リードすると守りに入るのはなぜ?プロスペクト理論で克服する「勝ちビビり」の正体

目次
- メンタルトレーニングの基礎:「プロスペクト理論」とは?
- なぜ「リードしたチーム」は足が止まるのか?(価値関数の罠)
- 「99%勝てる」と思うと怖くなる(確率加重関数の罠)
- 試合で勝ち切るための「メンタル実践4ステップ」
- 知識は「メンタル」を育む。そして強さを手にいれる。
メンタルトレーニングの基礎:「プロスペクト理論」とは?
「プロスペクト理論」とは、行動経済学者のダニエル・カーネマン氏らが提唱し、ノーベル経済学賞を受賞した有名な理論です。
一言で言うと、「人間は、得をすることよりも、損をすることを極端に嫌がる」という心の癖を説明したものです。
アスリートにとって重要なのは、この理論の柱となる2つの心理作用、「価値関数」と「確率加重関数」です。
少し難しそうな名前ですが、中身はとてもシンプルです。
なぜ「リードしたチーム」は足が止まるのか?(価値関数の罠)
一つ目の「価値関数」は、「損得の感じ方の歪み」を表します。
人間は、1万円をもらう「喜び」よりも、1万円を落とした「ショック(痛み)」の方を、約2倍?2.5倍も強く感じると言われています。
これをスポーツの場面に置き換えてみましょう。
つまり、リードしている側は「恐怖」に支配され、負けている側は「捨て身の勇気」を持つ。 これが、スポーツで「逆転劇」が頻繁に起こる科学的な理由です。
■「99%勝てる」と思うと怖くなる(確率加重関数の罠)
二つ目の「確率加重関数」は、「確率の感じ方の歪み」です。
人間は、確率を冷静に数字通りに受け取ることができません。
特に特徴的なのが、「高い確率(ほぼ確実)な時ほど、わずかな失敗を過剰に怖がる」という性質です。
例えば、「手術の成功率は99%です」と言われたとします。
ほぼ助かるはずなのに、脳は「残りの1%(失敗)」に過剰に注目し、「もし失敗したらどうしよう」と不安に駆られます。
スポーツでも同じです。
「あと1点で勝ち」というほぼ確実な状況になった瞬間、脳は「まさかのミス」の可能性を過大評価し始めます。
「ここでサーブをミスったら…」「ここで転んだら…」と、ありえない確率の失敗を妄想し、体を固くしてしまうのです。
試合で勝ち切るための「メンタル実践4ステップ」
では、この脳の仕組み(バグ)に支配されず、最後まで自分らしいプレーをするにはどうすれば良いのでしょうか。
すぐに実践できる4つのステップを紹介します。
ステップ1:脳の癖を「受け入れる」
試合中、「あ、守りに入りたくなってるな」と感じたら、こう考えてください。
「俺が弱いんじゃない。脳が『損失回避』を始めたんだな」と。
自分を責めるのをやめ、「これは脳の正常な反応だ」と客観視するだけで、パニックは収まります。
ステップ2:リードした時の思考を「準備(脚本化)」する
試合になってから考えるのではなく、事前に「リードしたら何を考えるか」を決めておきます。
このように、「脳がビビり始めた時に、自分にかける言葉」を脚本として用意しておきましょう。
ステップ3:書いて「可視化」する
ステップ2で決めた脚本を、ノートやスマホに書き出します。
「リード時は、守らず攻める」「40%の確率を信じる」など、文字にして目に入れることで、脳への定着率は格段に上がります。
ステップ4:試合中に理論を「思い出す」
実際にその場面が来たら、「よし、プロスペクト理論通りだ」と思い出してください。
「相手はいま、捨て身のリスクを取ってきているな。こちらは冷静に、準備した通り攻めよう」
理論を知っているだけで、感情に流されず、冷静な判断ができるようになります。
知識は「メンタル」を育む。そして強さを手にいれる。
メンタルの強さとは、恐怖を感じないことではありません。
「なぜ怖いのか」の理由を知り、対処法を持っていることです。
プロスペクト理論を知っていれば、「守りに入りそうな自分」に気づき、意図的にアクセルを踏むことができます。
この「知識」こそが、勝利を手繰り寄せる最強の武器になるのです。
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