”プロスペクト理論”で高める、アスリートの勝利を呼び込む確率
目次
- メンタルトレーニングとしてもオススメな”プロスペクト理論”とは
- ターニングポイントとなる”価値関数と確率加重関数”
- 実践方法の4つのステップ
メンタルトレーニングとしてもオススメな”プロスペクト理論”とは
心理学者であるダニエル・カーネルマン博士とエイモス・スベルスキー博士が提唱した”予想・見込み・展望・期待を意味する言葉であるプロスペクト理論”。ノーベル経済学賞も受賞したこの理論は、心理学の分野のみならず、マーケティングや投資などのビジネス分野で活用されることもあります。そしてプロスペクト理論は、アスリートにとっても有効な理論なことがわかっています。
”人がリードを奪った時(勝ちそうな時)または劣勢の時(負けそうな時)には、こんな行動をしやすい”という傾向があります。勝てるかもしれない時には勝ちを失いたくない心理が働くために、より確実なことをして守りに回ってでも勝とうと考えるのが人間心理。逆に負けそうな時には、もっと大負けする確率が増えようともギャンブルをしてでも勝ちの可能性にかけてみるという心理が働きます。
わかりやすく言えば、勝ちが見えると人間は、リスクを負わないという確率の高いプレーを取るのです。逆に負けが見えるとリスクを追ってでも思い切ったプレーができるようになると言われているのです。本来人間は、利得より損失を回避する傾向が1.5?2.5倍大きいと言われています。つまり人間は、本能としてネガティブ思考に偏りがち。損失を回避すること、失敗を極力避けるようにプログラミングされているのです。
この人間心理を理解し、想定することで対策を練ることが可能となります。さらにプロスペクト理論を理解する大きなメリットとして事前に対策の準備をすることで心の余裕が生まれ、メンタルを安定させるためにも効果的となります。”リードした時に何をするのか、逆にリードされた時に何をするのか準備しておくこと。メンタルトレーニングとしてもオススメなのがプロスペクト理論なのです。
ターニングポイントとなる”価値関数と確率加重関数”
アスリートにとって押さえておきたいプロスペクト理論。柱となるのは”価値関数と確率加重関数”の2つです。まず最初に価値関数とは、”価値の感じ方の歪み”を表現するもの。人は得をした嬉しさよりも損をしたガックリ感の方を強く感じるという心理傾向が強いと言われています。
例えば1万円をもらった嬉しさを100とするならば、1万円を無くしたガックリ感は、ー200と2倍ほど強く感じるのです。関数のグラフとしても表現されています。
価値関数のグラフはS字カーブで描かれ、利益が出ている時には安定思考。逆に損益が出ている時には、リスクを冒しても利益を目指す心理が働きやすくなると言われています。つまりスポーツで例えるなら勝っている時には守りに入り、負けている時には大負けを覚悟の上でがむしゃらに攻める傾向にあるのです。
もう一方の確率加重関数とは、”確率の感じ方の歪み”を表現するもの。例えば、人が普段の生活で参考にする降水確率などです。高い確率ほど低く見積もり、低い確率ほど高く見積もるのが人間心理と言われています。つまり人間は、数字が大きければ大きいほど確率を正しく認識することが出来なくなるのです。
例えば宝くじは、2000万分の1という当選確率。数が多いため認識が難しく、実際よりも多く見積もる傾向にあります。そのため「意外と当たるんじゃない」と感じてしまうのです。反対に「手術の成功率は99%」という言葉を参考にします。ほぼ成功するという高確率。しかしたった1%の確率でも「失敗するのでは」と不安になる傾向にあるのが人間心理なのです。
確率加重関数もグラフで表されています。ターニングポイントとなるパーセンテージは、およそ40%。つまり40%以下の確率は実際よりも高く感じられ、それ以上の確率は実際よりも低く感じられるということです。
もちろんこのパーセンテージにも個人差があり、ターニングポイントが30%または50%の人もいます。価値関数や確率加重関数、そしてターニングポイントとなる目安のパーセンテージを理解しておくこともアスリートの勝率を高めるために必要なメンタルトレーニングなのです。
実践方法の4つのステップ
プロスペクト理論を試合前日から行うために必要なのは、4つのステップ。
まず初めに試合前、自分がリードしたと想定します。”勝てるかも”と思った時に多くの人は守りに入ってしまうという人間心理を理解し受け入れるのがステップ1です。
次に”勝てるかも”と思った時、守って後悔することがないように”何を考えるのか”を想定して準備しておくのがステップ2です。この時考えることは大きく分けて2つ。まず1つ目に、勝てるかもと思った時に”自分にどんなことを言い聞かせるのか”です。
例えば相手も負けたくなくて必死でガンガン来るだろうということを想定し、”まだ勝負はわからない。自分も勝負するつもりでもっと突き放そう”と考えます。さらに”どんなプレーをするのが良いのか”まで想定しておきます。
例えば”相手を振り切るためにテンポをずらしてみよう。”さらに”自分の強みを出したプレーをしてみよう”まで想定しておくのです。続いて想定したことや準備したことをノートなどに書くこと、記憶に定着させるための行程であるアウトプットを行うのがステップ3です。
例えば書くだけではなく、人に話すなどの行為も効果的。試合前の緊張状態でこのノートをみることで事前準備したことを思い出し、対処法の確認のみならず心の余裕までも生まれるのが大きなメリットです。ハーフタイムなどがある競技だとより心を落ち着かせることが可能となります。
最後に試合中で実際のその場面が来た時、プロスペクト理論を思い出すことがステップ4です。プロスペクト理論を実践することで今やるべきことを想定してプレーすることができます。
自分がリードしたとき、逆に相手にリードされた時の両方の場面を想定しておくことが必要です。人間心理として陥りがちな本来のネガティブ思考から一気にポジティブに転換することができる画期的な方法、それがプロスペクト理論なのです。
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