高梨沙羅選手、諦めないメンタルが未来を切り拓く
どれだけ世界チャンピオンに輝いても制するのが、難しい。それがオリンピックの舞台です。ここ数日、どの競技にもあった見ていて辛くなる涙してしまうような場面。高梨沙羅選手は、ワールドカップ通算109回の表彰台が男女通じて最多となり、ギネス記録にも認定されたほど世界大会でもとても強いのです。
しかし、前回の銅メダルの成績よりも上には行くことができず個人では4位、気持ちを新たに挑んだ団体戦も4位で、高梨沙羅選手の北京でのオリンピックは終わりを告げました。
もちろん4位でも素晴らしいですが、高梨沙羅選手が1位を取ることを目標にこの4年間努力してきた事を考えるとやはり悔やまれます。今回スポットを当ててお話しするのは、北京オリンピックでの高梨沙羅選手です!
目次
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北京オリンピックで得れたもの
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何がダメだった?高梨沙羅選手のスーツ
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心配される高梨沙羅選手のメンタル
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次のオリンピックに向けて
北京オリンピックで得れたもの
25歳で挑んだ今回の北京オリンピックは個人4位で、あと一歩メダルには届かなかった高梨沙羅選手。「申し訳なさは拭えていないけど、また新しい日が来ますし。ミックス戦も迫ってきているので、こういう気持ちでいても仕方がない」と前向きでした。
何とか強く気持ちを持ち望んだ公式練習では、好調なジャンプを連発します。「最後はいい感覚で終われた。風に恵まれて落ち着いた状況で自分のジャンプに向き合えて、明日につなげられる」と満足していた様子です。共にチームメンバーとして出場するのは、個人で日本人として快挙となった金メダリスト、ジャンプ男子エースの小林陵侑選手。
とても頼もしく、日本は優勝候補とまで予想されていました。「力になれるように頑張りたい。力を合わせて頑張れるのは幸せなことだし、自分一人では心細くても、皆がいるから頑張れる」と話した小林陵侑選手。メダルへの思いもかけた仲間と挑んだジャンプ男女混合、良いリズムをつけるため最初のジャンパーを任されたのは、高梨沙羅選手でした。
1回目、個人戦の悔しさが吹っ飛ぶような100m超えの大ジャンプ。しかしまさかの失格となり泣き崩れてしまいます。その後、泣きながらも2回目のジャンプに臨んだ高梨選手。ゴーグルをしていても泣いているのが分かる中でも良いジャンプを見せました。
日本代表、横川コーチは「泣いてもあれだけ飛べる。一流だと思う」と話しました。結果は4位でしたが、泣き崩れる高梨沙羅選手を力いっぱい抱きしめた小林陵侑選手。悪夢のような中、泣きながらも懸命に飛んだ2回目のジャンプで得られたのは、たくさんの人からの”賞賛と絆”です。素晴らしいチームの絆を見れたことに感動し涙した人も多かったはずです!
何がダメだった?高梨沙羅選手のスーツ
見ていた人の誰もが「何で失格?何が違反?」と良く分からないままに、気がついたら他国でもスーツ規定違反の失格者が続出。結果的に、5人の選手が失格となり、せっかく飛んだのに0点となる事態となりました。
そのため順位は、目まぐるしく変わりました。ネット上でも「全くフェアではない」「完全にクレイジーである」との意見で炎上。判定員は「私たちは、最終的にジャッジの評決と失格だけしか見ることができない」その上で「私見では、十分フェアだった」「個人戦で40または30人の選手をチェックするのは難しいため、ある割合のみをチェックしている。
個人戦で大丈夫だったからといって、別の試合でも大丈夫という保証はない」「失格になった選手をとても気の毒に思うが、規則は規則であり、全ての人に適用されるもの。それに従わなければ、こうしたことも起こることをあらかじめ分かっておくしかない」と話しました。
ジャンプ競技に詳しい専門家は、この ”ルールのあいまいさ”を指摘しています。スーツは、オリンピックなら4着くらいは持っているそうです。もちろんチームには、スーツを縫う担当の人が必ず居て、生地もミシンも用意しています。
一部で言われている『標高が高いから体重が減りやすい』ということに関しては、もちろん体重が減ることは良くあることですが、体重減少によりサイズが変わるのは、ウエストくらいで太ももが2cmも変わるのは珍しいと言います。
『選手本人もしっかりチェックしなければならない』との厳しい意見については、もちろんそうですが、高梨沙羅選手は、幼少期からこの競技に取り組んできてギネス記録まで持っているスキージャンプのプロ。
周りのスタッフもまたプロであり、サポートしてしっかり支えてきているはず。今回の問題点は、たった1人ではなく、5人も失格になるという稀なもの。今まで曖昧すぎたのが、今回からいきなり厳しくなってそれに対応できなかったという可能性が高いとのことです。
しかし「日本人は決して不平を言わない、間違いを受け入れ、謝ります。他の国では、状況と折り合いをつけるのは難しかった。彼らは結論を出すために何が起こったのかを調べようとしていますし、感情的にアプローチします」と日本以外のどのチームとの話し合いも時間がかかって大変だった事を判定員は話しました。
このように聞いてしまうと、誇りを持って自分の仕事をしていて、選手に対しての申し訳なさも辛さもある中、責められてしまう判定する側も、とても大変なお仕事だということがわかります!
心配される高梨沙羅選手のメンタル
前回の2018年、平昌オリンピックでは、全てを出し切り3位の銅メダルを獲得しました。「やはりまだ自分には、金メダルをとる器はないと思わせてくれました。次の4年間で、金メダルをとれる器になっていくしかありません。ここから仕切り直して、またスタートを切っていきたいです。」と話した高梨沙羅選手。
3位ではなく狙っていたのは、優勝でした。解体して成功するか、失敗して簡単に元には戻せないバクチをかけてでも、つかみたかった金メダル。そのために人一倍たくさんの努力をして来たことでしょう。
ゼロからスタートの北京オリンピックへ向けた大改造を見事成功させ「9割ほどきている」と語った高梨沙羅選手の最後の1割を妨げたものは、やはり”オリンピックの魔物”でしょうか。
「この4年間で経験したこと、積み上げてきたことを出しきり、感謝の気持ちを結果で伝えたい」と話した個人戦前の高梨沙羅選手の言葉。思うようなジャンプができないながらも気持ちを切り替え「自分のやるべきことに集中する」と2回目に臨み4位入賞しました。
「この4年間でいろいろな方たちに支えて頂いたおかげでジャンプすることができたが結果を出せずに申し訳ない気持ちでいっぱい。恩返しできなかった自分がただ悔しい」と話した感謝と抑えきれない悔しさが伝わってきます。
そして「本当にたくさんの強い選手が出てきているし、その中で戦えていることがすごく幸せなことでもあるが、私はもう出る幕ではないのかな」とメンタルが心配される言葉も残しました。報道陣が待つエリアを通る際には「申し訳ございません」とひたすら繰り返した高梨沙羅選手。更新されたインスタグラムでは、真っ黒な画像と共に謝罪の言葉と感謝の気持ちを記しました。
4年前の平昌オリンピック後、ジャンプを0から作り直す大改造を決心した時から、腹をくくっていたのかもしれません。いつも前向きで次の大会への抱負も話して来た高梨沙羅選手だけに、今回は本当にメンタルが心配されます。
次のオリンピックに向けて
「誰にも謝らなくてもいい」「よくここまで頑張った」と言ってくれる人が彼女の周りにたくさんいることを望みます。本当にあなたの事を思っている人というのは、”必死に頑張った人を責めるなんてことはしないものなのです。
一番悔しいのは、本人なのだとわかっているものです。今はゆっくり休んで、気持ちをリセットさせてほしい”そして高梨沙羅選手のジャンプを楽しむ姿をまた見たいです。
まだ25歳、4年後の2026年ミラノオリンピックの年は、29歳になる高梨沙羅選手。この競技では、トレーニングや気持ち次第では、まだまだできる年齢とされています。持ち前のポジティブさと強いメンタルを取り戻し、ぜひ頑張ってまたこの舞台に戻って来て欲しいです!