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才能と度量を兼ね揃え努力できる凄さ、渡邉彩香選手

172センチの長身から放つ飛距離の才能を武器に、中学高校でも全国制覇を成し遂げ、プロ入りした渡邉彩香選手。公式ドライビングディスタンス1位を記録しました。幼少期からの才能はもちろん、高校時代から人一倍の努力をして上り詰めてきました。今回は、プロゴルファー渡邉彩香選手についてお話しします。

目次

  • ”飛距離が武器”の渡邉彩香選手

  • 仲間との”共に喜ぶ楽しみ”

  • ”チームで抜け出した”5年のスランプ

 

”飛距離が武器”の渡邉彩香選手

静岡県熱海市出身の渡邉彩香選手が両親の影響でゴルフを始めたのは、9歳の時。父の”家族でゴルフがしたい”という思いがあったことがキッカケでした。家族の中でも体が大きかった少女は、当初から飛距離を伸ばし”遠くに飛ばせる”ことが楽しかったそうです。

 

そのため順位で負けるよりも飛距離で負ける方が悔しかったという渡邉彩香選手。「”飛ばせと周りから煽られ調子に乗ってドライバーを振り回していたらどんどん飛ぶようになった」と本人が少し照れながら話すのが、彼女のプレースタイルの原点です。

 

14歳の時に静岡県のジュニア選手権で初優勝を果たし、その翌年には、日本ジュニア選手権でも優勝。全国制覇を達成した渡邉彩香選手が進学したのは、埼玉栄高校でした。保健体育科が設置され、ゴルフ練習場も校内にあるスポーツ強豪校。ゴルフ部からも有望選手が多く巣立ったこの高校で懸命に練習し経験を積み重ね、17歳の時に全国高等学校ゴルフ選手権で優勝を果たしました。

 

埼玉栄高校として22年ぶりの全国制覇にも貢献し、中学、高校でも全国制覇を達成した渡邉彩香選手は、高校卒業後にプロテストに合格。翌年には、富士通レディースで優勝争いを経験し2位になります。平均飛距離が270ヤードというドライバーショットでTOP10入り。賞金ランキングでも46位に入り、初年度からシード入りという素晴らしい成績を残しました。

 

プロ2年目には、アクサレディースゴルフトーナメントでプロ初優勝。賞金ランキングでは、一気に11位にまで順位を上げました。海外メジャーにも挑戦し全米女子オープンでは予選落ちながらも堂々としたプレーで、全英リコー女子オープンでは29位に入りました。プロ3年目、ヤマハレディースオープン葛城で優勝し、プロ2勝目。

 

樋口久子Pontaレディースでも優勝するとプロ3勝を挙げると獲得賞金1億円を突破し賞金ランキング6位の日本人最高位となり、3年目にしてプロゴルファーとしての才能を確立させたのです。

 

仲間との”共に喜ぶ楽しみ”

中学3年生で日本ジュニア選手権で優勝した渡邉彩香選手。進学先に選んだ埼玉栄高校は、住んでいた静岡県熱海市から距離があったため新幹線で通いました。多くの有望選手を世に送り出してきた名門高校に通うために要した2時間の通学時間。長時間の新幹線での通学も学校が好きなため苦だとは感じず、毎日休むことなく通ったそうです。

 

この高校時代の日々は、渡邉彩香選手にとってプロゴルファーの基盤とも言えるでしょう。専門のトレーナーがきて選手がヘトヘトになるまでのハードトレーニング。帰宅する時間は、夜の10時すぎでした。日々の練習で足がつりそうになるほど鍛えられたという渡邉彩香選手。

 

中学までは思うように結果を出せていたそうですが、高校に入学すると”全国大会で優勝するのが当たり前”という人ばかりの環境。良い刺激にもなった分、焦りから思い通りにゴルフができなくなったそうです。そのため、目指してきたプロにはなれないかもしれないと悩むこともしばしばでした。

 

そんな思いから抜け出せたのが”団体での優勝”。ゴルフは、個人競技のため個人戦での成績を重視する選手も多いそうですが、埼玉栄高校に入った理由の一つに”団体戦をやりたい”という思いがあったのです。3年生の時には、チームを引っ張り団体で全国大会を優勝するという願いを叶えました。

 

個人戦では感じる必要がない独特のプレッシャーに打ち勝たねばならない一方、勝てばチームメイトと共に喜ぶことができます。学生ならではの団体戦を仲間と楽しみたかったのでしょう。3年間練習に打ち込み最後の夏に達成した全国制覇。この経験があったからこそ”プロになろう”と決心できたのでした。

 

”チームで抜け出した”5年のスランプ

3度目の優勝から5年のスランプがあった渡邉彩香選手。2016年オリンピックでの競技としてゴルフが、正式種目に復活しました。スポーツ観戦が趣味で、オリンピックは観戦するものから”目指すもの”に変わったことが、何より嬉しかったそうです。しかしリオデジャネイロオリンピックでは、代表の座をかけて挑みながらもその夢は叶いませんでした。

 

オリンピック出場を逃し「もう1段も2段も精度を上げてバリエーションを増やさないといけない」と世界で戦うために足りないものを感じたそうです。ですが、技術的な練習をしてもすぐに壁にぶつかり「出口が見えない。これ以上何をすれば良いんだろう」とどんどん深みにはまっていったそうです。

 

そんななかキャディー、マネージャー、トレーナー、コーチ、メンタルコーチと共に6人のチームで取り組んだことで最も重要な課題が見えたのです。「私自身が勝てることをイメージできない時も、みんなはまた勝つ、また強い選手になると思ってくれていることが伝わった」と話した渡邉彩香選手。もっとやれるとモチベーションを持てたそうです。

 

信頼をよせ他チームから指摘されたのは、”思い切りが足りない”ということ。さらには”飛ばし屋”と言われながらもデビュー当時に比べて”こじんまり”したプレーが目立つようになったとチーム皆で本音で話しあったのでした。

 

もちろんそう言われ気分が良いものではありませんでしたが、信頼を寄せていた仲間からの指摘。受け入れる度量を持ち、練習を重ねました。「スイングどうこうよりも思い切りがなくて安全に行こうとしてるのではないか。そういう選手ではないだろう」と気付かされ、また父からの「今ままでうまくいき過ぎたんだから勉強だと思って向き合えば良いじゃん」という言葉でも前向きになれたそうです。

 

メンタルを克服したプロ8年目は、新型コロナウィルスの影響で大幅にずれ込んだシーズン開幕戦でしたが、アースモンダミンカップで優勝した渡邉彩香選手は、通算4勝を達成。プロ9年目は、ほけんの窓口レディースで優勝し、プロ通算5勝を挙げました。「ベテランという感じになってきているので色々経験したものを活かしてもっと良い試合をたくさんしたい」と話しました。若手には負けずトップを目指す気持ちでこれからも女子プロゴルフ界を盛り上げていくことでしょう。

 

今回は、女子プロゴルファー渡邉彩香選手についてお話しました。学生時代の全国制覇、プロテスト合格、優勝までが順調過ぎた分スランプに陥った5年間は、本人にとって実際の年月よりも長く感じ苦しんだことでしょう。しかし、強いメンタルによって克服に成功しました。優勝=勝利と結び付けられるゴルフの競技で勝ち続けることは、非常に難しいことです。しかし、信頼できるチームで喜びを分かち合える楽しさを感じることで、良いゴルフができているのでしょう。きっと仲間と共に喜んだ高校時代のように。今後の渡邉彩香選手の活躍も楽しみにしています。

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【このコラムの著者】

プロスポーツメンタルコーチ/一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人

プロ野球選手、オリンピック選手などのトップアスリートだけでなく、アマチュア競技のアスリートのメンタル面もサポート。全日本優勝、世界大会優勝など圧倒的な結果を生み出すメンタルコーチングを提供中。

【プロフィール】フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれました。生まれた国はイギリス。当時から国際色豊かな環境で育って来ました。1歳になる頃には、日本に移住しました・・・。>>続きはこちらから

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