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スランプになりやすい人の特徴はあるのか?科学的スランプ脱出法

 

「1つのことだけをやり続けている人ほどスランプに陥りやすい」と言われることがありますが、この言葉はスポーツのスランプに当てはまるのでしょうか?アスリートであれば、どんな競技でもそのキャリアの中でいつかはスランプを経験します。超一流のアスリートでもスランプに陥ります。しかし、一流と二流、その違いを強いていうならば、超一流のアスリートはスランプから一早く抜け出す方法を身につけていることです。その秘密に今回は迫っていきたいと思います。

目次

  1. スランプに対する室伏広治氏の言葉
  2. スポーツにおけるスランプの定義
  3. スランプの原因
  4. スランプの克服方法
  5. まとめ

 

スランプに対する室伏広治氏の言葉

スランプに対して、2004年アテネオリンピックのハンマー投げの金メダリスト、現スポーツ庁長官の室伏広治氏は、このような発言をしています。

 

 

”スランプは何をやってもうまくいかなくなります。しかし、原因は必ずあるものです。様々な専門家の意見を聞いて、別の角度から自分を科学的に分析しなければならない。単に練習をしても記録は下がる一方です。練習は裏切ると言うのが私の哲学です。”

 

その上で、次の発言をしています。

 

 

”スランプは大切です。そこに陥らないと人はなかなか自分を直そうとしたがりませんから。 ”

 

つまり、スランプは避けられないものとして、スランプを成長する過程として克服するという話をしています。

 

スポーツにおけるスランプの定義

スポーツにおけるスランプについて、従来の様々な研究者による論文をもとに、定義、原因、症状、スランプを克服する方法までを体系的にまとめた論文 Performance slumps in sport: A systematic review が発表されています。

 

その論文の中では、スランプに陥ったことのある著名なアスリートとして、テニスのノバク・ジョコビッチ、サッカーのリオネル・メッシー、ゴルフのタイガー・ウッズまで名前が上がっています。

 

論文では、スランプを以下のように定義しています。

 

「標準以下の運動スポーツのパフォーマンスが、パフォーマンスの通常の周期的な変動から予想されるよりも長く続き、その原因に関する知識が個人及び、またはコーチに隠されているか、明らかである場合」

 

つまりスランプには必ず原因があり、克服できる一時的なパフォーマンスの低下なのです。

 

スランプの原因

スランプの原因は様々です。スランプの一般的な原因として、怪我、自信・回復力の低下、自分の能力に対して非現実的な期待を抱くことによる不安やストレス、スキル習得の低下、燃え尽き症候群などが様々な原因がリサーチで挙げられています。

 

精神的な原因だけでなく、肉体的な原因、技術的な原因、行動的な原因、環境的な原因、コーチと選手の関係など幅広いものと研究されています。

 

このように様々な原因がありますが、アスリートにインタビューすると、アスリートはスランプの原因を推測し、どの程度コントロールできていたかを振り返ることができるということがわかりました。

 

そのため、原因は様々ですが、アスリートがスランプの原因を自分でコントロールしていると信じるほど、アスリートが経験するストレスが軽減され、スランプから抜け出すための戦略を特定することができると結論づけられています。

 

スランプの克服方法

スランプになることが避けられないとすると、重要なことはスランプからいかに抜け出すかということです。スランプは克服できる一時的な不振です。しかし、スランプが続くと、精神的に辛くなり抜け出すことが困難になります。そのため、克服には精神的なレジリエンス、メンタルタフネスが大切だとよく言われています。

 

それでは実際の克服方法は何なのでしょうか。スランプの克服方法について、英国の研究で、10人のプロのクリケット選手にインタビューして、スランプの経験と、アスリートがパフォーマンスの低下に対処するためにどのような戦略やテクニックを使用するか纏められた論文が発表されています。 

 

Overcoming performance slumps: Psychological resilience in elite cricket batsmen

 

その中で、自信を喪失せず、モーチベーションを保って、パフォーマンスを向上させることができたテクニックとして、8つ挙げられています。

 

  • 楽観思考:スランプを、不安定/外部の要因 (努力不足、誤った戦術、または不適切な戦略など)と考える。

  • 成長過程と考える:成長の過程と捉え、目標を設定する。

  • 最高のパフォーマンスのイメージとポジティブなセルフトーク

  • 短期的に集中力を高める:一球一球に集中

  • 気持ちの高揚を調整する

  • そのスポーツの楽しみ、情熱を思い出す

  • 自信をパフォーマンスでなく、努力に結びつける

  • 様々な人からのサポートを受ける

 

このようにアスリートによって克服方法も様々で、正解はありません。言えば、多くのトップアスリートが語っているスランプ克服のキーワードは、楽観またはポジティブ思考そして周りの人々からのサポートとも言えます。

 

まとめ

スランプはどのスポーツ選手にも起こるものです。スランプに陥る人に特徴があるわけでもスポーツメンタルコーチの私がこう言っていいのかと思いますが、決して精神面が弱いからスランプがくる訳ではありません。大切なことは、スランプの原因を突き止め、克服することです。

 

そしてスランプを乗り切るには、まずスランプは誰でも起きることで、成長の過程において起こることで乗り切れるものであると、楽観的にポジティブに考えることが大切になります。そして様々な人々の助けをかり原因を突き止め、スランプから抜け出ましょう。その上で、スポーツメンタルコーチの助けを借りることもお勧めします。

 

どの世界でも真っ直ぐに成長し続けることはあり得ません。スランプを経験して克服することは、より素晴らしいアスリートになる道なのではないでしょうか。


 

参考文献

 

1.Joe Stead, Jamie Poolton, David Alder (2022) 

 Performance slumps in sport: A systematic review

2.Chris Brown, Joanne Butt, Mustafar Sarkar (  2018  )

 Overcoming performance slumps: Psychological resilience in elite cricket batsmen

 

3. 財務総合政策研究所:スポーツ環境の向上に向けて

https://www.mof.go.jp/pri/research/seminar/fy2022/202207.pdf

 

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