

日々重要な課題ともなっているストレスを緩和するため、医療やスポーツ心理学の観点からさまざまな解消方法がクローズアップされています。その中でも今回スポットを当ててお話したいのがセルフモニタリング。学生時代クラブ活動などで”練習ノート”を書くことをすすめる指導者は多いです。日々の練習内容や感じたこと、反省点などを記した日記のようなもの。今回はストレスの対処療法として押さえておきたいアスリートのためのセルフモニタリングについてお話します。

目次

  • ”メンタルも鍛える”セルフモニタリング

  • セルフモニタリング”5つの実践ポイント”

  • ビックマウスを作り上げた”本田ノート”

  • セルフモニタリングの効果

”メンタルも鍛える”セルフモニタリング

心理学者であるスナイダーが定義したセルフモニタリング。”周囲の状況や他者の行動に基づいて自己の行動や自己呈示(自分よりよく見せようという意図に合わせた振る舞いをすること)が社会的に適切であるかを観察し、自己の行動をコントロールすること”と記されています。

 

簡単に言えば字のごとく、自分の行動、考えや感情などを観察(モニタリング)することです。例えば、第一印象で左右される初対面の人の印象など考えると明るく礼儀正しく接しようとする人がほとんどだと思います。

 

また、見た目を良くするためにダイエットなどをしたり自分の食生活を見直して運動したりすることもセルフモニタリングによる行動の一つ。このように常日頃から私たちは、特に意識しなくても良い結果を求めて心理的に考え、行っています。

 

そんなセルフモニタリングに必要な能力は、”感受性。もちろん個人差もあるため治療や仕事、スポーツ心理学などで本格的にセルフモニタリングを行う際には、どのような要素があるのか感受性の個人差を測るために尺度分析する必要があります。

 

セルフモニタリングの尺度は、3つの因子構造に分けられます。

  1. 1つ目は外向性 社会的な事柄への関心が強く社交的な人。
  2. 2つ目は他者志向性 他者や状況に合わせて適切な自分自身の気持ちを抑え、配慮できる人。
  3. 3つ目は演技性 演技して他者を喜ばせたり、人前で流暢に話せる人。

セルフモニタリングの能力が高い人は、”状況に合わせて適切な言動を行う器用な人”ということになります。逆に”自分に対して正直で不器用な人”はセルフモニタリングの能力が低いということです。一連のプロセスを意識して習慣化すれば、より理想に近い結果へと導き、ストレスを和らげることも可能となります。また日常化することでメンタルトレーニングにも役立てることができるのです。

 

セルフモニタリング”5つの実践ポイント”

認知行動療法(CBT)にも取り入れられ、ストレスの対処療法としても効果的なセルフモニタリング。思い描く理想と現状の状況のギャップに歪みを感じ、人はストレスを感じてしまします。認知行動療法はモノの見方や捉え方である認知に焦点を当て、行動や感情などを理解することで現実とのギャップを埋めていく方法です。

 

『修正したい自分自身の行動に目を向け、観察し適切な修正を行う』セルフコントロールを行うためにする自己観察=セルフモニタリングが重要となるのです。

 

方法としてまず最初に自分自身の日常生活を振り返り、ストレスの原因となっていることを思い出します。どれだけ小さく些細なことでも構いません。実際に自分自身”これくらい大したことない”と意識していたことがストレスの引き金になっている可能性もあるからです。少しでも引っかかることやモヤモヤした記憶でもメモしておきます。

 

セルフモリタリングのスタートとして最も重要なのは、”自分がどのようなストレスを感じているのか自覚すること”です。次に行うのは、その感じたストレスの詳細を細かく分解して書き出すこと。この時のポイントは、大きく分けて5つで各視点から観察することを心がけて書き出すようにします。

 

  1. 1つ目 ”ストレスを感じた状況(ストレッサー)”。
  2. 2つ目 ”ストレスを感じた時、頭に浮かんだ考え”。
  3. 3つ目 ”ストレスを感じた時の気分や感情”。
  4. 4つ目 ”ストレスを感じた時の体の反応”。
  5. 5つ目 ”ストレスを感じた時の行動”。

 

セルフモニタリングは、ストレスを感じた状況(ストレッサー)とストレスを感じた時の心や体のさまざまな反応に対して行います。最も重要なのは、”具体かつ客観的に事実”を書き出すこと。感じたストレスを細かく書き出すことで自分自身が”どのような状況でストレスを感じるのか”そしてストレスを感じた時に”どのような変化が起こるのか”などの傾向を客観的に理解することなのです。

 

ビックマウスを作り上げた”本田ノート”

”ビックマウス”とも称された強気な発言が印象的な本田圭佑選手。イタリア最高峰のセリエAミランでプレーし、サッカー日本代表としても活躍した彼もセルフモニタリングを実践してきた一人です。メンタルが強いアスリートとしてまず頭に思い浮かぶアスリートでもあります。

 

大叔父からの勧めで”本田ノート”と言われる練習ノートをつけ始めたのは小学校3年生の時だそうです。大叔父である本田第三郎さんもオリンピックのカヌー日本代表として活躍した元アスリートでした。本田圭佑選手にノートを勧めた頃には、カヌー全日本チームの監督を務めていました。

 

そんな大叔父に「強くなるにはどうしたら良いの?」と質問した本田圭佑選手。一冊のノートを持って来るように言われ、書かれた言葉は”サッカー日誌”でした。このノートにサッカーについてのあらゆることを書き続けるようにとアドバイスされたのでした。

 

実際の書いた内容は、

 

  1. 起床就寝時
  2. 脈拍数
  3. 体重(1日3回計測)
  4. 食事のメニュー(五大栄養素を採れてているか、お米を何回噛んだかなど)
  5. 排便
  6. そして練習内容や反省点など

 

小学校3年生の時に「これが10冊続いたら日本代表クラスになれるよ」と言われていたそうです。この本田ノートは、高校卒業までの10年間で毎日書き続け、その数は30冊ほどにものぼりました。本田圭佑選手の強靭なメンタルは、”本田ノート”に書かれた言葉で意識づけられたものだったのです。

 

セルフモニタリングの効果

スポーツ心理学でセルフモニタリングと呼ばれる練習ノートの習慣は、メンタルトレーニングの土台ともなる重要なものになります。自分の考えや行動のパターン、試合でのプレーやチーム内での人間関係に至るまで自分の気持ちや感情をはっきりと認識できるようになります。

 

認識=”気づく”ということ自体がメンタルトレーニングにおいて重要なことだと言われています。原因を追求し、対処法を考えやすくすることが得られる効果です。

 

スポーツ心理学で”ゾーン=ピークパフォーマンス”とも呼ばれるトレーニングに繋げることも可能となります。簡単に言えば、自分自身の実力を100%発揮できている状態へと導くトレーニングになります。

 

同じくスポーツ心理学で重要な”目標設定”の目安にもなります。どこまで努力すれば良いのかなどゴールが見えることで練習量や時間の目安などを認識し、やる気がアップ=パフォーマンス向上へと繋がります。『あとどれくらい練習すれば良いのか』という目標設定までの目安も認識できるようになることもセルフモニタリングの効果の一つなのです。

 

今回は、セルフモニタリングについてお話しました。認知行動療法(CBT)だけではなく日常生活の習慣改善などにも役立てることも可能です。”本田ノート”(練習ノート)のように日記として手軽に始めることもできます。毎日コツコツと継続を続けることでより理想に近いセルフコントロールが可能となり、パフォーマンス向上へ導きます。

 

しかし、自分で気付く上で客観的に自分自身に対して内省を促すような存在も必要です。どうしてもノートなどは自分よがりの世界観を作ってしまうのでセルフモニタリングのノートだけに頼らずに専門家であるスポーツメンタルコーチにも意見やアドバイスを聞いてみてください。

 

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プロスポーツメンタルコーチ/一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人

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【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

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